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ようこそ吹き溜まりの世界へ  作者: ジャッカス
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0章ー06

森の手前にある草原では仮設基地が設置されていた。そこには数日かけて森から戻ってきた兵士たちが疲れた顔をして休んでいた。なんとか戻ってこれた兵士たちが救護テントで爆発や銃撃を受けた者たちの治療が行われている。

 剣聖は救護テントを離れたところから眺めるとゆっくりと背を向け会議の場である大型テントの中に入った。

「失礼、待たせたな」

 剣聖の言葉に先に待っていたセーラーを着た中年男の本堂とタキシード姿のクラスター、最後に副長が立ち上がった。

「どんな感じですか?」

「いいわけがない。兵士たちの士気は低い」

「ですよね。最初の本堂さんが声をあげなかったら私たちも危なかった。よくあれが分かりましたね」

 剣聖の答えが分かっていたようにクラスターは苦笑すると、ため息をついて本堂の方へ向いた。

「吾輩のいた世界には同じような武器がありましたので。まさかと思って逃げてしまったでござる」

 恥ずかしそうに頭を掻く本堂に剣聖は淡々と答えた。

「胸を張れ。誰も気づかなかった敵の罠に気付いた。今回の功労者は貴様だ」

「そう言って頂きありがとうございます。あ、ならコールド殿の件はいいでござるね。彼女には危害を一切加えないと約束してほしいでござる」

「もちろん。ちゃんと今回のことは報告します。では皆さんよろしいですね」

 クラスターの言葉に剣聖と本堂は頷くと今まで会話に参加していなかった副長は隅に置かれていた置き鏡を皆の前に移動させカバーを勢いよくとった。

 置き鏡は一見普通の物に見えたがカバーをとると映し出されたのは目の前のものではなく椅子に座る英雄王の姿だった。

「話は聞いている。砦を攻める前に撤退とは情けない」

 苛立ちを隠さずそう言う英雄王にクラスターは深々と頭を下げた。

「申し訳ありません。思わぬ敵の襲撃により部隊は大きな被害を被りました。死傷者の数は百は超えています」

「…ほう」

 興味深そうに前のめりになる英雄王にクラスターは話を続けた。

「我々も危険な状況でしたが本堂さんに助けられました」

「そうか。それはよくやったな」

 英雄王は笑顔でそう言うも本堂は嫌な予感を感じ素直に喜べなかった。

「それはやはり変態が会ったという召喚者で間違いはないのか?」

「間違いないでござる。ただあれは正直底が見えないでござる」

「そうかそうか。……役立たずどもが」

 笑顔から一転怒りを露にする英雄王に本堂とクラスターは息を呑んだ。

「どうやら買いかぶりしていたようだ。騎士団を使わず有象無象の兵士たちでも貴様たちと召喚者がいれば問題ないと思っていたのだが蓋を開けてみればどうだ。砦にたどり着く前におめおめと撤退するとはな」

「言い訳しようがない」

 睨み上げる英雄王の視線に本堂とクラスターは目を伏せる中、剣聖はその目を真っすぐと見つめ返した。

「ただこれだけは言っておく。あの男は戦いをよく知っている。あのまま戦えば勝てたかもしれないがこちらにも大きな被害が出た。それで構わないがもう一度攻めるが…どうする?」

 剣聖の言葉に英雄王は腕を組み指で腕を二、三度叩くと考えが決まったのか口を開いた。

「俺様は一つの懸念を感じてる。貴様たちの言う強い力を持った召喚者いるのかとな。もちろんそんなことはないと思っている。万が一にも戦いに腰が引けてるかそれとも連中と手を組んでるなど爪の先程度にしか思っていない」

 そう言って自身の爪先を見せる英雄王は笑うと椅子に深く座った。

「俺様としてはただこの小さな小さな不安を払拭したい。だから次の攻撃はダーマに引き継がせる。お前たちには奴らが来るまでの間ここで監視をしろ」

「ダーマですか。あの異常者を使う気ですか?」

「俺様が実験的に新設した部隊も投入する。召喚者のみで編成された部隊だ。二十人と少数だがダーマが一人いればあの雑魚どもを制圧することなど容易い」

「ですが狂ってます。あんな快楽殺人鬼など使えば後々大きな問題に繋がります」

 反対するクラスターに英雄王はつまらなそうに鼻を鳴らした。

「愚か者め。あの程度の御しきれるに決まってるだろう。俺様はこの程度躓いてられぬ。この国を完全に手中に収めた後は大国アクア、そして北の荒れ地にいる竜共を我が血肉とし真の竜となる。こんなことにいつまでも付き合ってられぬ」

 そう言い放つと鏡から英雄王の姿は消え元の鏡へと戻った。

「ダーマか。たしかに奴ならば可能かもしれないな」

「ですがあいつは殺人を楽しむ異常者ですよ」

「能力や実力なら吾輩らを上回ってるがあの異常な残虐性。檻から出すには危険すぎるでござる」

 英雄王の決断に三人は各々意見を言う中、英雄王は鏡ごしにからその話を聞いていた。

「ふん愚物どもが。目をかけていたというのに何も理解しておらんか。そうは思わないかエルドリッチ」

 席から立たず後ろを振り向く英雄王が見る先には一人の老人が椅子に座っていた。

「理解しておらぬのは主もだろう。反乱など主が出れば直ぐに終わるというのに。時間と手間をかけおって」

「王である俺様が直々に動くなどそれこそ愚かだ。まぁ見ていろ。この戦いで皆気づく。俺様に逆らえばどうなるか」

「見せしめか、上手くいけばいいのぅ。話に聞いたが召喚者が邪魔をするのではないか?恐らくアクアの協力者だろうな」

「安心しろ。そのためのダーマだ。奴のモンスターの能力がある限り殺せる者など俺くらいしかいない」

 高笑いをあげる英雄王にエルドリッチは小さく呟いた。

「まったくわしが召喚した者はどいつもこいつも癖が強い。これで一番御しやすいとはのう」

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