0章ー20
アクア王国から東に位置する大国、ランド王国では一つの話し合いが行われていた。
「想定外の結果だな。計画の続行は可能かエルドリッチ?」
その問いにエルドリッチは首を横に振った。
「残念じゃが。さすがにあれだけの被害が出たからの。王城はほぼ全壊、城にいた者はわし以外は全滅なうえ周辺への被害も甚大。鉄壁と言われた城壁にも大穴が開いておる。英雄王の次の代役を立てたとしても国としてはもう機能はせんじゃろ」
「そうか…そこまでか。一体なにが起きた?」
「分からんのう。わしとしては隕石かとも思ったが三度も落ちてきたからな。なんにせよ残りの肉体がほとんど残っておらん。まさに死ぬかと思ったわ」
愉快そうに高笑いをするエルどリッチだが周りの反応は驚いていた。
「敵の攻撃か自然災害か。引き続き調査は必要だが…前に話に出ていた召喚者の可能性はあるのか」
「あり得ぬ。一召喚者が城を大破させるなどわしの知る限り………一人おるが奴ならばわしが気付かんわけがない」
「そうか。ワンはどう思う?実際に戦った感触はどうだ?」
その問いに隅で話を聞いていたワンは小さく頷いた。
「戦った召喚者は異世界の武器である鉄砲。ハワードの開発した鉄砲が玩具に見えるほど性能が高く、装備も我々の世界のものと質が違う。だが使った装備の中に城を破壊できるものは確認していない」
「そういうわけじゃ。引き続き調査を…」
「だがあの男は得体が知れない。あくまで推測だが城を破壊し、草原の高台で英雄王を殺したのはあの男と思っている」
ワンのその言葉にエルドリッチは忌々しく睨むが質問してきた者の問いに息を呑んだ。
「エルドリッチ、英雄王は城の攻撃で死んだのではないのか?」
「…説明が足りんかったな。英雄王はわしと同様に死ぬことはなかったが、その後離れた草原で無残な状態で発見されとる。損傷は激しいがかろうじて生きてはおる。動けるようになるまで時間がかかろう」
「ならば他の素体同様にハワードに渡せ。あれは強力なゴーレムの素体になる」
「酷いのぅ。あれはわしが召喚したというのに。あの男の半人半竜の肉体は頑強で良い肉になったろうに」
残念そうに言うエルドリッチにを無視しその者は質問を続けた。
「今回の件で計画は大きく変更する必要が出た。そこで聞くエルドリッチ…この穴埋めをどうする気だ?」
その者の問いにエルドリッチは深くため息をついた。
「心配はせんでいい。グスタフ家の長男とは既に接触しておる。近いうちにに目標として接触できる。そうなれば後は時間の問題じゃ」
「ならいい。帝国の調査が終わり次第痕跡を残さず現場から撤退させよ。帝国は状況をみてどうするか判断する。いいか、異界の門が出現させるまで時間はない。それまでに障害となるものを全て排除せよ」
そう言うとその者は立ち上がり部屋から出ていった。部屋にいた者たちも次々と出ていく中でエルドリッチもため息をついて立ち上がろうとした。
「エルドリッチ」
「…ワンか。ゴーレム風情がなんの用だ?」
睨むエルドリッチにワンは気にした風もなく隣の椅子に座った。
「聞きたいことがある。お前が召喚した召喚者だが皆強力なものたちだと聞く。その中で英雄王は強かったのか?」
「いや、あの男は最弱じゃよ。わしがこれまで直接召喚したのは四人じゃが、残る三人と比べ物にならん。…ただ英雄王以上に問題があってな」
「濁さずに言ったらどうだ。最初の一人は仕事をミスって鬼どもに封印されて、二人目はあんたが気に食わないからって、あんたをぼこぼこに半殺しにしてアジトの一つを跡形も残さず吹っ飛ばして逃げてから行方不明。最後の一人は一つ仕事を任せたらそのまま行方不明。笑える話だろ」
「…ハワード。遅刻しといてその口はなんじゃ」
新たに現れたその男は軍服風の服を着こみ、腰には杖と二連式連装銃を装備している。
「仕事だ。あんたのくれた新しい素体で、これまでできなかった大量生産の糸口が見つかりそうだ。そんなことよりワン調子はどうだ?」
「問題はない。ただ勝負に負けた」
その言葉にハワードは眉を寄せた。
「お前が?笑えない話だ。本気を出さなくても片手間で英雄王程度は倒せるだろ。おっと悪く思うな。事実だからな」
「思わんよ。奴は竜になれるだけのクズじゃからな」
「つまりそれだけの敵というだけだ。名はたしか…」
「たしかデストロイヤーじゃったな。死体を回収に行った時にそんな話を聞いた」




