青春漫才「ナツはアツいねぇ」
先輩:ボケ
後輩:ツッコミ
先「後輩くん、うち今もの凄い悩みが一つあんねん。聞いてくれる?」
後「いいですよ? 先輩ほどおっとりした人が悩みを抱えるなんて一大事じゃないですか。後輩としては放っておけないですね」
先「ありがとなぁ、後輩くん。実は、最近気づいたんやけどな……うちって、みんなから舐められてると思うねん」
後「というと?」
先「うちはいつも真面目でいるんやけどなぁ、みんな事ある度にうちがぼうっとしとるとか、気づいたら知らないおっちゃんについて行きそうとか、好き勝手なことばっかり言うんや」
後「……なるほど。つまり、他人から見る自分の評価を変えたいってことですね?」
先「そうそう、そうやねん! 何か舐められなくなる良い方法無いかなぁって思っててなぁ」
後「そうですね……それだったらいい解決方法がありますよ」
先「ほんまにぃ? 良かったぁ。後輩くんに相談して大正解やったわぁ」
後「舐められない方法とは——すばり、『ツッコミ』ですね」
先「ツッコミぃ?」
後「はい。キレのあるツッコミをマスターすれば、自ずと舐められなくなる事は間違いないです」
先「ほぇー、そうなんやぁ」
後「では早速ツッコミの練習をしましょうか。僕がボケるので、それに対して先輩は遠慮なくツッこんできてください」
先「よくわからんけど、ええよぉ。多分うちこういうのは得意やねん」
後「そうですか。それじゃあいきますよ……いやー、先輩、最近の『アツ』は『ナツ』いですねぇ」
先「せやねぇ(にこにこ)」
後「…………」
先「…………(にこにこ)」
先・後「…………(にこにこ)」
後「って先輩! ツッコんできてくださいよ!」
先「っえ、なになに? うちなんかあかんかった?」
後「あかんのは僕の発言だったんです! 僕がボケたんだから先輩は『アツはナツいってそれ逆ぅ! 夏は暑いでしょうがぁ!』ってツッコんでくれないと!」
先「……おぉ、なるほど! 後輩くんあの一瞬でそんな高度なこと考えてたん? 凄いなぁ」
後「もう何十年も前から使い古されてるボケですよ」
先「おっけぃ、理解したわ。今度は大丈夫ぅ」
後「本当ですか?」
先「うちの得意分野やで? ルールさえ理解すればこっちのもんや」
後「じゃあもう一回いきますよ? いやー、先輩、最近『アツ』は『ナツ』いですねぇ」
先「いやいや、後輩くん、ちゃうねん。アツは、えっと、ナツやなくて……そんでな、えっと、ナツは、アツやなくて……」
後「頑張れっ、先輩!」
先「せやから、逆なんよ……」
後「何が逆なんですか、先輩」
先「いやだからな? アツいのがナツやろ? でも後輩くんはアツいナツやーゆうて……実はな? それって逆やねん。……つまり、ナツいのがアツやねん」
後「ぎゃくぅうううう! 先輩逆になってるって! 『つまり』って全然つまってないですから! 暑いのが夏ですよ! 頭ぐちゃぐちゃなってますって!」
先「考えられへん! もううちには難しすぎて考えられへんよぉ!」
後「得意分野じゃないんですか!? ミジンコ並みの返答でしたよ! 考えられへんというか考えすぎ! 考えすぎて脳みそ沸騰してますよ!」
先「ふぇ~、そんなん言うんやったらお手本みせてぇな」
後「わかりました。じゃあ僕がツッコミやるんで、先輩がボケてください」
先「ええよー。じゃあいくで……最近暑いなぁ」
後「そうですね」
先「こんなに暑いとアイス食べたくならへん?」
後「……まぁ、食べたくなりますね」
先「やっぱりそう思う? ここはお姉ちゃんが奢っちゃるから食べに行こうや。あ、でもな? 当たりの棒が出たらちゃんと教えるんやで? うちに」
後「日・常・会・話! ボケ一切無し! こんなんじゃツッコめませんて!」
先「そうかぁ、後輩くんもツッコめ無いほどツッコミって難しいんやなぁ」
後「ツッコミが難しいんじゃなくてボケが無いんです! 大体先輩の存在がボケみたいなもんだから僕の会話今全てツッコミになってるじゃないですか!」
先「ってことは、今後輩くんはうちにツッコんでくれてるってことぉ?」
後「まぁ、そういうことに……なりますかね」
先「じゃあ大成功やなー。良かったぁ」
後「いや、冷静に考えて何も良いこと無いような気が」
先「こうして後輩くんと話してると楽しくてしょうがないわぁ」
後「……それは、ありがとうございます」
先「多分うち、後輩くんのこと大好きなんやと思う」
後「ばっ! せんぱっ、今なんて」
先「どうしたん、めっちゃ顔赤いで? 大丈夫?」
後「いや、これは……その、ナツがアツくてですね……」
先「……せやねぇ(にやにや)」
後「だから先輩ー!」
先「さ、アイス食べに行こうや、後輩くん!」