第16話 神クラスの奴隷商人なので最強獣人奴隷を武闘大会で売り込みます!
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「ねえ、リオ! 今度行われるこの武闘大会に出てみない!?」
「ぶぼおおおおお!」
一緒にご飯を食べていたリオにそう話しかけると、タイミングが悪かったせいで、キヤルのおいしいご飯を一気にかき込んでいたリオが吹き出してしまった。
「リオ、汚いぞ」
そう言ってサジリーが吹き飛んだご飯を全部風魔法で纏めて、リオの器に戻していた。
流石、サジリー。僕のミスをフォローしてくれた。
「ありがとう、サジリー」
「……あ、主殿! そんな簡単に主が奴隷に頭を下げるものではありません!」
「でも、やっぱり感謝の気持ちは伝えたいから」
「あ、う、はい……主殿にそう言って頂けて、サジリーは嬉しゅうございます……」
そう言うとサジリーはエルフ特有の細長い耳をぴくぴくさせながらご飯を食べ始めた。
「んぐんぐんぐ……ぷはあ! はあはあ、え? ご主人様、今なんて?」
人魚のビスチェが水魔法で出してくれた美味しい水を飲みほしたリオが聞き返してくる。
「だからね、今度また武闘大会が開かれるらしいんだ! それで、リオがそこで活躍したら、注目浴びて君が売れるんじゃないかって!」
リオは大きな身体を左右にうろうろ捻りながら銀のたてがみをいじって悩んでいるようだった。
リオは、ギフトで『戦士』を持っていて、しかも、神クラスの【武神】と呼ばれる才能を持っている。だけど、更に、力のある獣人に生まれ、更に、その中でも力のある獅子として生まれてしまった為に、コントロールできない程の力を持って生まれてしまった。
その後、色々あり、ウチに来て、力のコントロールが出来るようになったのだけど、リオはウチの奴隷の中でも一番強い。
だから、武闘大会に出て活躍すれば、買い手も見つかるかと考えたのだ。
まあ、これは去年も考えた事なんだけど。
去年は、リオが風邪を引いたとかで無理になった。
あの時、僕も風邪を引いたと奴隷医師であるスコルに診断されて部屋で絶対安静と言われてしまった。僕はほとんど症状らしい症状がなかったので、いつの間にかリオにうつしてしまったのではないかと落ち込んだ。
けれど、そんな僕にリオは、『き、気にしないで! もう、ボクは元気だから! 大会で優勝したくらい……あ、こ、今度、今度大会があったら優勝出来そうなくらい元気になったから!』と言ってくれた。
その上、お花までくれた。リオ、良い子……!
だから、今度こそ、リオを武闘大会に出してあげたいのだ。
「えーと、えーと、ど、どどどどどうしよっかなー」
リオは、大量の汗を流しながらヴィーナを見る。
奴隷でありながら、僕の秘書的な役割を担ってくれているヴィーナの許可は必須だからだろうな。ヴィーナはその視線に気づいていないのか、考えているのか目を伏せて黙々と食べている。
でも、僕は、やっぱり、
「リオのかっこいい姿見たいなー」
「出る」
リオが間髪入れずにそう言った。被せ気味だったので、もしかして、僕の言葉要らなかったのかもしれない。だけど、嬉しい。
「うん! がんばろうね、リオ!」
「え? あ、うん、あははははー、がんばるぞー。は、はじめてのぶとーたいかいがんばるぞー」
耳がぺたりとして気まずそうな感じのリオが気になったけど、やっぱり勝てるか不安なのかな。
「よーし! リオが不安吹き飛ばせるくらい、いっぱい僕と特訓しよう!」
「わおおおおおん!! やるぞぉおおお!」
僕の勢いにつられてか、リオは思いっきり吠えていた。
そして、テンションが上がった時に、いつも出る大きな尻尾をぶんぶんする『しっぽぶんぶん』が出ていた。
「あのー、ヴィーナお姉様、今更ですけど、リオさんって獅子の獣人じゃないんですか? たてがみ以外ももふもふしてるような……」
「リオは、父親が獅子なので、獅子の血を強く受け継いでいますが、母親は狼なのです。あそこの一族は、強い者同士の子を生むのが普通で、獅子同士とは限らないのです。ところで、イレド様? リオの特訓も構いませんが、他の奴隷達をないがしろにしないでくださいね……?」
アクアの質問に答えながらこっちを見るヴィーナの圧がすごい。
でも、それは大丈夫だ。僕には神スキルがあるし、みんなをさみしくなんかさせたくない!
「大丈夫! ちゃんとみんな見るよ! 勿論、ヴィーナの事もいっぱいいっぱい見るから」
「ん……おほん! な、なら、いいのです! リオ、後の事はまかせなさい。存分に暴れて、イレド様の奴隷が素晴らしいというのを証明してきなさい」
むせたせいか褐色肌に赤みがさしたヴィーナが、リオを励ますと、リオはテーブルクロスが揺れる位しっぽをぶんぶんさせながら元気よく吠えた。
「わおおおおおん! ボク、がんばるよ! ご主人様の為に!」
うん! リオが高く買って貰えたら僕も嬉しいからね!
頑張って売り込もうね! リオ!
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