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ようこそ吹き溜まりの世界へ  作者: ジャッカス
28/32

1章ー06

「…到着」

 最短ルートで行ったため草や木の枝に引っかけながらたどり着いたジョンは全身汚れていたが本人は気にする素振りを見せず大口径のハンドガンを構え慎重に進んだ。

「俺だ。どこにいる?」

 姿が見えないことに嫌な予感を感じるも、どこからか戦士風の男が姿を現した。

「そんなに慌ててどうしたのだ?」

「無事か。敵が二手に分かれた。片方を潰したがもう片方はまだ来てなかったか」

 安堵しつつ端末を出すジョンは画面をドローンのカメラ映像に切り替えると山を登る十五人ほどの人の姿があった。

 まだこれだけいるか。恐らく残りは…ん?なんだ、あれは。

 集団の中から赤く光るなにかが空を飛ぶとは真っすぐとドローンに向かって飛んでいった。

 魔法かなにかか。どうにか避けれないか?

 そう思いドローンを移動させて躱そうとするも、それは軌道を変えて真っすぐとドローンに飛んでいきカメラの画面は真っ黒に変わった。

「今のは矢か?」

 一瞬見えた矢らしき形状にジョンは首を傾げた。

 …あれは魔法か、それとも能力か?違いが分からん。

「どうなっている?」

「敵が来る。エールは予定通りか?」

「予定通り隠者の指輪を使った後に洞窟に行ったはずだ」

「ならいい。ここでケリをつける。お前はどこかに隠れてろ」

「分かった。なら…」

 竜はゆっくりと自分の腹を確認した。そこには燃えるように赤く光る矢が深々と刺さっていた。

「ぬ、ぬぅ」

 その場で膝をつく竜は矢を掴もうとするとその手は焼けた鉄に触れたように音をあげた。

「ただの矢ではないな」

 痛みに顔を歪めながらも竜はゆっくりと矢を引き抜いた。

「大丈夫か?」

「…心配ない。しかし人間に擬態してるとはいえ矢が刺さるとは」

 立ち上がる竜にまたどこからか矢が飛んできた。それに気づいたジョンは斧で防ぐと折れた矢はジョンの武器同様に消えていった。

「…魔法の矢。しかも私とは相性の悪いようだ。すまないが手肩を貸してくれないか」

 言われるがままに肩を貸すジョンは竜の進む方向に歩き出した。その先には美味しそうに焼いた肉の塊を齧る竜の子供が座ってた。

「あ、おじさんと…お父さん?」

「前から言ってるだろ。おじさんじゃないジョンだ。それと敵が来た。隠れるぞ」

 ジョンの言葉に怯えたような顔をする竜の子供は慌てて立ち上がるとよろめきながらも後に続いた。

「動くな」

 真後ろから聞こえるその声にゆっくりと振り返るとそこにはボウガンを構えたレッドがいつの間にか立っていた。

 全く気付かなかった。こいつ本当に幽霊か?

 マスクの向こう側でで驚きのあまり目を見開くジョンは竜に離れるように手振りでサインを送った。

「速いなレッド」

 いや、速すぎる。いくら俺より先に山に入ったとしてもあの荒れた山道をこんなに早く来れるわけがない。

 いつでもハンドガンを構えられるようにしつつも隙のないレッドに動けずにいた。

 あのボウガンは連射できない仕組みのようだが、もう矢を装填しているな。

「貴様の能力同様に自分にも能力がある。そう言っておく」

 そう言うとレッドはなにかに気づくとボウガンを下ろした。

「…子供がいたか」

「それがどうした?」

「子供の前では殺しはしない。例え相手がなんだろうがな」

 そう言うとレッドはその場に座り込んだ。

「なんの真似だ?」

「知っているだろうがじきに貴様たちを殺しに連中がやってくる。後はそいつらに任せる」

「戦う気はないってことか?」

「元々貴族の命令で渋々協力に来てるだけだ。そこまで協力する気はない。だが仕掛けられたら話は違うが」

 下手に動けば殺す。そう言わんとばかりにレッドの目は語っていた。それは自身の能力を信じているからではなく裏打ちされた経験や実力によるものだとジョンには直ぐに分かった。

 あのイージーのような自信過剰ならやりやすいがこういう奴は一番厄介だ。戦う気がないならここは何もしない方が良いな。

 竜をその場に座らせるジョンは同じようにレッドの前に座った。

「あの矢が能力か?」

「あの飛行体とその鉄砲は貴様の能力か?」

 互いの質問に答えず両者はただ睨みあった。

 こんなことならエールも連れてくれば良かった。

 しばらくすると山頂にたどり着いたライルたちが姿を現した。その顔は驚きに満ち直ぐには言葉は出なかった。

「お前は…ジョン。なぜここにいる?イージーが相手をしてるはずだ」

「奴ならもういない。次はお前だ」

「バカな。いや動揺させる罠だな」

「違う。あの男ならもう死んでいる」

 レッドの言葉にライルは驚きのあまり開いた口が塞がらなかった。

「それにこいつは自分よりも早くここに来ていた。恐らくその鎧の力だろう」

 あまりのことに深呼吸して落ち着けるライルはジョンを睨んだ。

「状況は分かった。ならば我が友の敵討ちと任務を果たすとしよう!レッド!その男を殺すんだ」

 その言葉にレッドは首を横に振った。

「悪いが子供の前で仕事はしない。後は好きにしろ」

「なっ…分かった。なら黙って見ていろ」

 後ろに率いていた傭兵たちに合図を送ると皆広がるようにばらけた。

「邪魔しないんだな」

 確認するように聞くジョンの問いにレッドは竜の子供の元まで歩いて行くと脇に抱えた。竜の子供は抵抗するもなにかを嗅がされると眠るように意識を失った。

「事情は知らんが二人はこの先の洞窟で預かろう。お前が死んだらあの貴族の騎士に引き渡す」

 信用はできない。だが今はこいつを相手にはできないな。

「ちっ、さっさと終わらせるぞ」

「俺にありったけの補助魔法をかけろ!」

 ライルの指示に魔法使いは素早く詠唱し様々な魔術をかけていった。その変化はかけられていくごとに迫力が増していった。

「行くぞ!」

 突撃してくるライルにジョンは素早くハンドガンを構え連射した。大口径の弾丸は弾幕を張るように撃ちまくるもライルは重厚な鉄の盾を構え防ぎ切った。

 しっかり対策してるわけか。

 盾は恐ろしく分厚く、いくら当てようと弾丸は弾かれライルも補助魔法のおかげか止まることなく近づいた。

「ちっ!」

 狙いを下げ、ライルの足を撃つも動きは止まることなく剣を振るった。

 身を捻って攻撃を躱し間髪入れず消防斧を振るうも重厚な盾によって弾かれた。

 防御が固い。今の装備で接近戦はきついな。

 そう考え下がろうとするもライルはすかさず追いかけた。

 向かってくるライルにジョンは前蹴りを食らわせた。パワードアーマーでの蹴りは鎧を着た大の男を宙に浮かせ鎧も僅かに凹ませた。

「くおっ」

 その場に膝をつくライルにジョンは頭に狙いを合わせた。だが銃身に衝撃を感じ狙いが逸れると弾丸はライルの頭の横を通り過ぎた。

「ちっ」

 飛んできたものの方向に眼を向けると、木の裏に隠れるように弓矢を構える兵士の姿があった。

 狙いを変えて木に向けてありったけの弾丸を浴びせた。その内の何発かは貫通し兵士へと当たった。

 まずは弓使い。

 空になったマガジンを捨てて横から向かってくる傭兵に気づき素早く振り向いた。

 振るわれた剣の一撃を斧で防ぎ空になったハンドガンを投げつけた。ハンドガンは肩に当たり怯む傭兵にジョンは斧の柄で顔面を殴った。

 兜を着けていなかったため頭部に直撃した兵士は鼻血を噴き出しながら後ろに下がると、ジョンは腕を掴み関節を極めた。

「ぐがっ、放せ!」

 抵抗する兵士だがパワードアーマーの強化された力に逆らえるわけもなくジョンは盾にするようにその背に隠れた。

「卑怯者がっ!どうにかしろ!」

 ライルの言葉に魔法使いは呪文を唱えようとするとジョンは斧を投げた。真っすぐと飛んでいくもそれは間に入った大盾を持った兵士によって防がれた。

 火力が足りないな。

 端末を取り出すジョンは片手で手早く操作し、ショットガンを選ぼうとして一瞬手を止めた。

 なんだ、あれは?

 魔法使いは詠唱を終えるとその背に無数の光の球が浮かんでいた。見慣れない光景に手を止めたジョンだが直ぐにショットガンを選んで端末を収めた。その直後光の球は孤をかくように盾にした兵士を躱すような軌道でジョンの元へと向かった。

「ちっ」

「があっ!」

 躊躇いもなく兵士の腕を折り腰の短剣を奪うと後ろに下がった。だが光の球は軌道を変えてジョン目がけて飛んでいった。

 短剣で防げるものなのか?今からこれで、いや、ハンドガンならまだしもこれじゃ間に合わん。

 自分の選択のミスを後悔しながらも向かってくる光の球に向けて短剣を振るった。

 短剣で光の球は問題なく斬れた。だが斬った途端短剣の刃は熱をもったように赤く色をもち、それを続けて二度三度と続けて斬っていくも最後まで耐えきることはなかった。

 真っ赤になった短剣は刀身が溶けると残った二つの光の球はジョンの胸へと当たった。

「ぐおっ」

 散弾を受けたような衝撃に倒れるジョンの胸の装甲は熱によって赤くなっていたが、スカベンジャー自体に傷一つついていなかった。

 高い耐熱性はあるがここまで熱もったのは初めてだな。あれ以上受けてたら装甲が溶けてた可能性も。

「魔法使いは厄介だな」

 素早く立ち上がるジョンはいつの間にか握っていたショットガンを杖にして立ち上がった。

 先に始末したいが距離がある。それに大盾使いの壁が面倒だ。

 ジョンはまず近くにいた腕を折った兵士を撃った。スラッグ弾を受けて即死する傭兵の姿に守りを固めるように鉄の盾を構えなおした。。

 こいつは骨が折れるぞ。

 ショットガンを構えるジョンは近い順から次々と狙いを合わせて撃った。スカベンジャーの補助で反動がないかのように撃ち続けると兵士たちはタイミングを合わせて盾で防ごうとした。

 傭兵たちの持つ盾はイージーの意見を参考に用意された物であり、重さはあるものの貫通力のあるライフル弾も防げる重厚なものだ。

 だがジョンが装填していた弾はただのスラッグ弾ではなかった。

 発射された弾丸は実包から飛び出るとドリル状の鋭い先端が露出し、勢いよく飛び出た弾丸は盾に当たるとその貫通力から盾にめりこんだ。だが貫通するまではいかず、めり込むだけで終わった。

 剣とは違う衝撃を受け止めた兵士たちは顔を顰めるも攻撃を受け止めたことにホッとした。だが次の瞬間めり込んだ弾丸は爆発した。

 突然の爆発に傭兵たちは盾を手放すこともできず自ら持つ盾の破片と爆風に吹き飛んだ。

 傭兵たちは愛用している鎧には魔獣の革を使っており騎士が使う鉄鎧に匹敵する防御力はあったが全身の爆風、衝撃、破片、その全てを防ぎきれなかった。

「対大型特殊生物兵器用貫通爆裂弾、通称ボム。防げるものなら防いでみろ」

 そう言いながら弾丸を込めていくジョンは既に通常のスラッグ弾を込めていたがそれに気づくものはいなかった。

 これで向こうも防御の意味がないことが分かったはず。なら次にしてくるのは逃走か決死覚悟の集団攻撃か。どちらにせよあの弾は接近戦には合わないからな。近づかれたらこっちも巻き添えを食う。

 弾を二発込める間もなく傭兵たちは動いた。魔法使いを除く全員が迫る中、一人はナイフを投げてくるとジョンは装填を止めてショットガンを盾にして防いだ。

 素早い対応だ。込める時間もない。

 一発だけ込めたところでフォアエンドを前後させ、向かってくる三人の兵士を迎えた。

 盾の対策が意味はないと思ったのか、向かってくる兵士たちは盾を捨てて身軽になっているのか先ほど以上に動きは速かった。

 真正面から向かってくる兵士にジョンは迷わず狙いを合わせて撃つと頭に当たった弾丸は兜など意味がないと言わんばかりに粉砕し大穴を開けて周囲に血と脳漿をばらまいた。

 その酷い光景に残る二人は怯みもせずジョンに迫った。

 迫りくる剣の斬撃にジョンはショットガンとアーマーの装甲部分で受け流すと、傭兵の一人にショットガンで殴りつけ怯んだところに前蹴りを放った。

 地面に叩きつけられるように転がる傭兵にジョンは興味を示さず残る一人に向こうとするもそこに傭兵の姿はなかった。

「ぐおっ」

 突如感じた焼けるような背中の痛みに振り向くと後ろに回っていた傭兵は剣を振り上げていた。

 よく動く。殺すのが惜しいな。

 身を捻り寸前のところで躱すとジョンは腰にある予備のハンドガンを抜き素早く一発撃った。その早撃ちと言える一撃の先には丁度詠唱を終えて魔法を放とうとしいる魔法使いが立っていた。

 大盾と言う壁がなくなり守りのない魔法使いは頭に一撃のもとで即死した。

「やってくれるな!」

 怒りを露わにする傭兵の一撃はハンドガンを構え真っすぐ伸びたジョンの腕に叩きつけられた。幸い装甲が腕を守り切断されなかったが骨にヒビが入った。

「!」

 痛みのあまり息を呑むジョンだがその動きを止めずショットガンで兵士の兜を殴った。

「うっ」

 顔面に衝撃を受けてよろめくも傭兵の振るった剣はジョンの肩に振るわれた。

「!」

 斬れはしなくてもこいつの一撃は重い。

 痛みに顔を歪めながらもハンドガンをホルスターに収めて、手の中に現れる弾をショットガンに一発込めた。

 振るわれる剣にジョンはその刀目がけて撃った。撃たれたことで二つに折れた刀身は宙を舞う中、ジョンはショットガンのスでトックで傭兵の顔面を殴り飛ばした。

「ぐがっ」

 全力で振るわれたジョンの一撃に硬い兜を僅かに凹ませ勢いよく地面に倒れた。

「悪いが接近戦は化け物相手に慣れてるんだ」

 ジョンの声に兵士は立ち上がろうとするも直ぐに力尽きたように動かなくなった。

 残るは二人…厄介そうなのがな。

 弾を出してショットガンに込めるジョンの前にライルはゆっくりと前に出た。

「…名うての傭兵たちを雇ったというのに。そこまでしてなぜあの竜を守ろうとする!」

 その言葉にジョンは弾を込め終え深く息を吐いた。

「竜は大して関係ない。俺はただ静かに暮らしたかった。なのにお前らのせいでそれもおじゃんだ。だから殺す。なにより悪党は許さん」

「ふざけてろ。言っておくが既にお前の事はランド王国に報告している!例えここで生き残ったとしても王国にお尋ね者として追われることとなる!」

 勝ち誇ったように言うライルにジョンはため息をついた。

「そうか。それがどうした」

 ショットガンを連射するジョンにライルは盾を構えて駆けてきた。

 足元がお留守…ってそりゃないだろ。

 足に狙いを合わす前にライルの盾になるように大盾使いが前に出て進んできた。

 弾を込めなおすジョンは間近まで迫る大盾使いに一発撃っただが。大盾は僅かに凹みはすれど歩みを止めることはなかった。

 間近に迫る大盾使いは大盾を突き出すもその時にはジョンは横に跳んだ。受け身など考えず勢いよく跳ぶと大盾使いの横に回りこんだ。

 肩から着地する寸前放った一発は大盾使いの足に風穴を開けると、その衝撃で勢いよく地面に転がった。

「ぐがっ」

 撃たれた痛みと衝撃に大盾使いは苦悶の声をあげるも次の瞬間隙だらけとなった胸に風穴が開き派手に吹っ飛んだ。

「おのれ!」

 振り上げられる剣にジョンは立ち上がるのを止めてショットガンを向けた。

 即座にライルは剣を盾にするよう構えるとスラッグ弾を柄で受け止めた。衝撃でよろめくも直ぐに態勢を立て直し突きを放ってきた。

 放たれた突きにジョンは転がって躱すと足の力で跳ねるように立ち上がった。

 立ち上がるジョンは直ぐに撃つとライルは盾で防いで殴りかかってきた。マスク越しに受けてのけぞるも態勢を崩すことはなく殴り返した。

「ぐおっ」

 拳をライルは盾で受け止めるもパワードアーマーで放たれた全力の拳に耐え切れず態勢を崩しその場に倒れた。

「終わりだ」

「まだだ!」

 立ち上がろうとするライルだが既にジョンはショットガンを向けていた。

「いや、終わりだ」

 ショットガンに込められた残りの弾丸全てをライルに浴びせた。至近距離のスラッグ弾は鎧を貫くと全身に幾つもの風穴を開けた。

「ごほっ」

 血の塊を吐き出すライルはなにか言いたげに口を開けるもそのまま力尽きた。

 死んだライルを見つめるジョンは素早く弾を出すとショットガンに装填した。

 さっきと同じなら甦るはずだ。

 死体の指がピクリと動くと死んでいたライルは勢いよく立ち上がろうとしたが、その先でジョンはショットガンを向けていた

「言っただろ。終わりだ」

 巨大な風穴を開けて頭の中身を吹き飛ぶライルは再び倒れた。

「イージーが甦ったんだ。お前も甦ると思ったよ」

 ショットガンを肩に担ごうとしたジョンだが直ぐに肩の痛みに顔を顰めた。

「くそっ、痛むな」

 そんなこと言ってる場合じゃないな。急いで洞窟に行くか。

 ショットガンに弾を込めながらジョンは洞窟へと駆け足で向かった。

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