プロローグ ~重ねた罪~
読者への警告
この小説には「兄妹」の禁断愛(性的な描写も)が含まれます。
いつも僕たちは、ふたり一緒だった。
緑の草と、花の香りに包まれる春の季節も…
頭上に昇る大きな太陽がジリジリと肌を焼く夏の日も…
銀杏並木を手を繋ぎ駆け抜けた秋の夕暮れも…
小さな雪の粒がキラキラと舞った、あの寒い夜も…
僕たちは、ずっと一緒だったんだ。
"仲の良い兄妹"って、みんながそう言った。
学校の先生、友達、近所のおばさん達、そして両親も。
だから僕たちは嘘をついた。
最後まで誰にも明かすことはなかった。
それは僕たちの最初で最後の最大の罪。
ザザーッ…
冷たい波が押し寄せては岸壁にぶつかり、そしてまた繰り返す。
それをただただ僕は長い間眺め、ひとり岸壁の上に立ち聞いていた。
どれくらいの時間、こうしていただろうか。
さっきまで暗闇だった足元が少し明るくなったのを感じ、僕は空を見上げた。
雲の間から大きな月が現われ、こちらを見つめている。
「今日は月が綺麗だな…。なぁ、雛…」
誰に話しかけるでもなく、呟く。
その言葉の後から、後から、溢れるように君との思い出がこみ上げ、
涙となって僕の頬をつたい落ちた。
「雛っ。もう…ひとりになんてしない」
ゆっくりゆっくり…けれどしっかりとした足取りで、僕は海岸の先端へと向かう。
『お兄ちゃん知ってる?月ってね、朝も昼も実はこの空にあるんだよ』
『太陽が眩しすぎて見えないだけ。でもね私、死んじゃったら…あの月になりたいなぁ。』
『いいんだ、誰にも気付いて貰えなくても。
たった一人の大切な人が”私がそこにいるんだ”って感じてくれたら、それが一番嬉しい!』
『私、ずっと見てるからね…。だから、お兄ちゃんは…いっぱい生きてね。約束…』
君は、怒るかな…。
約束を守れなかった僕のこと。嘘つきっ!て泣きそうな顔して言うかな。
ううん、それとも…一人で寂しかったって、僕の腕で泣くのかな。
・・・どっちでもいいか。また君に会えるなら。
今度はもっと、ずっと近くにいよう。
二度と離れない――――。
その夜、僕は君のもとに飛び立った。
ゆらゆら…
水面は波で揺らされ、歪んだ月が僕をまだ見つめている。
月の灯りと、波にのまれた身体が深く沈んでいくのを感じながら…
僕はゆっくりと目を閉じた。
はじめまして。
桜ましろですm(_)m
初めての投稿で、若干びびっております(←小心者。笑)
禁断愛がテーマの「真昼の月」ですが、主人公の「瑞樹」は
このお話しではまだ登場していません。
え?ではこの男性は??
それは追々明かされていきます^^
今暫くお待ちください。
※尚、注意書きであった「性的描写」は現段階では含まれておりません。こちらも追々になります。