7.三階へ進む
空間内を飛び回って各部屋を回った。宝箱が置いてある部屋がいくつかあって、俺はアイテムを手に入れた。
白の魔石:HPを回復する。×3
黒の魔石:MPを回復する。×3
青の魔石:STを回復する。×4
紫の魔石:対象を鑑定する。×1
口に入れると消滅するが、使うかどうかはあとで選べるらしい。
ストックとはそういう意味のようだ。何をどれくらい持っているかは自然と分かる。
HPの石を使ったら、全回復して体に空いた穴もすぐにふさがった。
MPの石は自動回復の速度を調べたかったのでまだ使っていない。
鑑定ってのは、目に見える相手を対象とすることで、ステータスを見ることができるみたいだ。数が少なかったから貴重品なのかもしれない。
【――ステータスを部分表示します】
□□□□□□□□□
名前:なし
種族:魔物のコア
HP:22/22
MP:3/5
□□□□□□□□□
MPは体感だが三時間に1づつ回復している感じだ。あと六時間経てば全回復する。石を使うまでもないだろう。
だいたいの部屋を回りきった。そろそろ移動しようと思う。
実は探索中に、さらに上へいくための階段を見つけたのだ。
俺は今その階段をちょうどのぼっている。
上のフロアへ到着した。数字がまた書いてある。『3』だ。
だいぶ様子が変わっている。
白一面だったものが、突然、自然の洞窟みたいなものに変化した。
ごつごつした石壁のところどころに白い照明のようなものが埋め込まれていて、明るさは保たれている。
アミューズメントパークのアトラクションみたいな作り込みだけど、人の手でこれだけの規模の施設なんて作れないだろう。
本当にここはなんなんだ?
洞窟を進んでいくと、どこかからカサカサカサと音がした。
敵か?
俺は翼を使って宙を飛び、尖った岩の上へ移動した。ここならそう簡単に上ってこれないはずだ。
カサカサした音は大きくなっていき、やがて音の正体が姿を現した。
……うえ、気持ち悪っ。
球体が連結してムカデのようになった生き物だ。
かなりのサイズ。色が白いせいで余計におぞましい。
この音は、そいつが地面が這いずっている音のようだ。
やつはまだ俺の存在に気がついていないように見える。
やはり上の階層の方が敵が強いのだろうか? あれも強そうだ。
球体が連結しているが、どれが本体なんだろう。どの球体も見た目は全部同じに見える。
どうする? 倒すか?
……よし、やろう。
ぼわん。
俺は煙を出現させて、やつにゆっくりと近づけていった。
一瞬で決めてやる。どれが本体か分からないなら、全部一気にぶっ壊すまでだ。
最強のパワーを出せる距離になるまでやつが近づくのを待つ……。
気づかれないように気配を消すのだ。
【――スキル『隠密Lv1』を獲得しました】
かさ、かさかさ。
――ここだッ!
動き回るムカデ型球体を煙でがっと掴んで持ち上げた。
と同時にその全身を雑巾みたいにぎゅうっと絞る。
ふしゃあ! と悲鳴のような音をそいつは出し、何か液体のようなものを口からまき散らした。
狙ったわけではないだろうが、その飛沫が俺に飛ぶ。
俺は盾で防御した。しかし。
ジュウウ……。
「ナニ!?」
盾が溶けた。
ま、まずい。
なんだこの液体は?
俺の体にもわずかに付着してしまった。体がジュウジュウと音を立てて溶けはじめているッ!
よく見ると、あいつのまき散らした液体に触れた壁やら天井やらが、全部どろどろになってるぞ!?
や、ヤバい。
ちくしょー! さっさと死ね!
ぐ、ぐぐぐぐ。
思いっきり力を込める。
ばき、ばきばき……ぼんっ!
ムカデが破裂して死んだ。
【――レベルアップしました】
【――レベルアップしました】
【――スキル『毒耐性Lv1』を獲得しました】
【――ステータスを表示します】
□□□□□□□□□
名前:なし
種族:魔物のコア
状態:毒
レベル:12(+2)
SP:60
HP:5/26(+4)
MP:7/9(+4)
攻撃力:10(+2)
防御力:10(+2)
敏捷性:10(+2)
魔法攻撃力:5(+2)
魔法防御力:5(+2)
魔法:
『切り裂く風』、『飛行』
スキル:
『言語理解』、『片手武器Lv3』
『集中Lv1』、『隠密Lv1』
『防御Lv2』、『毒耐性Lv1』
『風属性魔力操作Lv1』、『★煙の支配者』
『☆パーツ作成』
称号:
『異世界からの来訪者』
□□□□□□□□□
…うっ! やばい、死にそうになってる。それに毒ってあるぞ。
【――スキル『毒耐性Lv2』を獲得しました】
えっ!?
このままだとヤバイ気がするぞッ!
な、なんだこれ。どうすりゃいいんだ!?
【――SPを消費して毒を解除できます】
□□□□□□□□□
所持SP:60
・解毒:10
□□□□□□□□□
解毒だ解毒っ! 急げ!
【――ステータスを部分表示します】
□□□□□□□□□
名前:なし
種族:魔物のコア
HP:1/26
□□□□□□□□□
あ、危なかった。HPが1になってしまったぞ。でも毒は解除できたようだ。
……助かった。死ぬかと思った。
あんな一滴だけでこのダメージ。まともに喰らえば一瞬で溶けてたな。
こいつもやはり格上だったみたいだ。レベルが一気に2上がったぞ。
【――称号『耐えるもの』を獲得しました】
【――称号『耐えるもの』の効果により、スキル『根性』を獲得しました】
は? なんだって?
…………。
毎回そうなんだが、もう少し詳細を説明してほしい。これで何が分かるというのか。
もういい。無視だ。それよりも……。
【――魔石:白(HP値回復)を使用しますか?】
これを使おう。こんな状態では恐ろしすぎるからな。
俺の体が一瞬だけ白く輝く。
俺の溶けていた肉体があっという間に元に戻る。
【――ステータスを部分表示します】
□□□□□□□□□
名前:なし
種族:魔物のコア
HP:26/26
□□□□□□□□□
よかった。回復した。だけどせっかく集めた魔石を一つ使ってしまった。
それにしても、俺って弱くないか? 敵のレベルはどれくらいなんだろう? 鑑定の魔石ってやつを使ってみるか?
このスキルがあるから勝てているものの、ステータスに相当な差がある気がするんだけど。
【――SPを消費しステータスを強化できます】
□□□□□□□□□
所持SP:60
HP+1:5
MP+1:10
攻撃力+1:10
防御力+1:10
敏捷性+1:10
魔法攻撃力+1:20
魔法防御力+1:20
□□□□□□□□□
なに? こんなことできたのかよ!?
……ちっ。ちゃんと説明しろって。勝ててるからいいけど。
いまさらちょっと上がったって意味はない。とりあえず保留だ。
よし。
俺は再び煙を出現させた。煙を広げて洞窟内をサーチする。
もわん、もくもくもく。
――お、なんかあるぞ。
俺はいったん煙を解除し、そちらの方へ飛んでいく。
洞窟の中を飛んでいき、途中で細い竪穴の中に入った。
穴の中を上へ上へと進む。
すると少しだけ広くなっている空間に出た。
中央に白い宝箱が置いてある。周りが洞窟なので、いっそう存在感が際立っている。
これは誰が設置したんだろうか。こんな竪穴、普通だったら入らない。この先に宝箱があるのが分かったからわざわざ入ってきたんだ。
「ウン? アカナイ」
力を入れてみたが開かない。
鍵穴がある。鍵が必要なんだろうか?
面倒だな。
ぼわっ。
俺は手のひらの上へ煙を作り、鍵穴へと煙を伸ばした。鍵穴の中を煙で充満させる。
形状が完全に分かる。これなら開けれそうだ。
かちり。
煙を使ったピッキングに成功した。
なんか悪いことをしている気分だ。でも生きるためだ。仕方ない。
宝箱をオープンする。
今まで見た魔石と同じようなものが入っているが、色合いが違う。
赤い石だ。宝石みたいにも見える。
宝箱にメッセージがある。読んでみるか。
魔石:赤。スキル取得をするアイテム。
スキル名:闇属性魔力操作Lv1
とある。
これを口にいれればスキルを習得できるのか? 闇属性……。たしかSPで習得できるスキルの中にはなかったと思う。
とりあえず口に入れてみるか。
ぱく。
【――スキル『闇属性魔力操作Lv1』を獲得しました】
【――スキル『闇属性魔力操作Lv1』の効果により、魔法『忍び寄る闇』を習得しました】
お、なんか覚えたぞ。これは――。
分かる。使い方と効果を俺は元から知っていたように思いだすことができた。
そのうち使う機会が来るだろう。
ここはこれ以上何もないようだ。
他の場所を探索してみよう。上層階に行けば行くほど敵が強く、またアイテムもいいものがあるのかもしれない。