0章ー02
「さて…ここは一体どこなんだ?」
暗い洞窟を抜けた男は先にある崖の前まで歩いた。その先には男が見たこともない広大な森と草原、遠くには雲に届きそうなほどの山脈。そして巨大な城壁に守られたさらに巨大な城がそびえ立っている。
少なくとも俺の知ってる場所とは違うな。さびれた田舎町でも化け物共もいない。夢じゃないな。装備はパワードアーマーのスカベンジャーにハンドガンと予備マガジンが五つにコンバットナイフ。通信用のナノマシンは……機能はするが応答はしない。本部や仲間とも連絡がつかない…思った通りか。
端末を手に取るとその場で操作し始めた。
さっきと同じだ。ホーム画面には新しいアイコンがあった。クリックすると画面が切り替わって武器の選択ができるわけか。さっきの火炎放射器を使ったからかポイントが僅かに減ってる。
「どこまで使えるか分からないが、これだけじゃ心もとない」
腰のホルスターを一瞥し男は武器選択画面から仲間がよく使っていたサブマシンガンを選んだ。するとポイントの消費と共に手の中には大口径サブマシンガンが現れた。
動作確認…支障なし。弾は装填済み…ん?排出した弾が消えて手の中に新しい弾か。ポイントは減ってないことは弾はタダか…こいつはいい。
マガジンを外し再び込める男はスライドを引いて崖から離れようとするとどこから悲鳴のような声が聞こえた。
「!」
とっさにサブマシンガンを構える男は周囲の警戒を終えると迷わず声の聞こえた方向に進みだした。
声がしたのは森の方か。感じからしてそう遠くはないだろうが。
男は歩き続けると森から人が飛び出すように出てきた。それは女性のようで怪我でもしてるのか足を引きずりながらも懸命に何かから逃れようと走っていた。
「あれか。…珍しい格好だな」
女はファンタジーや中世を思わせるようなドレスを着ており、その足首には矢らしき物が刺さっていた。
何かから逃げている。恐らくは人だろうが…どうする?状況も分からないまま現地人に接触は危険だろうな。こういった訓練を受けてないから分からんな。
「………………仕方ない。情報収集が優先だ」
ナノマシンの翻訳機に異常がないといいんだが。いやさっき話せたから問題ないはず。
葛藤しながらも駆け出す男は離れた距離を自動車を思わせる速さで駆けて行った。だが女は男に気付き振り向く前に森から放たれた矢が背中を射抜いた。
驚きに目を見開きその場に倒れる女の姿に男は足を止めた。
「当てたぞ!」
「バカ殺すな。楽しみが一つ減るだろ」
男たちの声が響き男は見ると、弓矢や剣や斧を持った男たちが現れた。彼らの姿は男も初めて見る革鎧を身に纏ってた。
「急いで連れて戻るぞ。回復魔法を使える奴がいた…だろ」
駆けてくる彼らは男に気付くと固まったように動かなくなった。やがて一人が慎重に前へと出てきた。
「あの、貴方さまは新しい将軍さま?それとも騎士さまでしょうか?」
将軍?騎士?言ってる意味が分からないが向こうが勘違いしてるなら丁度いい。幸いマスクもしてるから面が割れることもない。
「これはどういうことだ?」
堂々と男は女をサブマシンガンで指すと途端に彼らの態度は軟化した。
「よく聞いてくれました。この先に連中のアジトを探していましたところこそこそしてるこいつらを見つけました。傷を癒して聞き出せば情報を吐くはずです。あ、もちろんこいつは傷を治療したら手を出さずに進呈しますので」
いやらしく笑う彼らに男は無表情で聞き目だけは倒れた女を見た。二発の矢の刺さった女は大怪我を負ってるものの意識はあり怯えた様子でどうにか逃れようと這っていた。
「こいつら?他にもいるのか」
「はい、こいつくらいの若い男と女の二人でした。こいつを逃がそうと向かってきましたが、今は捕まえております。あ、連中に興味があるなら急いで案内します。あのバカ共男女お構いなしなんで」
「そうか、なら案内しろ」
這って逃げる女を男は片手で掴みあげると血がつくことなど気にもせず肩に背負った。小さく聞こえる声に耳も傾けず案内する兵士らしき彼らの後に続いて森の中へと入っていった。
「しかし、えーと…失礼。お名前を聞いても?」
名前か。念のために作戦時のコードネームでいいか。
「ジョン・ドゥだ。この先ではどうなってる?」
「仮設基地を設置してます。明日から編成された制圧部隊が動き出しますしので、そのための補給基地にする予定です」
「そうか」
短くそう言うとジョンはサブマシンガンの安全装置を外し単発へと切り替えた。その音に誰も気づくことはなかった。
「ここです。まだ仮設なんで汚いらしいところですが」
しばらく森の中を歩いて行くと周囲の木で作ったであろう丸太の塀に囲われた場所に案内された。
…酷い場所だ。
マスクの裏でジョンは顔を顰めた。中は一つ二つの簡易テントがあるだけだった。地面には瓶や食い散らかした食べ物が転がり中央には下半身裸の男たちが二人の若い男女に襲い掛かっていた。二人は首枷させられ満足に動くことができないようで抵抗するもされるがままに服を脱がされていた。
「すいません。直ぐに止めさせて洗わせますんで少々お待ちを」
「直ぐに連中を退けろ。…ついでに二人に水でもかけてやれ」
ジョンの指示に素直に従う彼らは仲間たちを退けるとバケツ一杯の水を二人にぶちまけた。
「お待たせしました。どうぞ」
笑顔で準備ができたと伝えるもジョンは返事をせず肩に担いでいた女を連れて二人の前へと歩いた。
「ああ、そんなユアンさま」
「…彼女を助けてくれ。俺たちは好きにしていい」
半裸の二人は全身傷だらけで声を出すのもやっとではあったが、それでも女のことを心配していた。そんな二人の前にジョンは荷物のように女を下ろした。
地面に落とされた女は苦しそうに咳き込むも弱った手で仲間たちに手を伸ばそうとするもその手は宙を彷徨った。
「治療できる奴はどこだ?前に出ろ」
「へい、あっしです」
そう言って前に出る男はズボンも履かず股間の一物を揺らしながら歩いた。その姿にジョンは顔を顰め銃口を下ろして足を撃ち抜いた。
一発の銃口が響き渡り男の足は骨を砕かれ肉が弾けた。悲鳴と共に倒れ込むその男にジョンを除く全員がなにが起きたか分からず呆然とその姿を見ていた。
マガジンには二十九発で残りは二十八…余裕だな。
機械を思わせるような素早く精密な動きで構えるジョンは照準を合わせると一人一人の胸を撃ちぬいた。
一瞬のことに近い者から撃ち抜くジョンだったが、その時には男たちの硬直は解け各々武器を構えて突撃した。
駆けてくる兵士の一物にジョンは素早く撃ちぬくと態勢を崩すその体に一発撃った。悶え苦しむその兵士放っておき新たに向かってくる兵士の方を向くと同時に迷わず前蹴りを放った。
「うぼっ」
パワードアーマーの強化によって車にぶつかったように派手に吹き飛ぶ兵士の鎧は大きく凹み近くの木へと激突した。その強烈な蹴りに残りの兵士たちが怯むとジョンは動きを止めることなく撃ち続けた。
マガジンの弾が切れるよりも先に全員が地面に倒れるとジョンはマガジンを外した。その直後空の手には新しいマガジンが現れた。
いいね。荷物がかさばらないうえに装填がスムーズだ。
慣れた手つきでマガジンを装填するジョンはスライドを引き構えなおすも無力化された敵に直ぐに構えを解いた。
「次だ。お前はこっちだ」
「!いやだ。放してー」
這って逃げようとする下半身裸の男を掴み地面に放られると捕まった男女の前まで転がった。
「傷の治療をしろ。変なことをするな。後が怖いぞ」
男に釘を刺し離れるジョンはいまだ生きている者たちに近づいた。
「な、なんで。…俺たちが、なにをした?」
腹を撃たれ傷口を押さえる男にジョンはサブマシンガンを向けた。
「分からないならそれでいい」
俺が気に入らない、それだけだ。
二度三度と引き金を引くジョンは息のある者たちに同じように止めを刺していった。
一通り止めを刺して終えて戻ってきたジョンの前で丁度男が矢を抜いていた。抜くと共に血が溢れ出るも男は手をかざすと淡く手が光りゆっくりと傷が癒えていった。
「ん?」
気のせいか?いや確かに光ってる。というか衛生兵だと思ってたがこいつは一体。
「な、なにか?」
「気にするな。急げ」
怯える男は治療に戻るとジョンはその様子を見ていた。
「すいません。勇者さま」
「下手に動くな。なんだ?いや、その前に服をどうにかしろ?」
立ち上がろうとする男に銃口を向けるも半裸であることを思い出しジョンは周囲を見回した。
「服や装備は連中に奪われました。恐らくテントにあるかと」
「分かった。動けるなら一人が荷物を探しに行け。ただし下手な真似をすれば直ぐに全員を敵とみなす。動けないならそのままでいろ」
ジョンの言葉に男はゆっくりと起き上がりふらつきながらテントの一つへ入っていった。
「こ、こんなことして無事でいられると思うなよ。俺たちは英雄王の先兵隊だ。連絡がないと直ぐに他の隊が気付いてお前を直ぐにでも八つ裂きに」
「そうか。それだけか」
「そ、それだけじゃないぞ。明日には本隊がここに来る。剣聖が率いるお前と同じ英雄の大部隊がここを攻める。なにがしたいか知らないが逃げるなら…」
口の軽い奴だ。こいつの言ってることが本当ならこいつらは先遣隊でこれからこの森で大規模な作戦を行うつもりらしい。よく分からんが中々に面倒な状況だ。
「…荷物を持ってきた」
「二人とも身支度をしろ。体を洗いたいだろうが今は我慢しろ」
ジョンの指示に困惑しながらも二人は乱れた服を直した。二人とも軽装ながらも金属鎧を身に着け腰にはレイピアを思わせるような細い剣を装備している。
「助けていただき感謝いたします。私たちは…」
二人は恭しく頭を下げようとするもジョンはいまだ話し続ける男の足を踏んだ。
「あああっ!止めろ、止めてくれー!」
「ならもう黙れ。言っておくが俺はお前たちの味方でもない。礼は言う必要はない」
息を呑む二人は身構えるもジョンは気にせず男の方を見た。
「まだか?」
「あ、へへっ、終わりました。精一杯やらせていただきました」
媚びを売るように笑う男にジョンは気にせず倒れる女を見ると矢で射られたであろう傷は消えて血も止まっていた。
内出血をしてるようには見えない。傷に詳しくはないがこれなら死ぬことはなさそうだ。
「よくやった」
「なら助けてくれ」
その言葉にジョンは頷くともろだしの一物に向けて一発撃った。弾けとんだ肉片は飛んでくるもジョンは体の向きを変えて避けた。
股間を押さえて叫ぶ男にジョンは二人の方を向くと倒れている女の壁になるように立ち、いつでも剣を抜けるように身構えた。
「判断をあやまるな。剣を抜けば敵と判断する」
二人は緊張と恐怖から直ぐには動かなかったがやがては手を下ろした。
「移動する。音で連中の仲間が来る可能性がある」
ジョンの指示に二人は困惑したように顔を見合わせると怪我をしてい女はゆっくりと立ち上がった。
「ユアンさま!大丈夫ですか!」
二人はこいつの従者みたいなものか?ややこしいことになりそうだ。
マスクの裏で顔を顰めながら三人の様子を見ているとユアンと呼ばれた女は二人の手を借りながら立ち上がった。
「助けていただきありがとうございます。移動するのならこの森の奥に砦があります。そこなら安全ですし助けが借りられます」
「どのくらいかかる?」
「道なりに進めばここから一週間ですが近道があります。そこからなら一晩ほどで着きます」
一週間が一晩か。少し胡散臭いがどうせ行く場所もない。
「分かった。案内しろ」
「フライドお願いします」
ユアンと呼ばれた女の指示に敬礼で応える男はコンパスを取り出すとそれを頼りに歩き出しその後に続きジョンたちも続いた。
「移動しながら話そう。俺はジョン・ドゥだ」
「私はユアン・バルド・フィリーと申します。こちらはホリー、先導しているのはフライドと言います」
「分かった。先に言っておく。俺はたまたま通りがかっただけの男だ。お前らもこいつらも誰だかも知らない。こいつらを殺したのはただ気に食わなかっただけだ。だから偽りなく状況を教えろ。もし後から嘘が分かればその時はそれまでだ」
「………分かりました。ですがその前に質問してもいいですか?ジョン・ドゥさまは召喚者の方で間違いありませんね」
「よく分からんが恐らくそうだ」
「では召喚したのは帝国ですか?それとも他国の方ですか?」
ユアンの言葉にフライドとホリーに緊張が走るもジョンは気にせず話を続けた。
「違うだろうな。俺を召喚したとか言ってたいかれた男はそんな風はなかったな。だが関係ない。さっき焼いてきた」
「焼いて…」
ユアンだけでなくフライドとホリーも絶句し足を止めた。
「足を止めるな。休憩は充分距離をとってからだ。追手がいつ来ていてもおかしくない」
とりあえず置き土産を置いといたから、あそこに仲間がくれば音で分かるだろうが急ぐ必要はある。
「すまない。こっちだ」
フライドは歩き出すも直ぐに態勢を崩して地面に倒れた。その姿にユアンとホリーは駆け寄るも二人の顔色は悪かった。
移動して一時間もせずにこれか。あれだけのことがあって森の中を歩いてるから無理もないが…作戦変更だ。
「予定変更ここで一休みだ。状況次第だが朝方までここで休憩だ。喉が渇いた奴、腹を空かした奴はいるか?ああ、それとフライドは服を脱げ」
「え、服?なぜ」
さすがに恐怖と困惑で固まるフライドは身を守るように体を小さく縮めた。その姿に先ほどの光景を思い出し顔を顰めた。
「言い方が悪かった。お前とホリーの傷の具合を見る。ユアンよりも酷くはないだろうが後々致命傷に繋がることもある」
嫌そうに顔を顰めるフライドだったがゆっくりと服を脱ぎだした。
男も襲ってて訳が分からなかったがそういうことか。妙な色気があるな。
妙に艶めかしいフライドにジョンはそう思いながらも直ぐに装備の一つから救急キットを出した。
補充ができない状況で使うのは惜しいがこの場合は仕方ない。
「脱いだ」
その言葉にジョンは裸になったフライドの体を間近で見た。色白の肌はあざだらけで痛々しい歯型の痕までついていた。
…生々しい。あの連中にはあれじゃぬるかったか。
そう思いながらスプレーを出すとそれをあざへと噴射した。
「冷たい!それは?」
「内出血と痛み止めに効く薬だ。我慢しろ」
手早く薬を塗ったジョンはホリーの方を向くとスプレーを投げて渡した。
「使い方は今ので大体分かるだろ。目や粘膜にはつかないようにしろ。切り傷はいいが染みるぞ」
「ありがとうございます」
礼を言うホリーに気にせずナイフを手にするジョンは森の中へと一人歩き出した。
「あのどちらへ?」
「そう遠くもない。戻って食料と水を探してくる。俺を置いて行ってもいいが勧めはしない」
ジョンはそう言って元来た道を駆けていった。全速力ではないものの悪路を通っているとは思えない速さで直ぐにテントへと戻った。
「んっ?」
テントの手前で足を止めたジョンは態勢を低く草陰に紛れて様子を伺うと、中では複数の人の姿があった。
「酷い有様だ。一体ここでなにがあった?」
「というかこいつらなんで裸?まさかとは思うがこいつら全員」
「止めろ嫌な想像させるな。幻の魔法かなにかだろ。いいから周辺を捜索しろ」
こいつらさっきまでの連中とは明らかに違うな。
装備は剣やボウガンと大差ないようにも見えるが、その格好はヨレヨレのスーツを着たサラリーマン風の男、つなぎ服の若い女、セーラー服を着たひげ面の中年などなど個性豊かな面々がいた。
俺は悪夢の世界にでもいるのか?
我が目を疑う光景に何度も瞬きを繰り返すも変わらない彼らの格好にジョンは諦めた。
さっきの連中と同じ格好ならまだ分かりやすかったが、こいつら連中の仲間か?それとも別の連中なのか?
接触するかどうか悩むジョンは様子を見ていると鎧姿の者たちがやってきた。それは最初にいた者たちと違い金属の鎧を着ていた。
「どうなってる?逃げた罪人たちはどこだ?」
リーダーらしき女騎士の問いにサラリーマン風の男は首を横に振った。
「さぁ、私たちが着いた時にはもうこうなってましたよ。本当酷い有様だ」
「ふん、所詮山賊あがりの者どもだ。大方罪人を襲おうとして返り討ちにあったのだろう。そんなことよりも罪人の痕跡を探せ。一刻も早く確保せよ」
周囲の死体など興味を示さず指示するもセーラー服姿の中年の言葉に指示を止めた。
「待つでござる。これはそう単純なことではござらん」
「それはどういうことです先生」
先生?サラリーマンもどきには命令口調でこっちには……頭が痛くなってきた。
「この者たちの傷は銃の痕で間違いないでござる。つまりこの世界の武器ではなく異世界の武器……吾輩らと同じ召喚者で間違いありませぬ。それも吾輩たちより危険でござる」
「召喚者…全員警戒!周囲を警戒し守りを固めろ」
先生と呼ばれた男の言葉を信じ指示を出す女騎士にセーラー服の中年は自身の髭を撫でた。
「なんにしてもこの惨状からは察するに凄腕。吾輩たちでは手に負えないかもしれませぬ」
「分かりました。…他の隊にも増援を送るよう指示します」
「それは悪手でござる。敵は恐らく凄腕の狩人…ここに罠を仕掛けてるやも。隊長殿直ちにここを離れるよう進言するでござる」
……妙な言い回しと格好だが頭は悪くない。そのまま去ってくれればこちらとしてもやりやすい。
「隊長!生存者を発見しました」
学生服の若者が声をあげると全員が注目した。その先には股間が撃たれた下半身裸の男が倒れてた。
引っかかったか。こいつはもう話をするのは無理だな。
学生服姿の若者に続き騎士たちは男に近づくとその光景に声をあげながらも男を起こそうとした。
「待つでござる!それは罠…」
セーラー服の中年は最後まで言い終える前に巨大な爆発によって吹き飛ばされた。
離れた位置にいたジョンも爆風を感じるも被害はなく何事もなく立ち上がった。
ここにいた連中を始末したポイントで手に入れた爆薬だが想像以上の威力だ。
立ち上がったジョンの前には先ほどまで広場だった地面には大穴が開き、テントは吹き飛び先ほどまで立っていた騎士たちが倒れていた。
「水も食料もダメになったか」
ジョンはゆっくりと広場へ歩くとほとんどの者は無事なようだが音と衝撃から意識がもうろうとしていた。悲惨なのは爆発の近くにいた者たちは手足が吹き飛び、間近にいた者や下半身裸の男は跡形もなくなっていた。
「人間相手だとこうなるか」
歩くジョンは呻く者たちの声を気にせずテントのあったところへ歩くと、そこには荷物が散乱していた。
使えそうなものは…こいつは干し肉か。土はついたが食べるぶんには大丈夫か。こいつは革袋…液体が入ってるな。
封を開けて臭いを嗅ぐと中からはブドウと酒の臭いがした。
ワインなんて上等なものじゃないが酒か…悪くない。水が良かったがそう強くはないなら大丈夫か。
汚れた食料とたんまりと中身の入った水筒を手にしてその場から離れようとするジョンは足を止めた。
「……やりやがったなこの野郎」
元気だな。もう立ち上がれるのか。
つなぎを着た女は怒りを露わに睨みあげるその手には特大のパイプレンチが握られていた。
「揉める気はない。だがやり合う気なら容赦はしない」
「先に仲間をやっておいて!よく言うな!」
「ファクタ氏止すのだ!」
セーラー服の中年の制止を効かずつなぎの女はパイプレンチを地面に突き立てた。すると鉱物の塊が先端に引っ付き巨大な鈍器にと変わった。
こいつは驚いた。だがなにがしたかったんだ?
つなぎの女の動きを最後まで見ることなくジョンは構えると共に撃つとつなぎの女は驚きと共に地面は倒れた。残ったパイプレンチは女の手から離れると元のパイプレンチへとなって地面へ倒れた。
「ファクタ!この野郎!」
「奴を包囲しろ!絶対に逃がすな!」
ふらつきながらも他の者たちも立ち上がる中ジョンは気にせず横を通り過ぎ森へと向かっていった。
「待つでござる!」
後ろから響くその声にジョンは振り向くとセーラー服の中年が杖を持って立っていた。
「なんだその格好は?」
「この格好には理由があるでござる。そんなことより吾輩は本堂悟。貴方の名を聞きたい」
「ジョン・ドゥだ。忠告しておく俺を追うな」
サブマシンガンを向けられ両手を挙げるセーラー服の中年にジョンは後悔しながらもゆっくりと森の中へと消えていった。
本堂悟か。名前からして俺と同じ東洋系か東洋人で間違いない。ならナノマシンの翻訳機能に問題ない。
そう考えながら少し離れた場所で端末を取り出したジョンだったが手を止めて元の場所に戻した。
いや、これ以上連中を刺激するのは良くない。なによりポイントで消費してまで設置するのも勿体ない。あの場にいたのは訓練を受けていない者ばかり、追いかけてくる危険は低いはずだ。
そう考えて駆け出すジョンは森の奥へと駆けていった。




