1章ー02
「ひぃー、ひぃー」
「なんて…山だ」
山頂手前で騎士団は道中の洞窟の中で休憩していた。ジョンは一人警戒しつつ洞窟で休んでる騎士たちを見た。彼らは皆ヘトヘトに疲れきりほとんどが兜を外し呼吸を整えたり水をがぶ飲みしている。その中にはライルとイージーの姿もある。
「だから言っただろ。鎧を着て山登りなんて無茶だったんだ」
「グチグチ言うな。もう少ししたら決戦だ。用意しておけ」
運の良い連中だ。この山中で大した魔獣と遭遇しなったのは幸運だったな。もし遭遇していたら竜どころじゃなかったろうに。
森の中、山に来るまでの間ハウンドの群れと何度か戦闘があった。統率された群れの動きに騎士たちは翻弄されるも重武装を前に牙は役にたたずイージーの出番もなく皆撃退されていった。
まぁ鎧を着ていなかったら森のところで撤退してたな。しかしこんな連中であんなでかぶつを殺せるのか。
そう思いながらジョンは騎士たちには見えないよう懐に手を入れて端末を操作した。
「おっし行くぞ!これから竜退治だ!全員気合入れろ!」
イージーのその言葉にふらつきながら皆立ち上がちノロノロと歩き出した。
「よかったら先を見てこようか?」
「ん?それはありがたいが、いいのか?」
「あんたらあまりに頼りないからな。竜と戦う前に少しでも情報は欲しいだろ」
ジョンの提案にライルは考えこんだが直ぐに頷いた。
「なら頼もう。言っておくが竜は強大な存在だ。見つけても近づかないように」
「俺だって死にたくない。そんなこと分かってる」
背を向けて手を振るジョンは洞窟を出ると一人外へと出た。
洞窟の外は下の森のように木が生い茂っておりジョンの位置からは竜の姿は見えない。それでもまるで道が分かっているかのように迷うことなく竜の元へ歩いていった。その手には端末が握られ画面には自身の頭上からとらえた映像が出ている。
どうやら竜がいるせいかここら一帯に魔獣や動物の姿がないな。この山頂にいるのは俺たちだけか。
険しい山の中を軽々と通っていくジョンは遂に目的地へとたどり着いた。
「片道は大体四時間。戻る時は夕方か」
そう呟くジョンの前には巨大な竜が崖の上にいた。その大きさはジョンよりも遥かに大きく口を開ければ簡単に丸呑みできそうなほどだ。
「これが竜か。映画で見た恐竜みたいな迫力だな」
意識がないのは映像で分かってたが近づくのはおっかないな。さっさと仕込んで戻るか。
ジョンは慎重に様子を見ると竜は鼻から穏やかに息をしている。
「しかし傷だらけだな。やはりこの世界は過酷だな」
そんなこと思いながら背を向けようとしたジョンは竜の目が開いた瞬間に魔筒を構えた。
「落ち着け、危害は加える気はない!」
魔筒を下げつつもいつでも構えられる態勢をとりながらジョンは下がった。
襲いかかるなら仕方ないができればやり合いたくはないな。
そう考えつつもジョンはいつでも用意していた物を使えるように空いている手を動かした。
「危害を…加えないか。ならば去るといい」
「…喋った」
竜の巨大な口から聞こえてきた言葉にジョンは驚きのあまり構えを解いた。
昔見たファンタジー映画でも竜は言葉を話してたから声をかけたが…まさか本当に通じるとは…本当にこの世界はファンタスティックだ。
驚くジョンに竜は喋るのも辛そうに口を開いた。
「もう一度言う。早くここから立ち去れ。そうしなければ私を追う者たちと遭遇し面倒に巻き込まれるやもしれん」
「ならもう遅い。もう巻き込まれてここまで連れてこられた」
「それは悪いことをした。ならなおのことここを去るべきだ。連中には私が誤魔化しておく」
こいつ俺のこと気遣ってる。…どうやら下にいる騎士たちより話ができそうだ。
考えを変えジョンは魔筒を完全に下ろしゆっくりと近づいた。
「そう言うならお前がここから離れたらどうだ?そうした方が連中も諦めるだろ」
「それができない理由があるのだ」
そう言って竜はゆっくりと立ち上がった。それだけで周囲に土埃が舞いジョンも肩にかかった土を払った。
「それは…子供か?」
立ち上がった竜の下には体長一メートルほどの竜が寝ていた。全身傷だらけで意識もなく今にも呼吸するのもやっとなほどだ。
「私の子だ。北の地で人間たちに襲われこの地まで連れてこられた。王の献上品とするつもりだったのだろうが奪い返した。だが受けた傷が酷く、ここ数日寝ている」
そういうことか。ろくでもない連中だと思ってたが想像以上にろくでもなかったな。
「大丈夫なのか」
「分からう。長期間毒をもらい弱っているが安静にしていればいずれ自力で解毒するはずだ」
そういう事情なら仕方ない。エールには悪いがしばらく我慢してもらおうか。
「分かった。ならここでゆっくりすればいい。と言ってもそこにずっと入られると下にある村が困るんだ」
「すまない。ここを去る前に迷惑をかけた謝罪したいが…無理そうだ」
竜の言葉に振り向くジョンが見たのは走り去る人影だった。
追跡に気づかなかった。俺も鈍ったな。
「ここを直ぐに離れる。そちらも急ぎ山を下りるのだ」
「俺のミスだ。ここはどうにするから待ってろ」
そう言うとジョンは端末を操作しどこからか取り出したガムテープでグルグル巻きにされた手提げバックほどの物を人影の消えた方向へと投げた。
「見慣れぬ物だ。何の意味がある」
「連中が来たら分かる」
そう言うと竜の方へ振り向いた。
「それにしても竜ならあんな連中は直ぐに倒せるんじゃないか」
「本来であればな。だが私も長旅と手傷で消耗している。今は空を飛ぶのもやっとだ」
溜息のように深く息をその姿にウソを言ってるようには見えなかった。
「大変だな。治せるのか」
「ゆっくり休むことができれば」
そう言うと力尽きるように竜はその場に座った。
「おいおい、大丈夫か」
ジョンはそうは聞くも竜は答えなかった。気になって近づくと眠っているのか寝息をたていた。
「だいぶお疲れのようだ」
こいつのことはどうでも良かったがまさかここまで理性的で知能が高いとはな。なんにせよ予定通りにいくか。
竜から背を向け騎士団が来るのを待つと少ししてイージーを筆頭に姿を現した。
「こいつはどういうことだ?まさかお前が仕留めたか?」
「いや、話すと色々事情があるみたいだったからな。しばらくここで休んだら出て行くらしいからそれまで休ませようと思ってな」
「…本気で言ってるのか?傷が癒えたら復讐に来るぞ」
「かもしれないが俺には関係ない。来るとしたら子供を攫ったお前らランド王国にだろ」
その言葉にライルは剣を抜いた。
「どういうつもりか知らないが事情を知ったなら話は早い。我々はそこの竜を殺し子供を奪い返すつもりだ。邪魔をする気なら容赦なく斬るぞ」
「俺を相手にしたうえで竜を殺せると思うのか」
「できるな!そこの竜は子供を救うための攻撃を受け続け既に死にかけている!飛びさえしなければこの人数でも殺すことはできる」
納得した。だからこんなでかぶつ相手にこの人数なわけか。
「最後のチャンスだ!強がってないでこっちへ来い!お前にも竜殺しの栄誉を得られるのだぞ!」
「興味ない。来るなら早く来い」
欠伸をしながら挑発するように手招きするジョンにライルは腕を上げた。
「これより竜狩りを行う!作戦は予定通り!邪魔する者は殺せ!」
ライルのその言葉に騎士たちは各々の武器を構えたが一人だけ壺のような物を取り出し両手に持った。
あれはなんだ?形からして投擲するんだろうが…近づいてから一気に数を減らすつもりだったが今やるか。
作戦を変えたジョンは手に持っていた物を強く握った。その瞬間先ほど投げられた物は爆発し周囲一帯を一瞬で吹き飛ばした。爆風によって騎士たちは吹き飛び風はジョンにまで届いた。
「まだだ」
土煙が舞い、突然のことに反応できず固まる騎士たちを前にジョンは魔筒を素早く分解を始めた。部品など興味もなく投げ捨てていくと必要とされる中身を取り出した。
取り出したのは大口径のハンドガン。それも通常の物よりも長い銃身にサプレッサー、増量マガジン、レーザーポインター、ラバーグリップと様々なカスタムが施されている。
やっぱりこっちの方が手に馴染む。隠すためとはいえ二度と使わないぞ。
久々に握るハンドガンの感触を堪能しつつジョンは土煙に向けてハンドガンを構えた。
待っていた煙は直ぐ収まり視界が開けた。それと共にジョンは視界の入った騎士から片っ端から狙い撃った。
サプレッサーによって掠れたような小さな銃声とは違い、その一発の威力は騎士の鎧を撃ち抜き胸に二発、頭に一発と風穴を開けた。
増量マガジンに入っている銃弾を全て撃ち終えたジョンは慣れた手つきでマガジンを捨て何もない空間から新しいマガジンを取り出して交換した。
「畜生がぁー!なにしやがったー!」
「なんだまだ生きてたか」
怒鳴り声をあげるイージーの声にジョンは狙いを合わせると同時に連射した。反動を感じさせずに撃ちまくるもその弾丸は立ち上がった騎士の盾に阻まれた。
盾は凹んではいるが貫けないか。革の盾なら鎧ごと貫けるがさすがに鉄の盾は分厚かったか。
そう思うもジョンはハンドガンを躊躇なく放り捨てると空いた両手で素早く端末を操作し始めた。
「だがこれで半分は減ったか」
端末の武器選択画面からショットガンを選択し何種類かある内の一つを選びながらジョンは合間にイージーたちを見た。
先ほどの高性能爆薬で吹き飛んだ騎士たちとジョンが殺した騎士たちと合わせると既に半数は死んでいた。
やはりあの壺持ちを殺して正解だったな。持ってた奴ドロドロに溶けて液体になってる。
一人ドロドロに溶けている死体を一瞥するジョンは二度目の怒鳴り声でイージーの方へ向いた。
「聞いてんのか!ああっ!」
「聞こえてる。あんまり怒鳴るなやかましい」
そう言いながらジョンはショットガンのカスタムを設定すると、その手には設定された通りのストックのない小型のポンプアクションショットガンが握られていた。先ほど同様にカスタムされたショットガンは大型サプレッサーが装着され銃身が長く見える。
「やっぱり同じ召喚者じゃねぇか!それになんだ!その武器!どういう能力じゃそりゃ!」
前に出ようとするイージーにライルは引き留めた。どうやら他に仕掛けられてないか気にしてるようだ。
「能力はワンマンアーミー。俺が何かを攻撃するとポイントが入り、そのポイントで俺がこれまで見聞きした全ての武器を召喚できる。さっきの爆薬もそれだ」
そう言いながらジョンはショットガンを構えた。
「ついでに言っておくと今までこの能力知ったろくでなしはほぼ皆殺しにしてきた。意味は分かるな」
そう言うとジョンはショットガンを撃ちだしながら前へと出た。先ほど同様にサプレッサーによって掠れた銃声が響くがその威力は凄まじく、鉄の盾は一撃で大きく凹み間髪入れず放った二度目の弾丸に盾には風穴が開き肩を撃ち抜いた。その衝撃に撃たれた騎士は吹き飛ぶように倒れ肩には大穴が開いていた。
「ざけやがって!お前ら突撃しろ!あの武器は一度にそう何回も撃てねぇ!」
その言葉に騎士たちは躊躇うことなく盾を構え前へと出た。
イージー自身はこれまで銃火器物に触れたことはなかった。テレビやゲームでしか見たことはなかったが、それがどういうものか理解していた。だからこそ負ける気はしなかった。
突撃する騎士たちにジョンは怯むことなくショットガン二発撃った。先頭を駆けていた二人は盾で受け止めるもその衝撃に足を滑らせて転ぶと後ろから続いていた騎士を巻き込んだ。しかし残る騎士たちは一瞬足を止めるも突撃を続けた。
ジョンはその僅かな間で弾切れになったショットガンのフォアエンドを引き素早くタクティカルロードで弾を込めていた。
「死ねーっ!」
一人の騎士が間合いに入ると動作の少ない突きを放った。その動きは訓練された騎士のものだがジョンは横に回って躱すと横から至近距離から腹に食らわせた。
衝撃で吹き飛ぶ騎士にジョンは気にせず次に向かってくる騎士に向けて二発放ち、懐から取り出した物を騎士たちに向けて投げると直ぐに背を向けた。
ジョンの行動に不審がる騎士だがその直後の閃光に皆視界を奪われた。
竜が襲いそうになった時に使うつもりだったが無駄にポイントを消費しなくて良かった。
そう思いながらジョンはショットガンに弾を装填していくと目が見えず動けない騎士たちに一撃で葬っていった。
残る騎士二人は警戒しながら下がると代わりにイージーが前に出た。
「逃げろ。こいつは俺がやる」
斧を構えるイージーにジョンは空になったショットガンに弾を込めていた。
「竜退治はいいのか?ほら目の前にいるぞ」
「てめぇが切り札を壊しちまったからな!だが生き残りさえすればこっちのもんだ!」
そうきたか。だがこの広い森の中で逃げられても俺の有利は変わらない。だが逃げきられる可能性はなくはない。
ライルは何か言いたげに口を開けたが騎士たちに指示すると背を向けて山を下りだした。
「意外だな。まさか仲間のための時間稼ぎとはな」
「なわけねぇだろ。てめぇをやる前にあいつらが殺されたら俺の評価にならんだろ。最悪竜は持ち帰れなくとも王国の敵である召喚者を殺せば貴族の仲間入りも夢じゃない!」
貴族か。そういう考えは俺には分からんがやはり特権階級っていうのは憧れるものなんだろう。
「分かった、分かった。現実を知る前に殺してやるから来い」
「言ってくれる。俺はイージー!ランド王国所属の召喚者!」
改めて名乗りあげるイージーにジョンはため息をついた。
「名はジョン・ドゥ。平穏に暮らしたいただの男だ」
「はっ、温いこと言ってくれる!特殊能力は召喚前の生活や能力によって決まる!そんな物騒な能力を持つ奴のセリフじゃねぇな!」
突撃するイージーにジョンはショットガンを連射した。まるで機械のような精密な速さであったがイージーは足を止めるもまた直ぐに駆け出した。撃たれた鎧は僅かに凹みはすれど大きな傷にはなっていない。
見掛け倒しの鎧じゃないわけか。あの重厚さなら魔法の武具でもない限り人間が持てる重量の物じゃない。恐らく特殊能力…筋力か重さをコントロールするものだ。なんにしても下手な接近戦は避けたい相手だ。
「喰らいやがれー!」
力任せの斧の大ぶりな一撃にジョンは後ろに下がって躱すと片手で端末を操作し素早く懐に戻した。
この距離でスラッグ弾で貫けないならもっと過激にいくしかないな。
先ほどの弾丸とは形状の違う弾丸を空になったショットガンに一発込めるとフォアエンドを前後に動かした。
「耐えきれるか」
感情もなく呟くジョンは腰構えで構えるとそれを見たイージーは勝利を確信した。銃弾を受けた衝撃に足を止めたが耐え切れないものではなかった。大型ライフルやにランチャーの類を使われたら逃げることを考えたが使う様子がないなら後は距離を詰めて追い詰めさえすればいいだけだ。
そう決めて斧を振り上げるもその視界は白い光に覆われた。その瞬間ジョンの持つショットガンから文字通り火を吹いた。
「なっ、なんじゃー!」
全身が炎に包まれたイージーは地面を転がるもその炎は消えることなく鎧にまとわりつくように燃えていた。
「ぎゃっー!熱い!熱い!焼ける!体が焼ける!」
「直撃すれば普通はもう死んでるが鎧のせいで直撃が免れたか」
悶え苦しむイージーにジョンは距離をとりながら焼夷弾を装填をはじめた。
「畜生!畜生が!」
叫びながら転がるイージーはどうにか体にまとわりついた炎を消すもその姿は既にズタボロでふらつきながら立ち上がった。
震える手で兜を外すイージーの顔は焼け爛れ片目は完全に潰れていた。
「殺して…殺してやる」
「よく言われる」
逃げようとする背を向けるイージーにジョンは躊躇いなくその背を撃った。火炎のように吹いた焼夷弾はイージーの体を炎で包むとそのまま山道を転がり落ちていった。
「死んだか?」
ショットガンを投げ捨てたジョンは端末を操作しバトルライフルを取り出し装着しているサーマルスコープを覗いた。
ちっ、あいつの炎が邪魔で見えん。あいつが動いていれば分かるんだが…ポイントも入ってない。
「死んではいないか」
構えるのを止め端末を操作するジョンはポイントの合計値を確認した。その数字にジョンは舌打ちした。
ショットガンとライフル、カスタムパーツに加えて爆薬に閃光手榴弾。これだけでもマイナスだっていうのに、まだ仕留めきれないとはついていない。ポイントの消費が大きいし目立つから使いたくはなかったが生き残りがいる方がまずいか。
ため息をつきながらバトルライフルを投げ捨て端末を操作するジョンは小型ドローンを二つ選んだ。
「面白い道具を使うな」
後ろから聞こえる竜の声にジョンは答えずドローンの一つを空へと投げると、それは空を飛び端末の画面はドローンに搭載しているカメラ映像へと変わった。
「詳しく聞くな。お前も殺すことになるぞ」
「ならば黙ろう。しかし彼らを逃がして大丈夫なのか?あと向こうの方で火事が起きているが」
「火事は気にするな。じきにあの火で一人死ぬ。残りの三人も今から始末する」
端末の画面に映る映像から操作を続けるジョンは山の中を捜索していると、山を急いで降りようとする三人の人の姿を見つけると三人の内の一人をタップすると狙いをドローンはジョンの手から離れ自動で動き出し真っすぐと彼らの元に向かって行った。
「気にするなというが火は燃え広がっているぞ。ぬぅ、ここにまで煙が」
「え?おおっ、思ったより酷いな」
振り向くと火の手が大きくなりどこからか爆発音が響いた。
ドローンに付けられていた爆薬が爆発したか。爆発半径二メートルだから運が良ければ全員死んだな。
ジョンはもう一つのドローンを投げると直ぐには操作せずに燃え上がる木々の方を眺めた。
「…火の勢いが強い。すまん、どうしようもない」
いつの間にか大きな山火事になっている炎にジョンは呆然と見上げることしかできなかった。
まずいな。このまま直ぐに下りたとしても途中で巻き込まれるな。
「愚か者。ならばこちらで火を消そう」
そう言うと竜は気だるそうに前足を振るうと突如突風が巻き起こり竜巻に変化した。竜巻は炎を吸い上げるようにして消していった。
「空気がなくば、いくら木があろうと燃えることはできない」
「これも魔法か。またずいぶんと便利だな」
「そうでもない…疲れた」
疲れたように息を吐く竜の吐息にジョンは生ぬるい風を全身で受けながら端末に表示されているポイントの合計値を見た。
イージーは死んでないな。俺の攻撃を受けてそれに関係した傷を負えばポイントは加算される。あの大怪我で長くはないと思うが…後でもう一つ飛ばすか。
どちらを捜索しようか悩むジョンだが予定通りもう一度騎士たちのに向けてドローンを飛ばし先ほどと同じ場所に捜索した。
爆発の跡もあり直ぐに見つけるとそこでは先ほどの三人が地面に倒れ、その内の一人はドローンが直撃したのか鎧は変形し手足は通常ではありえない方向を向いている。
二人は動いてる。二人の距離は少し離れているが間を狙えば死ぬことはなくても大怪我を負わせられる。後は放置すれば勝手に終わる。
そう決めてドローンを二人の間へと手動で移動させた。
「ん?あれは」
手動で爆発させようとする直前、カメラに一瞬人の姿が見えた。手が止まり注視するもカメラの映像は途絶え端末に表示されていた操作画面も消えた。
「落とされたか」
端末の操作画面を変えたジョンは端末を耳元に近づけた。
「こちらジョン。エール聞こえるか」
呼びかけに返事はなく何度か問うと少しして答えは返ってきた。
「え、えーと…こんにちは。これ聞こえてる?」
画面の向こうから心配気なエールの声にジョンは気にせず言葉を続けた。
「聞こえてる。竜退治は失敗した。悪いが今すぐこっちに来てくれないか。というか来ないと酷い目に合うから急げ」
「え!?なにそれ!本当に何したの?」
怒鳴るエールの叫びに画面から耳を離すも直ぐに戻した。
「三人殺しきれなかった。そいつらに会わないように来るんだ。ああ、竜に効く薬も用意しておいてくれ」
「……色々と聞きたいところだけど本当何してるの?」
呆れたように言うエールの声にジョンは思い出したことを伝えた。
「それと預けていた物も持ってきてくれ。革袋に入ってるから担いでいけばそう苦労しないだろ」
「ちょっ!」
「食料と飲み物も頼む」
「ふざけ…」
怒るエールに最後まで聞かずジョンは端末の通話を切った。
念のために通信機を渡しておいて良かった。ここに来るのも危険だがあの村にいても危険だろう。
そう考えながらジョンは偵察用ドローンを端末から呼び出した。先ほどのドローンと違い、大型のドローンが遥か上空から飛んできた。それは高精度カメラにより山だけで村まで全体を見渡し一メートル以上の生き物全てをマークしている。
ジョンは端末からカメラ映像を見ると先ほどの三人に向けて拡大した。すると三人は生きているようでノロノロと山を下っていた。
「三人目は…しぶとい男だ」
カメラに映っているのは見覚えのある分厚い鎧と斧だった。位置的に顔までは見えないがその装備から直ぐにイージーだと分かった。
このまま遠隔操作の武器で始末したいがこれ以上高ポイントを消費するのは割に合わないな。追跡は…あれを抜きにイージーを追跡するのは危険か。
「仕方ないか。エールの誘導に集中するか」
ジョンは端末画面を操作してエールと連絡し道案内をして時間を潰した。




