0章ー17
それは突然のことだった。
森や周辺の見張りからは剣聖率いる部隊が進行していることは既に聞いていた。そのために大破した門の守りを固め奇襲に対応できるようにコニーは準備を行っていた。
だがそれは想定外の攻撃によって全ての準備が無駄になった。
砦内からの突然の召喚者たちの襲撃に内部にいた者たちは突然のことに対処できずにいた。
「なにがどうなっている?」
混乱する砦内でコニーは知り合いであった召喚者を槍で串刺しにしながら呟いた。当然のことながら相手は絶命し答えることはなかった。
「隊長!」
近づいてきた騎士にコニーは槍に刺さった死体を捨てると直ぐに指示をあたえた。
「門の警備にあてている騎士たちを召喚者の相手にあてろ。時間を稼ぐだけでいい。相手は俺がする!兵士たちは部隊を再編しケガ人のいる砦内の守りを固めるんだ!」
怒鳴り声で指示するコニーに騎士は従うとその場から離れた。一人になったコニーは暴れている次の召喚者の元へ向かった。
その姿を二人の男が見ていた。一人は後ろに下がるとその姿を消した。反対にもう一人は堂々とした足取りでコニーの元へ歩いて行った。
混乱する砦の中を彼の姿に気付いた者は動きを止めた。それは畏敬の念と圧倒的差からくる強者の威圧からだった。
彼は真っすぐと歩くその姿にコニーは目の前の敵を倒すとゆっくりと振り向いた。二人の距離はまだあったが直ぐに互いを認識した。
「来たか…ロック」
堂々と歩く大剣を背負う剣聖は真っすぐとコニーへと歩いて行った。だがそれを遮るように一人の騎士が前に出た。
「剣聖とお見受けする!我が名はヴェルン家当主デルドラ・ヴェルン!この場で決闘を申し込む!」
その言葉と共に出てきた大盾と長剣を持った騎士が剣聖の前に出た。
「応じよう」
剣聖は背中の大剣を片手で抜くと両手で構えた。それに対しデルトラは大盾を構え守りを固めて距離を詰めていった。
剣聖は人間ほどはある大剣を持っているとは思えない速さで間合いを詰めると、その勢いのままに突きを放った。
大剣の突きを大盾で受け止めるデルトラは態勢を崩すも、それを狙っていたようにカウンターの一撃を放とうと剣を振り上げた。
「あぺっ」
だがその剣が振り下ろされる前に剣聖は目の前から消えデルトラの首は宙に舞った。
なにが起きたか分からないままデルトラは首の刎ねられた自身の姿を見た後に意識は途切れた。
噴水のように首から血を噴き出すデルトラの体が倒れた時には剣聖はコニーの前に立っていた。
「久しぶりだな」
「話す気はない。英雄王の命によりその命を貰い受ける」
構える剣聖にコニーはそれに続き大槍を構えた。
「昔は練習試合を繰り返したがまさか殺しあう日が来るとはな。最初から本気で相手をする」
周囲に風を生み出すコニーは腕を引くと、大槍を中心に竜巻のような風を生みだした。
「風槍!」
大槍の突きから放たれた風の槍は剣聖目がけて飛んでいった。矢を思わせる速さで飛んでいく風の槍に剣聖はその場から動かず大剣で受け止めた。
真正面から一撃を受け止め剣聖は衝撃で僅かに後ろに下がった。だがそこまででコニーの放った風の槍は霧散すると代わりに巨大な青い玉がコニー目がけて飛んでいった。
「!」
向かってくる青い玉にとっさにコニーは横に跳んで躱した。するとその先で戦闘をしていた兵士と召喚者へと青い玉が当たり何人かは青い炎に包まれた。
「変わらず厄介な剣だ。魔法全てを防ぎ魔炎によって返すだったか」
「貴様の力は俺には効かない。諦めろ」
剣を構えて前に出る剣聖にコニーは焦ることなく、背からオレンジ色の翼を生やし空を飛んだ。
「対策をしていないと思ったか」
空に槍を掲げて構えるコニーは態勢を変えて滑空すると剣聖目がけて突撃していった。
「!」
その場から動かず守りに入る剣聖は大槍の一撃に吹き飛んだ。
後ろに吹き飛ぶ剣聖は地面に転がると直ぐに態勢を立て直して立ち上がった。その間にコニーは再び高く舞い上がると今度は地上に向けて落下し大槍を地面に突き刺した。
地面に向けて突き立てられた槍は次の瞬間爆発し、衝撃と爆風によって剣聖は再び後ろに吹っ飛ばされた。
今度は態勢を崩すことはなく後ろに吹っ飛ばされる剣聖にコニーは再び大槍に風を纏った。
「薙ぎ払え!風…なっ?」
技を放とうとするコニーは突然の背中の衝撃に動きは止まった。纏っていた風は掻き消えるとゆっくりと自分の背後を確認した。そこには深々と背中に刺さった人の腕が見えた。
「卑怯と言わないでくださいよ」
そう言うとクラスターは鎧ごと背中を刺した手刀を抜き、固まっているコニーの顔に肘鉄を食らわせた。
鎧を着ているコニーだったがその一撃に体は宙に浮き地面に叩きつけられた。
「なんの真似だ」
地面に叩きつけられ立てずにいるコニーの姿を見ると剣聖はクラスターを睨みつけた。
「私も貴方同様に後がありませんので。ですがこれで反逆者コニー・ボードの片がつきました。残るはお姫さまですがあちらはあの男がいるので無理でしょうね」
クラスターはハンカチで手に付いた血を拭うと二人に背を向けた。
「どこへ行く気だ?」
「砦の中にいる残党はお任せを。目標の二人を始末できませんでしたが、ここの問題を解決すれば英雄王の怒りも静まるでしょうし」
疲れ切った顔で言うクラスターは死にかけたコニーに気にすることなく砦に向かって歩き出した。
残った剣聖はゆっくりとコニーの元へ歩き出し、その前で膝をついた。
「友よ。最後に言い残すことはあるか」
苦しそうに息をするコニーは小さな声でなにかを呟くと、それを最後に息絶えた。
「あの男が戻ってくるか」




