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八話 契約の果てに

「リオ」

「なんだい王子殿」


 ここはベッドの上で、リオは下、アシュリーは上で押し倒す形になっている。

 リオは魔力が高いので、押し倒されていても屁とも思わないのだが、この体制は微妙に屈辱だな。


「情事が合ったかなかったかなど、侍女が部屋を見れば一発なのだと思う」

「まあ、そうだろうな」

「一晩中、リオの部屋にいて、何もなかったと合っては、王子の沽券に関わる」

「……お前の沽券はマジでどうでもいいとして、今夜は一晩中、男に戻れる方法を考えて見よう」


 リオは難し顔をして考え込む。

 まずは普通に考えて、リオの魔術だ。

 変化の魔術。

 他者を蛙に変えたり、蛇に変えたり、それこそ豚に変えたりという物だ。


 しかしなー。

 変化の術なんて、高等なだけで有用性がないから開発したこともなかった。


 普通に考えて、対象を一瞬で他の動物に変えるなんて考えられない事だ。

 骨を分解して組み替えて、皮膚を伸ばしたり縮めたり。

 そもそも、人間の骨格以外に豚や蛙の骨格に詳しくなければいけない。

 豚を例にとってみても、人間の骨格から豚の骨格に組み替える場合、大分骨という物質があまる。同等の体格の変換でなければ難しいな。もしくはあまった物質は牙や角にするとか?


 考えただけで複雑な術式だ。

 しかも解剖を要する。

 グロくてやってらんないというのが正直な所だ。


 あぁ。

 失敗した時の事を考えると恐ろしい。

 研究だけで五年くらいは使いそうだ。

 しかしあながち可能性はゼロでもないか?


 蛙から人と考えるからいけない訳で、人から人だからな。

 造りが類似していれば類似している程、簡単な変換式になるはずだ。


 豚の雄を雌に替える実験からスタートするのが無難だろうか?

 骨格も筋肉の位置も内臓も一緒だ。

 ただ、男特有の臓器を女に変える訳だな。

 解剖すれば一発だ。


 しかし。

 豚で成功したからって、自分の体で試せるか?

 という話になる。


 魔術で性転換させた豚を少なくとも一年は予後確認をしたいだろ。

 安全一番だからな。


 するとリオは、国政の合間を縫って、動物実験に励む事になるから、術式が完成するのは六年後か……。


 なんだか溜息が出るほど先じゃないか?。

 しかも動物実験な。

 自分が男に戻るという個人的な事情による実験は気が進まない。

 生殺与奪は無しにしたい。

 もっと要領良く行く方法はないのか?


 自分で一から術式を組む必要はないんじゃないか?

 リオが今使っている魔術だって、ほとんどが親から子へ受け継がれたものだ。

 つまり先代の魔導師及び、魔導書を引用すれば良いんじゃないだろうか?


 メジャーじゃないだけで、先祖の誰かが変化の魔術を開発している可能性がある。そうすればその術式で一発だ。動物実験を地道にするよりずっと建設的な方法だろう。


 まずは宰相である父親。

 そして術式研究科。

 王宮図書館一般観覧外の書架。

 そして最後は他国の魔導師。


 そう考えた所で待てよと思う。

 嘗て、オルコット王家で豚に変えられた王がいた筈だ。

 何故、盟約の魔導師は変化の術を使わなかった?


 筆頭魔導師は王国一の魔術使いだ。

 だが、もちろん。神の神力の前では赤子も同然。

 そもそもは出所は同じ所なのだか、神のプラスとマイナスの力のマイナス部分を一部魔導師に貸し出しているだけなのだから。


 神に逆らう馬鹿はいない。

 神が女に変えたのなら、リオは決して自分の魔力では男に戻れない。

 そんな気がしてきた。

 死ぬほど考えた先には、行き止まりがあっただけだ。


 既に真夜中になっていて、アシュリーは俺の腹部に腕を回して、寝息を立てて寝てた。


 しょうがない奴。

 沽券だなんだって言っていたくせに、何事も無く終わりそうだな。

 朝になって侍女ががっかりしていそうだが、まあそれはそれだ。

 他人の意思や希望が自分の行く道を決めるのは不愉快でしかない。


 俺はくすんだ金色の髪をそっと撫でた。

 よくあれから十年も生き延びたものだ。

 リオが色々とフォローはしていたが、理不尽な事だってあっただろうに。


 第九王子と盟約を結んだことを、後悔したことはない。

 こいつは覇気がないだけで、まあまあいい奴だからな。

 リオに指図をしたり、喧嘩を売るなんて事は無い。

 外戚が五月蠅いという事もない。

 いつだって従順で、仲良くやって来たつもりだ。


 まったく。

 女になるなんて想定外も良いところだ。

 

 リオはなんとなく金色の髪を弄りながら、夜明けを迎えた。




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