1章ー07
「こいつはどうなってる?」
洞窟に向かったジョンはその光景に首を傾げた。
「あ、大丈夫だったー?」
「来たか」
急ぎ戻ったジョンの前には洞窟の前で焚火をしながら肉を焼くエールとレッドの姿があった。
「状況がよく分からんがなに和んでる?…まさか」
「落ち着け。自分が連れてきた」
レッドの答えにジョンは警戒を解かないまでもショットガンを構えなかった。
「ジョンの帰りを待ってたんだけど急にこの人がやってきて。まぁ仕方なくね」
「見事に隠れていたようだが気配を消しきれていなかった。この肉は彼女が腹が減ったというから用意したまでだ」
疲れたように言うレッドは焼けた肉を渡すと受け取ったエールは二口で食べ終えた。
「そう言えば朝飯も食べずに動いたからなー。そんなことよりあいつらはどこだ?」
「そこの洞窟で休んでる。気になるなら見てくればいい」
そう言われ見てくると洞窟の入り口に竜の親子はぐっすりと眠ってた。見るとレッドに射られた傷は癒えているようで傷痕もない。
「あの調子なら直ぐに動けるくらいには回復する」
「そうか。それでどうする?」
ショットガンを向けるジョンにレッドはため息をついた。
「この仕事は無理やり依頼されたものだ。貴様があの貴族の騎士を殺したのなら依頼は消えた。もっとも二度殺したのならば」
「ああ、きっかり二度殺した。なんだったら確認にいくか?」
「必要ない。それよりも本来の仕事を果たさせてもらう」
「仕事?まさか」
再びショットガンを向けようとするジョンにレッドは呆れたようにため息をついた。
「早とちりするな。彼女の保護だ」
「へ?」
「エール・グスタフ。貴様の父親に保護するように頼まれた。村には馬車を用意してある。一緒に隣国アクア王国まで来てもらう」
突然のことに肉を食べる手を止めたエールにレッドは懐から巻物を手渡した。
「詳細はここに書かれている。断るかどうかはそちら次第だが自分以外にも他の傭兵が複数動いてる。断っても面倒は続くだけだ」
「うそー…あー、たしかにそれっぽいね。遂に見つかっちゃったかー」
苦笑いを浮かべ頭を掻くエールはため息をついた。
「はぁー…分かった。付いて行けばいいんでしょ」
不機嫌そうに言うエールにジョンは手を挙げた。
「なに?」
「お前の実家はエルフの里じゃなかったか?」
「それは母の方。父は隣国のそれなりに大きい貴族の家。興味ないけど私が里を出たのを知って何年も前から家に来いって言ってくるの。もう本当に嫌になる」
うんざりしたように言うエールの話を聞きながらジョンは考えた。
隣国か。そこまで行って辺境の町や村で暮らせば今度こそ静かに暮らせるかもしれないな。この国にいてもこれだけの騒ぎを起こしちゃまともに暮らせそうにもないしな。
「よし、俺もついて行こう」
「ええー」
見るからに嫌そうに顔を顰めるエールだが反対にレッドは賛成した。
「分かった。費用はこちらが出そう」
「ええっ、良いの?」
「あれだけの実力者だ。味方になるというなら心強い。なにより恋人といた方が安心できるだろう」
「恋人?いやいや、ただの弟子だから」
「そうか。なんだろうが数日はかかる旅になる。それなら気心ある奴と一緒にいた方がいいはずだ」
「ええー…いや、けど召喚者の能力を見てみたいから、いいよー」
軽いな。いや元からそういう奴だけど。
「そうか。自分は森の前に馬車を移動させる。二人はここにいろ、明日の朝までには山を下りろ」
レッドはそう言うと立ち上がり山を下りていった。
残った二人は深くため息をついた。
「次から次へと色々起きるな」
「そうだねー。はーっ、まさかここも見つかるなんて。面倒になるなー」
「それはすまんな。俺のせいだな」
「全くそう思ってないでしょ」
睨むエールにジョンは無言で頷いた。
「明日までに良くなってればいいんだけど」
「それには及ばん」
フラフラしながらやってくる竜と子供は焚火の前に座ると、焼かれている肉を取って食事をしていた。
「君たちのおかげで体調が良い。もう大丈夫だ」
そう言うと横にいる子供の頭を撫でた。最初に見た時と違い子供は元気よく笑った。
「ありがとう。おじさん、おねぇさん」
「ジョンだ」
竜の子供の頭を押さえつけるようにグリグリさせると、本人は嫌がるどころか嬉しそうに声をあげた。
「それでどうするんだ?」
「この洞窟でもう一眠りした後旅立とうと思う。追手の心配もないだろう」
「けどまだ体力は回復してないんだからそれまで一緒に」
「いや、これ以上君たちに迷惑をかけたくない。私たちのせいでこれ以上危険にあってもらいたくない」
握手を求めるように竜は手を伸ばすとジョンはそれに応じた。
「ここまでしてもらえるとは思ってなかった。もし北の地に来るときがあればこれを出すといい」
そう言って竜は巻物を出してきた。ジョンは受け取るとエールにも同じように巻物を渡した。
「通行証だ。では君たちに幸あれ」
「あんたらもなー」
「無理しないでねー」
洞窟の奥へと歩いて行く竜たちにジョンとエールは手を振って別れた。そして残った二人は焚火の火を消すと山を下りていった。




