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ようこそ吹き溜まりの世界へ  作者: ジャッカス
31/32

2章ー02

「しかしまぁ…こうなるとはねぇ」

 見知らぬ町を歩くジョンは井戸を探した。しかしその頭の中は別の事を考えていた。

 やっぱりだ。いくら思い出さそうとしてもレッドの顔が思い出せん。これもあいつの能力か。

 ジョンはいくら思い出そうとしてもレッドの顔の特徴を一つ思い出せなかった。思い出せるのは男ということだけ。

 普通に話してる時は顔が認識できないことを違和感だと感じさせない。それに話を聞いててもあいつ自身の情報を探れなかった。

 ジョンはレッドのことを信じていなかった。敵でないと思いつつも状況によって敵になる可能性はあったからだ。

 話の感じだとレッドは雇われてるのは分かる。だがそういう連中は状況によって裏切ることはよくある。

 思い出すのは前の世界での民間会社から派遣された傭兵たちのことだ。金に目が眩んで裏切ったあげく新型兵器を強奪しようとした。結果は任務の成功だったが全体の被害は大きかった。

 エールには世話になったからな。あいつになにかするとは思えないがしっかりと監視しておかないとな。

 そう思いながら歩くジョンは通りがかった人に声をかけた。

「すいませーん、井戸ってどこにあります?」

「井戸?それなら、臭っ…あっちにひたすら真っすぐだよ」

「ありがとうございます」

 顰め面で鼻をつまんで答える人にジョンは礼を行って示された方向に進んだ。

「真っすぐねぇ。分かりやすくていいねぇ」

 帰りの道順を覚えながら真っすぐと道を歩くジョンは右曲がりの通りの道は通らず真っすぐと人通りのない細い小道に入った。

 真っすぐ、真っすぐ…おっ、なんか面倒くさそうなのがいるな。

 町の明かりの入りにくい小道には、見るからにガラの悪い男たちが三人たむろしていた。三人とも世間話に夢中なのかジョンには気付いていない。

 ジョンもそれに気づいていたが気にせず真っすぐ進み続けた。すると男たちは話すのを止め睨みつけてきた。

「おいおい、そこのお兄ちゃん。なに勝手にこの道通ってるんだ?ここは俺らの道だ」

「通るなら通行料を払ってもらわないとなー」

 分かりやすい態度に出る男たちはニヤついた顔をするも直ぐに顔を顰めた。

「こいつ臭ぇな。くそ、とっとと金を置いて行きやがれ」

 道を塞ぐ男たちにジョンは懐から端末を取り出すとそこから丁度いい武器を探した。

 げっ、吐しゃ物で端末が汚れた。後で綺麗に拭かないとな。

「落ち着け。俺は水を汲みに来ただけだ。揉める気はない」

 そう言いながら端末からメリケンサックを出したジョンは即座に手にはめ、容赦なく目の前の男の顔面を殴った。

「ぐはっ」

 鼻の折れる手ごたえを感じつつジョンはそこで終わらず股間を蹴りあげた。

 あまりの衝撃に嘔吐する男に残る二人は動揺しながらも腰の短剣を抜こうとした。だがそれよりも早くジョンの手刀が男の喉に突き、残るもう一人は前蹴りで壁に叩きつけられた。

 一人は痛みのあまり失神し、もう一人は喉を潰され息ができず地面にのたうち回った。そして残る最後の一人は痛みで座り込み目の前の出来事を理解できずにいた。

「なっ…がっ」

「おっと意識を失うな。井戸はこの先か?」

 胸倉を掴まれた男は息苦しそうにもと来た道を指さした。

「井戸?それなら戻って通りの道を真っすぐ行けばつく」

「そうか。ありがとう」

 さっき一瞬迷ったが向こうが正解だったか。よし、近接攻撃は殺さなくてもポイントが入るからいい。

 端末を見ると先ほどよりもポイントは増えていた。ただそれでも山で使ったポイントの半分にも満たなかった。

 唯一の救いは特殊な弾を使わなきゃ弾がタダで無限に出てくることくらいか。

 そんなこと思いながらジョンは三人をそのままにして元来た道を戻った。

「そこのお兄さんや」

 元の通りに出るジョンは老婆に声をかけられるもそれを無視し真っすぐと進んでいった。

「ちょっとお待ちお兄さん。そこの平凡そうに見えておっかない顔したお兄さん」

「ここには二枚目のおにいさんしかいないぞ」

「普通自分で言うものか。待て、待つんじゃ二枚目のお兄さん」

 早歩きで距離をとるジョンに慌てて老婆は止めた。そこでようやくジョンは振り向いた。

「悪いが水汲みで忙しい。用事なら後にしてくれ」

 睨むジョンに老婆は動じることもなく道の端へ行くとその場に座り込んだ。

「ではここで待たせてもらおうか。終わったら声をかけてくれぬか?」

 これは罠か?いや、そんな風には見えない。ゲームで言うイベントみたいな展開なものか?

 どうしていいものか分からず固まるジョンだったが直ぐに前を向き井戸目指して歩いてい行った。

 少し歩いて井戸を見つけたジョンは手に付いた乾いた飛沫を洗い落とすと、装備の一つにあった水筒を取り出しそれに入れた。

 用を済ませ来た道を戻るジョンは老婆を見ると先ほど変わらず座っていた。それに気にせず通り過ぎると二人の待つ宿屋に戻った。

「おーい、水取ってきたぞ」

 部屋に戻ると臭いはだいぶなくなっているがまだかすかに臭っている。

「悪いな」

 投げられた水筒を受け取ったレッドは手を軽く水洗いすると、床も同じように軽く水洗いを始めた。

「それじゃ後は任せた。俺は少し離れる」

「なにかあったか?」

「なんでもない。ナンパされただけだ」

「…朝までには帰ってこい」

 やれやれと言わんばかりにため息をつくレッドにジョンは背を向けた手を振って部屋を出た。

 再び外に出た町の空は暗くなり完全に夜になっていた。通りには外を歩く者が少なかった。

「夜中は明かりがないから人気が無くなるのは分かるが、なにかおかしいな」

 警戒しながら歩くジョンは井戸までの道を真っすぐ進むと、その先に変わらず壁の端で座る老婆の姿があった。

 ああも胡散臭いとはな。それに待ってるなんて言われてほいほい戻ってくる俺は人が良いのかバカなのか。

「待たせたなお婆さん。それで何の用だ」

 同じ目線になるよう座るジョンに老婆はスムーズな動きで立ち上がった。

「おお、よく来てくださいましたのう。実はお主に一つ仕事を頼みたいのじゃが」

「断る。さいなら」

 手を振って元来た道を戻るジョンに老婆は縋りついた。

「待たれなさい。直ぐに終わりますから!ちょっと娘の様子を見てくださるだけで結構ですので」

 こいつ思ったより力強い。本当に老人か?

「分かった。分かったから手を放…この俺を引っ張ってるのか」

 装備を含めて八十キロ以上を超えるジョンを引っ張る老婆にたまらず引っ張り返そうとするもそれを止めた。

「分かった。まず話を聞かせろ」

「おおっ、ありがたいことですの。実はあそこにわたしの娘が働いてるのですが、最近連絡をくれなくて。心配になってきたのですがわたしには入りにくいお店で」

「入りにくいお店?…ああそういうお店か」

 なんとなく察したジョンは理解すると老婆は申し訳なさそうに頭を下げた。

「わたしの代わりに見てもらえないかい?ちゃんとお礼はさせてもらうから」

 そう言って厚めの財布を見せる老婆にジョンは一考した。

 胡散臭いが自由にできる金は欲しい。旅費はレッド持ちだから気にしなくていいが今後のことを考えて手持ちは少しでも多い方がいい。

「そうだね。先に銀貨一枚を渡そう。行ってくれたら後で金貨を一枚あげよう」

 そう言って掌に乗せられる銀貨にジョンは頷いた。

「よし、いいだろう。名前はなんだ?」

「あの店の人に三階にいるバーナデッドに用があると言えば通じるはずと思う」

 三階にいるバーナデッド。なんだか嫌な予感だが直ぐに済みそうだしとっとと済ませよう。

 指で示された建物にジョンは真っすぐ歩いて行き、他の建物より一つ背の高い建物のドアを叩いた。

「すいませーん、ちょっといいですかー?」

 謙虚に小さくドアを叩くと反応はなく、少ししてから今度は力強く叩いた。

「すいませーん!」

「なんだ?」

 ドアは微かに開くとジョンは強く更に強く叩き、ドアを開けた男は頭を強くぶつけた。

「痛、なにしやがる」

 男は尻餅をつくとジョンは慌ててドアを通って助け起こした。

「すまない、大丈夫か?」

「くそったれが…なんの用だ?」

 体格の良い男の問いにジョンは見張り番かと思い愛想よく笑った。

「ちょっと人に用がある。三階にいるバーナデッドを呼んでくれないか?」

 その問いに男は一瞬目を見開くも直ぐに険しい目つきに変わった。

「そうか…そういうことか」

「?」

 一人納得する男は腰に手を伸ばすとジョンは迷わず膝を踏みつけてへし折った。バランスを崩した男の顔面に膝蹴りを食らわせた。

「しまった。反射的にやっちまった。だがこれは正当防衛…だよな?」

 男の腰を見るとその手には短剣が握られ、ジョンはそれを拾った。

「真っ当な店じゃなさそうだな。おい、三階にバーナデッドがいるのか」

「くそった…ぎゃああああぁ!」

 悪態をつく前にジョンは迷わず短剣で指を切り落とした。それも一本だけでなく親指から順に次々と切り落としていった。

「もう一度だ。三階にバーナデッドがいるのか?」

「そうだ!三階にいる!だからもう…」

 ジョンは短剣で指のない男の掌に床ごと突き刺すと、それ以上は興味を失い懐から端末を取り出した。

 ショットガンは室内戦で効果的だが壁を貫いてそこにバーナデッドがいたらまずい。ここは小口径のハンドガンにしておけば弾は貫通しづらいだろう。

 そう考えハンドガンを選びサプレッサ―とレーザーサイトをカスタムし近づいてくる複数の足音の方へ向けた。

「なんだ、今の音は?」

 短剣を持った男たちの姿を確認した瞬間ジョンは胸と頭目がけて連射した。

 現れた男たちは突然の攻撃に何が起きたかも理解できず床に倒れると、ジョンはとどめと言わんばかりに二発ずつ頭を撃ち抜いた。

 …やっちまった。こういうヤバそうな場所に行くとどうも体が勝手に動く。……こうなったらこのままバーナデッドの所に行って婆さんのところに連れて行くか。抵抗するなら気絶させよう。

「今の俺って下手な悪党より悪党だな」

 そう呟きながら慎重に先へと進むジョンは二階へ行くための階段を探した。

 サプレッサーはあるがここは室内。建物自体は広くても直ぐに異変に気づくだろうな。

 ジョンはハンドガンを構えながら先へと進み角の所から様子を伺った。先には階段はあったがそこには二人の男が談笑していた。

 装備は短剣にボウガン。完全にまともなところじゃないな。本当安請け合いなんてするもんじゃない。

 自分の判断にちょっと後悔しながらも僅かに上半身を乗り出し隙だらけの二人を撃った。頭と胸に一発ずつ受けた二人は壁に赤い染みをつけると崩れ落ちるように床へと倒れた。

 手の中から現れるマガジンを交換しつつ、廊下を歩くジョンは階段上を警戒するも人の姿はなくそのまま上へと上がった。

「なんじゃこりゃー!敵だ!敵が来たぞー!」

 気付かれたか。ここに何人いるか知らないが囲まれたら厄介だ。

「なんだ?何の騒ぎだ?」

 突然横のドアが開き男が姿を現すと、騒ぐ前に鼻を殴りすかさず口の中にハンドガンを突っ込み無理やり部屋の中へと入った。

「…酷いな」

 部屋に入ると様々な臭いが混じり悪臭を放っていた。その臭いに顔は顰めなかったが部屋の奥にいる人物の姿にたまらず顔を顰めた。

 部屋の奥には鎖に繋がれた女が大の字に倒れていた。その姿は裸そのもので女には意識がなく時折痙攣するように体を揺らした。

「!」

 嫌悪感と苛立ちに女を見ていたジョンは突然の頭の衝撃に態勢を一瞬崩した。だがそれで動じることはなく銃身の向きを僅かに変えて撃った。

「がぁつ!」

 片頬に風穴が開き悲鳴をあげようとする男だがその喉の奥深くにハンドガンを突きいれて無理やり黙らせた。

 痛…置物で頭を殴られたか。血が出てる。

 頭が僅かに切れたことに気づき手で押さえると、くぐもった悲鳴をあげる男の胸倉を掴み更に銃身を深く突きいれた。

「黙れ。ここはなんだ?彼女に一体なにをした?」

 苦しそうにえづく男の耳元で囁くような小声で言うジョンは目をジッと見つめた。その迫力に呑まれ悲鳴をあげるのを止めた男は何かを言おうとしたのでゆっくりと血と涎でべとべとになったハンドガンを抜いた。

「ま、待て。痛くて…喋れ…」

「ならいい」

 ジョンの無情の言葉と共に頭にハンドガンを突きつけられ男は恐怖で身を小さくし膝をついた。男はジョンの持つ武器の正体は分からなかったが自分を殺すことのできる強力な武器という事だけは理解した。

「待て…待って。ここは…非合法の娼館だ。金額を提示すれば…好みの女を攫って…きてくれる。…私は…ただの客だ。…ただ買った…だけだ」

 涙ながらに説明する男にジョンは何も感じなかった。ただ無言で近くにあった薄汚い布を男の口に深く押し込ませて声が出ないようにして股間を撃ち抜いた。

「!」

「大声をあげたら今度は歯と舌だ」

 股間を押さえながら倒れる男にジョンはそれ以上何もせず鎖に繋がれている女を拘束している鎖を撃ち抜いた。

 呼吸と脈を確かめると弱いものの命に別状はなかった。ただ薬物を受けているのか泡を吹いた痕があり、体には暴行を受けたであろうアザの痕が幾つもあった。

「…許せんな」

 ジョン近くにあった布を女の体に被せると痛みを悶える男の顔を蹴り意識を失わせてドアの前に立った。

 何が起きてるか分からんが、ただここにいる関係者は皆殺しで良さそうだ。ただその前に三階だ。あの婆さんの言ってたバーナデッドがなんなのか確認しないとな。

 続けて慎重に先に進むことに決めたジョンの耳にはこちらに向かってくる複数の足音が聞こえてきた。ジョンは端末を取り出し閃光手榴弾を選ぶと僅かに開けたドアから廊下に投げた。

 ドアの隙間から僅かに一瞬光が漏れるとジョンは素早く外に出て周囲を見回した。

 廊下には複数の男たちが目を押さえて倒れていた。

「目が、目がぁー」

「畜生何が起きやがった」

 呻く男たちにジョンは一人一人に的確に頭と胸に一発ずつ撃ちこみ最後の一人に近くに落ちていた短剣を拾い喉元に向けた。

「直ぐに答えろ。三階の階段はどこだ」

 そう言いながら喉をゆっくりと斬っていくと男は焦ったように答えた。

「階段はこの奥だ!だけど行かない方が良い!そろそろ地下の連中が来るぞ!連中が来る前に逃げた方が良い!なっ、そしたらなにもなかったことにできる!だから」

「忠告に悪いが、そんなことはできない」

 頭に一発撃ちこみ止めを刺すジョンは素早くマガジンを交換しながら用心して説明通りに進んで行った。

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