0章ー08
その日の夜。大森林の陣地では剣聖は自身のテントで椅子に座り瞑想していた。だが周囲が騒がしくなりだすとゆっくりと目を開けた。
「来たか」
立ち上がる剣聖は真っすぐ外へと出ると、陣地の中心には見慣れない格好をした男女が二十人が立っていた。兵士たちは彼らに槍を向けるも、向けられた彼らは笑い声をあげて警戒する素振りも見せなかった。
「おいおいなんだよ。やるのか?なら早く来いよ」
挑発する痩せた丸刈りの男が前に出ると差し出すように首を見せた。
「止めろ。仲間内で揉めるな」
「お、剣聖。聞いたぞ、なにもできずに帰ってきたそうだな。情けねぇな」
バカ笑いする男に兵士たちは不快感を露わにするも剣聖は表情一つ変えず近づいた。
「転移で来るとはな」
「あんな道なんて誰が通るか。そんなことよりボスの命令だ。今からこの二十人と変態おっさんで夜襲を仕掛ける。召喚者は城へ戻っててめぇらぼんくらはここで指示があるまで待機だそうだ」
「二十人?この人数で攻めるのか」
後からやってきた副長の言葉に丸刈りの男は目を見開くと、なにも言わず無言で近づこうとしたが新たに現れた騎士たちの壁に遮られた。
「バカな真似はよせ。この場で拘束されたいか?」
「なら部下の躾をしっかりしておけ。雑魚が口を開くなよ」
唾を吐き捨てる男は剣聖の方に向くと何度も指を鳴らしだした。
「いいからあのおっさん連れてこい!遅いんだよ!」
不機嫌そうに足踏みしはじめると慌てたように本堂が出てきた。
「なにごとでござる。あ、ダーマ殿」
「ああ?やっと来たか。呼んだらちゃちゃっと来いよ。それじゃ行くぞ」
「ちょっ、待つでござる。さっぱり分からんでござるよ!」
「ああ!舐めてるのか!いいから」
口から泡をまき散らしながら叫ぶダーマは詰め寄ろうとしたが、その前に一人の女が間に入った。
「落ち着いて。パーティーはこの後なんだからはしゃがないで」
宥める女にダーマは愉快そうに笑うと二歩三歩と後ろに下がっていった。
「はい、皆さん久しぶり。時間がないから説明は簡単にするから。本藤あんたは私たちと一緒に反乱軍のアジトで王族の生き残りを誘拐するよう指示を受けてる。応じないと反抗の意志ありということであんたの彼女の腕を折る。剣聖さんと部隊は次の指示までここに待機。他の召喚者たちは次の作戦のために一度王城に戻るように言われてる」
「生き残り…ユアンさまか。今更どうする気だ?」
剣聖の問いに女は時間を気にするように付けている腕時計を確認し説明を続けた。
「英雄王の話だと彼女は隣国アクアと協力関係を結ぶつもり。そうなれば内乱が戦争になる。そうなる前に芽を摘みたいの」
「どこでそんなこと知ったでござるか?」
「知らないわよ。私たちは英雄王の言うとおりに誘拐して後はダーマが好きにする。それだけ。もういい?私この後デートがあるから早く戻りたいの」
不機嫌そうに指で叩くと女はダーマたちのところへ戻った。
「剣聖殿」
「すまん、どうしようもできない」
助けを乞うように剣聖を見るも唯一の望みは絶たれ、本堂は肩を落としてダーマたちの元へと歩いていった。
「よろしくでござる」
「おう。ああ、考えるだけでヤバい。お姫さまの顔の形が変わるまで殴って、裸にして木に吊るして!それからそれから…ああ、早く早く」
腰を前後させるダーマに見るからに嫌な顔をする本堂は距離をとろうとするも、その前に抱きつかれた。
「ちょっ、なんだ!」
「ござるが消えてるぜおっさん。離れるなよ俺たちゃーコンビだからよ」
「コンビ?」
本堂は意味が分からず問い返すも答えが返る前に次の瞬間には消えていた。
「…頼むぞ」
一人呟く剣聖は砦の方を向いた。
「のわっ、ここは一体?」
頭を殴られたような衝撃に倒れそうになる本堂だったが、なんとか踏みとどまり夜の森を見回した。
そこは砦の目の前であり敵陣の目の前でもあった。
「よーしよくやった。後は終わるまで隠れてろ」
ダーマは仲間の一人に指示するとそいつは次の瞬間にはその場から消えていた。
「おーし予定通りだ。てめぇら探してこい」
「ちょっ、ちょっ、声がでかいでござるよ」
焦ったようにかすれた声で言う本堂にダーマに指示された者たちは夜の闇に紛れて砦へと向かって行った。
「ああ?ああ、気にすんな。こういう計画だ。だけどその前に」
突然森の方へ向くダーマは腰からナイフを抜くとある一点見つめたまま駆けだした。それから少しして悲鳴が響いた。
「まずいでござるな。向こうには…まだ気づかれてない」
緊張で胃が痛みだす本堂はどこかにいるであろうの男の姿に怯えた。
「釣れた、釣れた。二匹釣れたぞー」
大声をあげるダーマは戻ってくると両手には二人の男がいた。二人は警備だったのか格好は兵士というよりも狩人の格好をしていた。
「その二人どうするでござるか。まだ生きてるようでござるが?」
二人は殴られただけなのか顔は腫れてるものの二人ともうめき声をあげてた。
「はぁ?そんなのも分からないか。こいつは狼煙だ。おい、縄を渡せ」
ダーマは矢を射られたのか肩と目に矢が刺さっているが本人は気にした様子もなく、二人の足をロープで縛り近くの木に吊るし始めた。
「おい、全員よく聞け。このぼんくらがなにも分からないようだからこの俺様がありがたく説明してやる。今からやるのは腰抜けのぼんくらどもが誰を相手にしてるか分からせるためのパーティだ!音楽は奴らの悲鳴!彩るのは血と内臓の二色だけだ!そしてこれがパーティの始まる教える狼煙だ!」
大声を上げるダーマは仲間が用意していた油と松明を受け取ると逆さ吊りにした猟師の周りに油を撒いて火をつけた。
「さぁパーティの始まりだ!おっさん、あの門を吹っ飛ばせ」
警笛が鳴り響く中、本堂は息を呑んで覚悟を決めると自身の持つ魔筒を構えた。
「このために連れてきたでござるか!」




