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氷の庭で咲く花

作者: 枯野 常


 ――――や ら か し た


 ばくばくと緊張で心臓が高鳴るのに、脳みその一番大切な場所は冷えて冴え渡っている、最高の高揚感。

 しんしんと降る雪を想像させる、ピアノとベルの凛とした旋律が流れ始め、ゆっくりと暗転が明けていく。

 眩いほどのスポットライト、当たる熱。期待や好奇に満ちた観客の視線に晒されながら、僕は彼女に語り掛ける――――


「ねえ、君は、君たちは、この世界をどう思う? この静かな、それでも確かに進んでいく死の世界を、これからどうしていきたい?」


 ばっくん。心臓が、別の意味で大きく跳ねた。恐らくそれは、同じ舞台に立つ彼女も同じだろう。一切顔には出さないところは、流石役者だな――――なんて、そんなことを考えている暇なんて一切ない。


 ちょっと待て、僕。これは幕開けの台詞じゃない。

 なんで僕は彼女じゃなくて、客席の方を向いているんだ?


 本来なら、少しだけ客席に顔が見えるように「ㇵ」の字型に向き合っている筈なのに。僕は何故か大きく手を広げ、客席へと語り掛けていた。段取り通り、初期の位置に立っている彼女のことなんて一切見ていない。


 ああ、どうしよう。これは、この台詞は、この客席に座る、見に来た人全てに語り掛ける問い掛けは、一番最後の大トリのものじゃないか――――!

 頭の中が一瞬、真っ白になった。


***


 ――――社会を風刺した、静かな劇をやろう。


 そう僕に提案したのは、相棒である瑠華だった。彼女の眼は新しい挑戦にきらきらと光っていて、まるで新しい遊びを思いついた子供のようで。一緒にいる僕は、その時とても楽しい気分になんてなれるわけがない、と思っていたのに、彼女につられてすごくドキドキしたのだ。だからうっかり、「いいね、そうしよう」なんて頷いて、その提案に乗ってしまった。


 ――――それが、半年前の出来事である。


 当時僕は、所属していた劇団を追い出されたばかりだった。理由は――――正直、どうしてだったのかわからない。ただある日幹部から、「すまないが出て行ってくれ」と言われただけだった。

 後からそこそこ親しかった仲間に聞いた話だと、僕が楽屋で盗みを働いただとか、仲間内でトラブルを起こしただとか、実はドラッグをやっているだとか、メンタルクリニックに通っていて躁うつ病の治療を受けているだとか――――あることないこといろんなことが、誰かの口から湧いて出て。それが真実であれどうであれ、周囲の視線は厳しくなり。気付けばあると思っていた居場所が無くなっていたのだった。


 正直最初は、どうして?という言葉しか浮かばなかった。


 だって幹部は、僕に「こんな噂が流れているが、それは本当か?」なんて聞いてはくれなかった。そう聞かれていたら、嘘は嘘だと笑い飛ばして、事実は事実としてきちんと打ち明け相談しただろう。


 実際、盗みやドラッグは嘘だけど――――もしかして、流行りのカラフルなラムネをぽりぽり食べていたのをMDMAと勘違いされてたのか? だったらその場で聞いてくれよ、単なる駄菓子だ馬鹿野郎――――仲間とトラブルがあったのは本当のことだし、家庭や人間関係、職場でのトラブルで心療内科に通っているのも事実だった。診断は躁うつ病じゃなくて適応障害だけど。ただ、劇団とは関係のないことだから、僕の個人的な問題だから、親しい人間にだけ打ち明けて、薬とカウンセラーさんの力を借りながら、気の持ちようで何とかやってきていただけだった。だというのに。


 どうしてこんなことになったんだろうか。


 幹部から呼び出された喫茶店で、「どうして」と聞ければよかったんだろうか。……いや、そんなこと言い出せる雰囲気じゃなかった。僕の追放は、もう幹部の中では決定事項だと聞かされていたし、途中携帯を開くと僕はもうすでに劇団のLINEグループから追い出されていた。普段はいろんなことを後回しにしているくせに、こんな時ばかり仕事が早いんだな、なんて笑ってしまった。

そうして僕は、幹部の一人が伝票を持って去っていった後で、ソファに凭れながら呆然と数時間を過ごして、閉店だからと店を追い出された。夜風の冷える、寒い晩秋のことだった。


 そうして、ぽっかりと心に隙間が空いたような状態の僕に、ひょんなことで連絡をしてきたのが彼女――――水瀬瑠華、という女性だった。当時別の劇団に所属していて、幹部同士が仲が良く、何度かお互いの芝居を見るうちに意気投合した友人だった。その時の連絡は、僕づたいに彼女の劇団に貸していた小道具を返したい、なんていう当時はよくあった内容で。僕が「退団したから別のやつに渡してくれ」というと、驚いた彼女が電話をかけてきたのだ。


 一体何があったのか、お前この間まで次回の公演に全力投球するって言ってたじゃないか、と捲し立てる彼女に、僕は他人事のように喫茶店での出来事を話した。すると、チェーンの喫茶店が閉まるような、終電かその一本前か、なんて時間だったというのに、ぎりぎり間に合うからと彼女はすっ飛んできてくれたのだった。もう既に風呂もスキンケアも済ませた後だったらしく、ひっつめ髪にあるのかないのかわからないような薄い眉、そして部屋着にちょっとだけ色を足したような、慌てて着込んできたであろう恰好で。あまりの慌てように改札で待っていろ、と言われて忠犬のように従っていた僕が噴き出すと、瑠華は一発だけ軽く僕を殴り、「笑えるなら大丈夫だね」と微笑んだ。


 その時の表情も、思い出も、今も鮮明に思い出せる大切な記憶である。


***


 ――――その後の彼女の行動に、僕は連続して驚かされることになる。


「ねえ、一緒に芝居しよう」


 今日は朝まで語り合おうぜ。ふざけた口調でそう言う彼女に従って、僕らはカラオケに入った。なんとなく何曲か歌って、ドリンクバー独特の薬みたいな味がするアイスティーを飲み干してから、彼女は僕に握手を求めるように手を差し伸べた。


 ずっと君と演じてみたかったんだ。そう続ける彼女に、その時の僕はそれが彼女の所属する劇団への勧誘だと思っていた。まぁそれもいいかもしれないな、幹部越しにNG入るかもしれないけど。なんて軽い考えで、「うん、いいよ」と答えた。


 ただただ当時の僕は、「嗚呼、もう僕は芝居が出来ないんだな」と思い込んで打ちのめされていたのだと思う。……こうして舞台に立つ、今だからこそわかることだけれど。だから、彼女の提案はまるで地獄に垂らされた蜘蛛糸のようなものだったのだ。


 しかし、彼女は直後に突拍子もない行動に出た。深夜だというのに彼女の劇団の幹部に電話をし、さっくりそこを辞めてしまったのだ。流石に電話を聞いている最中に、「ハァ!?」と叫んでしまったのは許されると思う。彼女には静かにしろと怒られたけれど。どうやら彼女は、普段通りの少し不思議な雰囲気のようでいて、怒髪天を衝くくらい怒り狂っていたらしい。「私が辞めたことでそっちの劇団にも苦情がいけばサイコーに面白そうだと思った」なんてヤバい発言を後々聞かされて、一時期僕は罪悪感に苛まれた。


 そうして彼女は電話を切り、「これでおんなじ状態だね」と笑った。そんなわけないだろ、なにしてるんだ――――そう怒ろうと口を開いた僕の唇に人差し指を当てて、彼女はニヤリと笑う。


「どっちの劇団もひっくり返るようなヤバい芝居、二人でやろうぜ」


 ――――それが、いまこうして二人で立っている舞台の始まりだった。


***


「第四の壁を破りたい」


 初めて「二人芝居の話し合い」として二人で食事に言った席で、唐突に彼女はそう語った。


「えっと……四次元ポケットの話? それともRPG?」

「貴様、ホントに役者か?」


 ブレンド二つ、あ、ホットで。注文を取りに来た店員さんにそう注文してすぐ飛び出したその返事に、瑠華は呆れたような顔をしてウィキペディアを見せつけて来る。それを読み込んで、僕はああ、あれって「第四の壁を破る」っていうのか、と感心した。演劇から派生して小説や漫画―、ゲームといった娯楽にも転用されている手法で、確かに僕にとっても思った以上に近しいモノであった。


「樹くんは? 何かやりたいこととか、入れたい要素ある?」


 大通りが見渡せる窓辺の席で頬杖を突き、雑踏を眺めながら彼女が僕にそう問いかけた。

僕もその視線に導かれるように、人間の交差する交差点を眺める。


「そう、だなぁ――――」


 頭に浮かんだのは、彼女とこの芝居を始めるきっかけになった秋の終わり。刺すような冷たさに、流すかもしれないと思った涙さえ引っ込んだ夜のことだった。


「寒い、って感じる雰囲気が良い。今、それが一番表現できそう」

「なんじゃそら」


 ふぅむ……と考え込むように口元に手を当てたまま、彼女は黙り込んでしまう。暫くすると店員がブレンドコーヒーを運んできたので、ありがとうございます、と言いながらそれを受け取った。僕はブラックで。彼女の方には、角砂糖ではなくガムシロップを二つと、ミルクを一つ。角砂糖の柔らかい甘さではなく、ガムシロップの身体に悪そうな甘さが最高に好きなのだ、と以前彼女が語っていた。


 そっとそうして加工したコーヒーを目の前に置くと、彼女は当然のようにそれを手に取り口を付ける。どうやら周囲は見えているようだった。ただ、思考が深い深い所に沈んでいて、周りの環境を気に掛けたり声を出したりすることが出来ないだけなのだろう。役者をしているやつなんて何処か変な奴の方が多いし、彼女のように集中するとトリップするタイプは少なくない。だから別に、動揺することも無く受け入れられた。


 そうして、彼女が此方の世界に戻ってくるころには二人のコーヒーカップは空になっており。手持無沙汰になった僕は、いっそ珈琲のおかわりと、二人分のケーキかパフェでも注文してやろうかと思っていた。多分彼女はあの状態でも食事が出来そうだし、なんとなくその様子を眺めるのも悪くないかな、と思ったから。


「――――決めた。樹くん、社会を風刺した、静かな芝居をしよう」


 そう言って爛々と光る彼女の眼の奥には、どこか街行く「何処かの誰か」への敵意が込められているようにも思えて、ひどく楽しそうな予感を覚えた。


***


 脚本は、大体の道筋を決めてから瑠華が書くことになった。――――曰く、「樹くんの脚本を呼んだことがあるが、漢字が多すぎてルビ振るのが面倒くさそう」とのことで。その分、「一緒にやるんだから好きなだけ口出ししてほしいし、意見を言ってほしい。絶対に理不尽に怒ったり、「やーめた」なんて放り出さないから安心しろ」、と彼女は言った。実際、初めの頃は恐る恐る、徐々に図々しく意見を言うようになると、彼女は納得したところは素直に受け入れたし、どうにも腑に落ちないところは、喧嘩に発展してでも互いが納得する形を見つけるまで話し合うようになった。話し合いは時には一晩かかることもあり、何故か夜明けに熱いアニメソングを歌ってハイになったところで解決した問題もあった。あの時の事は正直思い出したくない。瑠華も「もう樹くんと夜に話し合う時は化粧落としてから来る……」とアイラインがぼけぼけになった目を弄りながらぼやいて帰っていった。


 ――――そうして完成した脚本のタイトルは、「氷の庭で咲く花」。


 僕たちの住むこの世界で進む温暖化と対照的に、雪が降り止まなくなり、氷に覆われる形で変異していく世界を描いた。登場人物は、僕と彼女が演じる少年少女の二人だけ。親を氷に呑まれて亡くした子供たちが、育ての親である少年の祖父から聞いた「氷の上でも咲く花」を探しに出る物語だ。


 始まりは、その祖父の葬儀から始まる。そこで僕が演じる少年が、瑠華の演じる少女に問いかけるのだ。「ねえ、この世界をどうしていきたい?」と。


 それは物語の始まりに於いて、少年少女を取り巻く小さな世界での出来事でしかない。少女は取り残された悲しみと、この先への不安で目を泣きはらしながら、少年にこう答える。「この世界のことなんて、大きすぎてわからない。でも、私は、これから私と、私を取り巻く私の世界を、自分の力で何とか出来るようにしていきたい」と。冒頭の台詞と、それに対しての彼女の回答は、脚本が完成する最後の最後まで決定打が出なかった。


 そもそも社会風刺、と言っても何を風刺するのか、という起点で、彼女は「無関心が一番嫌いだ」と言った。「君のことだってそう。誰もが君に無関心で、悪意や敵意だけが向いたからこうなった」と。「――――例えばもし、誰かがいてくれたら。そう、思わなかった?」という皮肉めいた問いに、僕は何も答えられなかった。……確かに、彼女の言う通りだったからだ。僕の知らないところでコトは起きていて、気付いた時には終わっていた。その間、何かを知っていたはずの誰も彼もが、僕には何も言わなかった。――――もし、何かを言ってくれていたら、何かが違っていたのかもしれない。そんな「IF」の話、したくもないけれど。――――それに。


「キミがいてくれたじゃないか」


 僕には瑠華が居た。終電に飛び乗って、様子を見に来てくれる相棒が。だから今こうして、舞台にもう一度立つことを考えて生きていられる。素直にありがとう、と告げると、彼女からは照れ隠しかまた軽く殴られてしまったけれど。


 だからこそ、少女の台詞は幾度もの話し合いを重ねた結果そうなった。誰もが全てのことに、全ての事象に関心を向けて、心を揺らすことなんてできっこない。そんなことしたら疲れて倒れてジ・エンドだ。だからこそ、せめて自分と、自分を取り巻く環境に無関心になりがちな今の世間に、何かを訴えられる言葉にしよう、と。


 舞台の最期、暗転を経て、僕だけにスポットライトが当たる。そこで僕は、彼女に掛けた問いを、もう一度客席に問うのだ。「――――この世界をどう思う?」と。これが、彼女が希望した「第四の壁を破る」演出だった。そして僕たちの提示する回答は全て、冒頭の少女の台詞に込められている。


 ――――と、そういう計画だったはずなのだが。



「まったくもう、イツキったら感傷的になりすぎだよ……。誰に話しかけてるの? ああもう、また涙が止まらなくなってきちゃった」


 瑠華が、僕のミスを台詞を変えて上手く誤魔化す。ぐすぐすと泣きながら話す演技を続ける彼女に脳内で礼を言い、僕は宥めるようにその肩に手を置いた。――――これが今、僕という役がする動きで一番自然だからだ。表情には出さず、感情も、身体も、思考も殆ど全てを「イツキ」という役に込めて――――脳みその一番奥深くの冷静な部分だけ僕のまま、状況を分析して動く。


 ――――僕のミスは全て、瑠華の機転によってリカバリー出来てしまった。彼女はそのままゆっくりと涙を納め、台詞を予定していたものに戻したのだ。この台詞が無いと、舞台に仕掛けた一番大きな演出が成立しない。なんとか話をもとの流れに取り戻せたことに安堵しながら、僕たちは芝居を続けていった。



 ――――その後は、大きなミスも、台詞の間違いや噛んだり痞えたりすることもなく、舞台は順調に終了し終演を迎えた。物語の最後は、「氷の上でも咲く花」というのが雪の結晶の比喩だったことを知る、という、あまり救いのない結末ではあるのだが――――「どんなところにも、花は在るんだねぇ」という少女の台詞に込めたメッセージが、どんな形であれ、例え言葉にならないぼんやりとしたものであれ、観劇してくれた人々に伝わればいい、と思う。またそう願って、最後に僕はもう一度、冒頭でうっかり言ってしまった最後の台詞を客席に投げかけた。


 舞台がもう一度暗転する。僕と彼女で吟味に吟味を重ねた、無料配布のBGMが流れはじめ、傍らに彼女の気配が近寄って来る。互いに所定の位置に付いたところで舞台が明転し、僕たちは客席に向かって深々と頭を下げた。


***


「いよう、やらかし大魔神」

「……返す言葉もございません」


 すっぱーん、と後頭部を台本で引っぱたかれる。「二人だけで芝居をする」という性質上、上演中に言葉を交わす暇はない。客出しが終わりがらんとした舞台の上で僕が正座をすると、衣装に身を包んだままの彼女が腕を組んで正面に立った。所謂懺悔タイムである。もう何を言われても、この二人芝居もこれが最初で最後だと言われても仕方ないと覚悟を決め、目を瞑ったところで――――薄紅色の少女らしいリップを塗った唇から降りてきたのは、予想外の台詞だった。


「楽しかった?」

「へ」


 ぽかん、と口をあけたまま顔を上げる。僕を見下ろす彼女の表情は、ニヤニヤと悪戯っぽい笑みで満たされていた。


「楽しかったね、お芝居」


 ――――ああ、たしかに、すごく、すごく楽しかった。


 舞台に立つたびに、台詞の一つ一つを口にするたびに、緊張とその場に立つ喜びが混じり合って。楽しいシーンでは、薄ら客席が微笑みを浮かべているのが見えて。逆にシリアスなシーンでは、啜り泣きなんかも聞こえたりして。


 僕が、僕らが作った世界が、声が、動きが、物語が。人の心に響いて、何かを生み出して。


 その空間に立ち、その場を支配する一人であったと言う事が――――どうしようもなく心地よく、そして楽しかった。


「うん、楽しかった――――すごく」

「私も」


 彼女が、立て、とでもいうように手を差し出してきた。その手を取ると、ぶんぶん上下に揺さぶられて――――そうして満足してから、ようやく立つことを許される。


「起きてしまったミスはもう取り戻せないから、何も言わない。一番キツいのはやらかした自分だって、わかってるから」

「ありがとう」


 僕が礼を言うと、彼女は衣装であるもこもこのコートを脱いで適当な客席に置く。僕もそれに倣った。ソワレの会場までの一時間弱が、僕らに残された唯一の休憩時間だ。――――そして、この公演の間に会話を交わす最後の機会でもある。


 狭い劇場とはいえ、客席はいくつもあるのに、わざわざ彼女は僕の隣に座った。そうしてさりげなく、僕の手に自分の手を重ねて来る。


「この二人芝居、続けようね、樹君。――――わたし、君とならあの劇団二つ、ひっくり返せるって信じてるから」


 重なった手を、僕の方から繋ぐ。それは男女間にあるそれではなく――――熱い友情の握手のようなものだった。


「うん、僕も信じてる――――こんな頼もしい相棒が居るんだから」


 二ヒヒ、と笑って彼女もその手を握り返してきた。


 まだソワレが控えているというのに、口から飛び出すのは次はどうしようか、というまだまだ先のことばかり。


 時は夏の真っ盛り。彼の晩秋の、冷え冷えとした冷たさを忘れさせるにはちょうどいい季節のことだった。



読んでくださりありがとうございます。

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