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ようこそ吹き溜まりの世界へ  作者: ジャッカス
5/32

0章ー05

「今日はここで休憩だ」

 ジョンは息を整えてそう言うと後からついてきたデイブとマックは息絶え絶えで頷いた。

 出発してからほぼ半日。休憩をとらず人どころか獣すら通らないところを通り続け三人は森の深くまで入っていっていた。

「まさか…何度も…崖を登る…ことに…なるなんて」

「魔獣に…追われるより…ヤバかった」

 その場に座り込む二人にジョンは気にせず背負っていたショットガンを手に持って歩き出した。

「獲物を狩りに行く。そこで待ってろ」

「あ、待って…付いて行くよ」

「なら…火の方は任せてくれ」

 ふらふらしながら立ち上がるデイブは後を追いかけると残ったマックは手を振って見送った。

「ジョン・ドゥさん、もう暗いんだ。ここら辺は魔獣も出るから無暗に進むのは危ないよ」

「俺は大丈夫だ。それより時々出てきた魔獣って言葉だが動物とは違うのか?」

「? 言ってる意味が分からないけどここら辺はブルーベアが出るよ」

「ブルーベア?」

 振り向くジョンとデイブは互いに首を傾げると二人は足を止めた。

 ベア。クマだとは分かるがブルー?毛が青いのか?情報が断片的でよく分からん。

「もっと詳しく教えてくれ。そのブルーベアには出会ったことはない」

「そうなんだ。てっきり山に詳しい方だと思ったんだけど。ほら、崖を鉄のロープで自分らを引っ張ってくれたり険しい山道を難なく進んでるから」

 昔サバイバル訓練を受けたからな。端末で道具を出せて使い方覚えておいて良かった。

「いや、俺のことは素人と思ってくれていい。そのブルーベアはでかいのか?」

「そうだね。ここらで一番でかくて危険かな。村の近くに来た時に全員で狩りに行くくらいかな」

「そうか。それは食べれるのか?」

「肉は臭いけどまずくはないね。この時期だと臭みは酷くない。それで…しっ」

 デイブとジョンは態勢を低くすると各々ショットガンと弓矢を構えた。二人は動きを止め静まり返った森の中でなにかが移動している音が微かに聞こえた。

 獣か。音からして大物か?なるべくショットガンは使いたくはないんだが。

 そう思いながら周囲を見回すと真っ暗な森の先に二つの光る青い点が見えた。

「まずい、噂をしたらブルーベアだ。動かないで、あれは夜目が効く」

 デイブの注意にジョンはゆっくりとマスクのこめかみ部分を触れサーモカメラに切り替えた。白黒になったの視界には暗闇の先にいるものの正体をはっきりと見えた。

 二メートルくらいのクマか。しかしブルーベアねぇ。毛の一部が青いのかと思ったがまさか瞳が青いとはな。

 ジッと見つめてくるクマにジョンはゆっくりと構えると、その動きを察知したように雄叫びをあげた。

「!」

 大口を開けて突っ込んでくるクマにジョンは怯むことなくショットガンを迷わず撃った。雄叫びと銃声に近くにいたデイブは悲鳴をあげるもその音は掻き消えた。

 突っ込んでくるクマはライフルスラッグ弾を喰らうも、一度足を止めるだけでまた直ぐに駆け出した。その姿にジョンは続けて何発も撃つも足は止めることはなかった。

 目の前に迫ったクマは前足を振るうもジョンは狙いを変えその前足を撃ち抜いた。大きな前足は至近距離の一撃に吹き飛ぶとクマも怯んだように鳴き声をあげて後ろに下がった。その隙をジョンは見逃さず頭部目がけて撃った。

 大口径の一撃に顔の半分が吹き飛んだクマは最後に悲鳴のような鳴き声をあげると崩れ落ちるようにして横に倒れた。

 まさかクマと戦うことになるとはな。こんなことならライフルを用意しておけば良かったか。いや慣れない武器よりこっちだな。

 手の中に現れる弾をショットガンに込めるとジョンはいつの間にか距離をとって小さくうずくまっているデイブに声をかけた。

「解体は任せていいか?俺は詳しくない」

「耳が…ウソだろ、ブルーベアを一人で狩るなんて」

 小さくなっていたデイブは驚きながらもよろよろと立ち上がりナイフを抜くとクマの解体を始めた。

「確認だがこれは魔獣なのか?」

「うん、そうだね。心臓の横に魔石があってその魔力で目が光るらしいんだ。聞いた話だと魔力が強いほど体が頑強で倒しづらいんだ」

「そうなのか。俺には分からん。音で他の魔獣や獣が来ることはあるのか?」

「それはないよ。さすがにあんな音出して近づく魔獣や獣はいない。それよりここまで大きいと処理に時間がかかるけどどうする?」

「そうだな。マックのところまで運んで時間をかけて捌く。それでどうだ?」

「どうやって。これ重いよ」

 デイブは人よりも大きな巨体を見下ろすとジョンは足を掴んで引きずっていた。

 さすがにこいつは重たいな。長時間はスカベンジャーのバッテリーがもたないだろうが短い距離なら大丈夫だな。

 地面に引きずった跡を残しながら二人は元来た道を戻っていった。

 クマの解体と食事を終えると焚火の前で三人は座ってた。デイブとマックは疲れ切ったように眠りこける中ジョンは一人ショットガン片手に火を見ていた。

 やっと一息つくことになったが…さすがに疲れた。

 深くため息をつくジョンはパワードアーマーから小瓶を出すとそこに入ってる錠剤を一つ口にした。

 歯で噛み砕き中身を呑み込むジョンは水を一口飲み顔を顰めた。

 さて眠気覚ましも呑んだし今は人の目もない。少し端末について調べてみるか。

 ジョンは端末を出すと武器選択画面に切り替え、ポイントの確認と表示されている武器を見ていった。

 ハンドガンにショットガン、サブマシンガン、ライトマシンガン、スナイパーライフル、ボウガン…ガトリングにレールガン、パワードアーマー。車に装甲車に戦車、ドローンから偵察機に戦闘機にミサイルか……逆にないものを探すのは難しいな。

 あまりの膨大な量に驚きながらもジョンは次第に楽しくなりはじめた。だが必要とされるポイントの量を見て肩を落とした。

 桁が違うな。あのクマを倒してポイントは入ってるが、それでもほとんどの物が無理か。今使えるのは従来の銃火器全般に偵察用ドローン、移動の時に使ったワイヤーロープの類か。おっ、銃火器のカスタムパーツも追加ポイントカスタムできるのか。ならサプレッサーにタクティカルライト、チューブの増量は…必要ないな。

 カスタムパーツを選択するとショットガンには元々付いていたかのようにサプレッサーとタクティカルライト、ショットガンベルトが装着されていた。

「どうやらこの端末のことを詳しく知る必要があるな」

 ジョンの独り言にマックは寝返りをうつも目覚めることはなくそのま端末の操作を続け、それは朝になるまで続いた。

「ん…ジョンさん」

「起きたか。準備ができ次第出発だ」

 目を覚ましたマックにジョンはそう言うと焚火にそこらの枝を放り込み昨日の夜食の残りの肉を焼き始めた。

 肉の焼ける香ばしい匂いにいまだ寝ていたデイブもゆっくりと起きた。

「起きろ。直ぐに出るぞ」

「あ…分かった、分かったよ」

 眠そうに欠伸するデイブに気にせずジョンは焼いた肉をマスクを僅かにずらし一口で食べた。

「ジョン・ドゥさんもしかしてずっと火の番を?」

「気にするな。それより今は目的地までどのくらいだ」

 ジョンの言葉に口を閉ざしたデイブは懐から革の地図を出した。

「ボートさまから預かっているここら一帯の地図だよ。ここが目的地、それで今はここら辺」

 そう言って指さされた場所は崖が描かれた先の森だった。その先に真っすぐ行った先に目的地である崖に挟まれた道が描かれていた。

「そうか。なら俺たちはその先で待ち伏せる」

 ジョンはそう言うと崖の手前に描かれた直線の道を指した。

「ここは見通しはいいけど反対にこっちも隠れて近づくは無理だよ」

「近づく気はない。敵がここを通る前に道に仕掛けをする」

 いくら向こうが剣と槍だろうが軍隊を前に一人で相手する気はない。できるのは奇襲によってかく乱させ可能なら撤退させる。

「罠かー。だけど数が数だからあまりに大規模でないと意味がないと思うけど」

「そこら辺は考えてある。それよりも準備はいいな」

 立ち上がるジョンに二人は慌てて準備を始め懐から干し肉を齧ると無言で何度も頷いた。

「それじゃ昨日と変わらず最短で行くぞ。どう行く?」

「んぐっ、ここを真っすぐ。問題ないなら今日には着くと思うけど」

 先を歩き出すデイブにジョンとマックは後に続いた。

「ちなみに休憩は?」

「ない。着くまでの辛抱だ」

 はっきりと言うジョンに二人はうんざりしたような声を出すも三人の足は止まることはなかった。そうしてたどり着いた時には陽が沈んだ頃だった。

「…まさか二日もかけずにここまで来るなんて」

「もう疲れた」

 陽が暮れる中、疲れ切ったデイブとマックは木に寄りかかった。ジョンは目の前の道を見ていた。

 どこまでも続く真っすぐな道は先ほどまで通っていた道と違い平坦なもので以前説明の通り、森からも道から見ても見通しの良い場所だった。

「ここでいい。下手に進んで偵察に見つかっても意味がない」

 ジョンはそう言いながら端末を出すと武器選択画面からある物を選んだ。

 ポイントは空になるがここは派手にやらないとな。

「俺は準備を始める。周囲の警戒を頼む。なにかあれば直ぐ知らせてくれ」

 歩き出すジョンは道に出るとその日の内に準備を終えて三人は森の中へと潜んだ。

 これでこの山に入って三日目…森の中でサバイバルをすることになるとはな。だが今日で終わりだ。予定通りならここで決着をつける。

「あのーいつまでこうするの?」

「終わるまでだ。戦闘が終わるまでずっとこうしていろ」

 ジョンの言葉に不満そうにしながらも黙るデイブとマックは森の草木に隠れるように腹ばいなるとジョンも同じように腹ばいになって構えた。

「確認だが今日敵はここを通るんだな?」

「ボードさまの説明だと今日には絶対通るよ。だけどいつ来るかはさすがに分からない。朝かもしれないし夜かもしれない」

「通ることが確実ならそれでいい。最初に言ったがなにか異変があれば教えろ」

 ジョンはそう言うと三人は黙ると辺りは静寂に包まれた。だがそれはあっという間のことで徐々に響く行進の音によって消された。

 …来たか……あれが敵の軍隊か。数は…大規模だな、聞いた通り千人はいそうだ。

 少し離れたところでジョンは徐々に見えてきた一団の姿をジッと観察した。

 森での行軍のためか一団は馬に乗っている者は少なくほとんどが徒歩で移動していた。騎士らしき全身鎧を着けている者たちの姿を見るもほとんどは兵士らしき軽装の装備のものが多い。

 まぁ森の中を通ってだから重い装備をつけての移動は難しいか。まぁそんなことはどうでもいい。もう少し引き付ける必要がある。

 一団の先頭を歩く巨大な大剣と者と身の丈と同じほどの大盾を持つ者二人の騎士を目印にタイミングを待った。

「ジョン・ドゥさん。結構近づいてるよ。これじゃまずい」

 焦る後ろの声にジョンは興味を示さず敵の一団だけを見つめ、用意していた無線スイッチの一つに手をかけた。

 ん?あいつは…セーラー服の変態か。足元に気付いて…まずい。

「これは罠でござる!地面に爆弾が!」

「ちっ」

 騒ぎ出すセーラー服の変態にジョンは舌打ちし用意していたスイッチを順次押していった。

 スイッチを押した瞬間、通路に埋めていた高性能爆薬は順次爆発していった。

 爆炎と爆風の二つの衝撃に真上にいた者だけでなくその周囲の者たち衝撃と炎で一瞬にして肉塊へと変えていった。

 三度の爆発によっ道に三つの穴が開いた時には悲鳴と恐怖、混乱が敵の一団を支配していた。

「砲撃だー!皆逃げろー!」

「バカ!今のは地面からだ!魔法だ!強力な魔法使いが!」

「なんでもいい!今すぐ守りを固めびょっ!」

 指揮官らしき男の声にジョンは照準器から狙いを合わせそこへ向けて連射した。発射された十数発の弾丸は指示していた男の体を撃ち抜くだけでなくその近くにいた兵士の体も蜂の巣にした。

 銃声と倒れる仲間の死体に更なる混乱が起こる中、ジョンは持っているライトマシンガンを敵の隊列全体目がけて連射した。

 銃声と弾丸の雨に敵の一団は混乱が激しくなるも一部の兵士たちはジョンの居場所に気付き声をあげた。

「攻撃は森からだ!森に向けて防御陣形をとれ!」

 その指示に兵士たちは森に向けて盾を構え守りを固めるも、放たれるライフル弾は容易く貫きその先にいる兵士の体へと当たった。

 最初の仕掛けとこの銃撃を合わせて百近くはやったがまだ逃げないか。まぁいい幸いこっちに向かってくるのは少数。そいつらから片っ端に撃てばいいだけだ。

 まるで的でも撃っているかのように迷わず撃ち続けるジョンを前に兵士たちは次々と倒れていった。

「伏せるでござる!皆伏せるでござる!」

 銃声に負けない大声に兵士たちはその声に従いその場に伏せていき、一部の者以外地面に伏せた。

 あの変態まだ生きてたか。どこだ?もう伏せて…あそこか。

 的がいなくなり威嚇するように弾をまき散らすジョンはセーラー服を着た変態を探すと大剣と大盾を持った二人の騎士の間に立っていた。

 ジョンは照準を合わせて連射すると大盾を持っていた騎士は前に出て盾を構えた。弾丸のほとんどは当たるも盾はその全てを防いだ。

「ただの盾じゃないのか。面白い」

 残弾は残り三十ほど。受け続けてられるか?

 狙いやすいように態勢を変えるジョンは大盾の中心を狙い弾の全てを吐き出した。

「ぬぅ、厄介な」

 数秒ほどの僅かな時間にライトマシンガンの弾を受けた騎士は僅かに下がるもその全てを受けきった。

 小口径でもライフル弾の雨を受けるのは見事だ。なら次は…おっと遊んでる時間はなさそうだ。

 異変に気付き周囲を見ると伏せていた兵士たちはそのまま移動を始めていた。それに気づきジョンは最後に残ったスイッチのボタンを押した。

 最後の爆発に兵士たちは混乱し立ち上がるものもいたがジョンはライトマシンガンを捨てて代わりに端末を取り出した。

 よし、かなりのポイントが貯まってる。それじゃこいつを使うか。

 ジョンは迷わずフルオートショットガンを選ぶとドラムマガジンとレーザーサイトをカスタムした。手の中に現れるフルオートショットガンを慣れた手つきで操作すると立ち上がってレーザーを頼りに腰構えで構えた。

「吹っ飛べ」

「やばっ、武器を変えた」

 セーラー服の変態がなにか言おうとしたが銃声によって掻き消え、立っていた兵士の頭が吹っ飛んだ。

 マシンガンを思わせる連射力で立っている兵士たちをあらかた吹き飛ばすと大盾を構えて動かない騎士に向けた。

「おいおい!二度目は勘弁だ!」

 そう叫びながらも前に立つ騎士にジョンは先ほどと同じく連射した。放たれたライフルスラッグ弾は真っすぐと大盾に向けて飛んでいき大盾は凹んでいった。

「ぐおっ、こいつは重い!」

 一撃ごとに後ずさる騎士の大盾は貫通しないまでも弾丸は凹んでいき徐々に形は変形していった。

 ちっ、弾切れまで耐えたか。十発くらいだがまさか耐えきるとはな。だがあの盾なら二度目は耐えきれない。

 空のドラムマガジンを捨て手の中に現れた新たなドラムマガジンを込めて構えなおした。それに合わせるように大剣を持った騎士が前に出た。

「副長下がれ」

「分かりました。…あれは魔法とか魔筒の類じゃありませんね」

「分かっている」

 レーザーを頼りに狙いを合わすとジョンはその引き金を引いた。発射される弾丸の雨は反動によってズレはあるもののその全ては騎士に向けて飛んでいき大剣の腹によって受け止められた。

 ……おいおい。

「重いな。だがそれだけだ」

 五発全て剣で受け止めたか。テレビや動画で弾をカタナで斬る映像見たが、剣の横の…腹の部分で受け止めるなんて。

「部隊を下げろ。このままで砦攻めはできん…撤退だ」

「了解しました」

「いや、待ってください」

 副長と呼ばれた騎士は素直に従おうとするもどこからか現れたタキシードの格好をした男が割って入った。

「剣聖、英雄王に逆らうのですか?」

「愚かな…今はそう言ってる場合ではない。口を出すよりも手を貸せ。ここでこの男を殺さねばやられるのは我々だ」

 嬉しいこと言ってくれるがもう少し油断してほしいもんだ。

 目を一切話すことなく剣聖はそういう中でジョンは端末から選んだスタングレネードを放り投げた。

「!」

 防御態勢をとり剣聖たちはスタングレネードに距離をとるも眩い閃光と音にからは逃げきれず全員がその場で膝をついた。だがその時間は短く復活するのは早かった。

 早いな。本来ならしばらく動けないんだがな。まぁこれだけの時間があれば充分だ。

 立ち上がろうとするタキシードの男に狙いを合わせるも草木に紛れ狙ってくる銃口に気付きジョンは考えるよりも早く横に走った。直後ジョンのいたところに巨大な火の玉が通り抜けた。

 こいつはあのセーラー服の変態か。格好もふざけてるがやることもふざけた奴だ。

 飛んできた方向にジョンは狙いを向けると威嚇するように連射した。点ではなく面での銃撃に危険を感じたのかセーラー服の変態は悲鳴をあげその場から伏せたまま移動した。

「そこだな」

 ちっ、今回も見逃すしかないな。

 向かってくるタキシード服の男は素早く距離を詰めると勢いを殺さず飛び回し蹴りを繰り出した。

 遠心力を使った蹴りは首を刈るかの如く鋭いものであったがジョンはそれを難なく伏せて躱し、地面に足をつけたところで前蹴りを繰り出した。

「なっ、うぐっ」

 とっさに両腕で防ぐタキシードの男だがパワードアーマーに強化された蹴りの衝撃に耐え切れず後ろに吹っ飛ぶとその場に座り込んだ。

「この私が…バカな」

 吹き飛ばされたことが意外だったのか、驚きのあまり固まるタキシードの男に狙いを合わせた。だが頭上から飛んできた矢がジョンの肩を掠るとその場から離れ近くの木の裏に隠れた。

 兵の統率が戻ったか。このままだとすぐに包囲されて逃げ道もなくなって確実にやられる。ここは下がってまた罠を仕掛ける手もあるが。

「デイブ、マック!生きてるか?生きてるなら逃げろ。俺はここで時間を稼ぐ」

 そう言ってジョンは姿を出すと騎士に引っ張られて下がるタキシードの男に向けて撃ったが大盾の騎士によって防がれた。

 向こうは距離をとったかそいつは好都合。あの二人がいなくなればこっちも次の武器が出せる。

 そう思いながらジョンは飛んできた矢に見向きもせず姿を出している弓兵たちの体に風穴を開けていった。

「諦めろ!今投稿するなら命は保証する。それだけの力だ。帝国はお前を優遇するだろう」

 うれしい誘いだが全く信用できないな。

 ジョンはデイブとマックの姿がないことを確認し端末を出すと、どこからか聞こえてきた悲鳴にその手を止めた。

「敵襲!敵襲!」

 どこからか響いてきた声にジョンは見ると通路から新たな一団が迫ってきていた。盾を構え行軍する一団に剣聖は声を張り上げた。

「シナリオと違うが…撤退!直ちに戻れ!」

 剣聖はそう言い放つとジョンから背を向け既に撤退を始めている部隊の後に続いた。タキシード服の男は声をあげるも副長呼ばれた騎士に引きずられて下がっていった。

 …茶々が入ったか。どこのどいつだ?

 離れていく敵部隊に狙いを合わせるもジョンは興味をなくしやってきた一団へと向けた。すると先頭には見覚えのある巨大な槍を持つ騎士を見つけた。

 あれはたしか…コニー・ボードか。奇襲を仕掛けるんじゃなかったのか?

 森から出て警戒したままコニーへと近づくと周囲の騎士たちは臨戦態勢をとりジョンへと武器を向けたがコニーはそれを下げさせた。

「止めろ。ジョン殿無事でよかった」

「なんでお前たちがここにいる」

「待ち伏せしていたところ爆発音が聞こえてな。偵察からの報告から君だと判断し作戦を変更して援軍に来たまでだ」

「そうか」

「だが必要はなかったようだな」

 そう言うコニーは周囲を見回した。森の中である唯一の道には大穴が幾つもでき、その周囲には爆風によって木は折れ曲がり地面には人であった肉塊や鎧らしき鉄くずがそこら中に転がっていた。遠くを見ればジョンが撃ったであろう兵士たちの死体が地面を転がり、動けずに仲間に見捨てられた者たちは苦悶の声をあげていた。

「どうする?今から追撃するなら手伝うが」

 あのでかい剣を持った騎士と変態…あれは仕留められる内に仕留めたい。連中が生きてると厄介だ。

「その必要はない。ジョン殿のおかげでこちらの被害は軽微、いや戦闘による被害はない。これ以上の戦果はない」

 そう言うとコニーは被っていた兜を外した。

「ジョン・ドゥ殿、君を歓迎する。勝ちどきを頼みたいのだが」

 勝ちどき?よく分からんが面倒そうだな。

「止めておく。それよりもデイブとマックは無事か?先に逃がしたんだが」

 二人のことを思い出しわざとらしく周囲を見回すジョンにコニーは苦笑いを浮かべて崖のある方を指さした。

「君が逃がしてくれたおかげで無事だ。今はマーレーのいる援護部隊のところで体を休めてる」

「そうか。俺も向こうに行く」

 ジョンは指さした方へ速足で立ち去るとコニーはその背を見送り小さくため息をついた。

「思った通り…いやそれ以上か。あの人数を相手にこれだけのことをするとは。英雄王よりも危険だ。問題は想定とは異なる結果…あいつがうまくやってくれるといいが、そうならないなら…最悪に備え急がなければ」

 誰にも聞こえないよう一人呟くコニーは再びため息をつくと部下たちの方へ向いた。

「全員よく聞け!負傷者は手当てし連れて陣地に戻る。彼らは敵だと思うな。立場は違えど国を思う同志であることを忘れるな!」

 その指示に部下たちは動き出すとコニーは森の先にある遥か遠くの王城を睨んだ。

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