3.スキルチェック
色々と考えたいことは多かったけど、俺はまず通路へ進むことにした。
最初にいた部屋には逃げ場がないからだ。もし倒せない敵が入ってきたら詰んでしまう。
だから通路の先がどうなっているのか、先に知っておきたかった。
通路は最初にいた部屋と同じように天井も壁も全部が白かった。
幅は2mくらいか? 視線が低いので天井が高く感じるけど、実際にはそれほどでもないと思う。
まるで迷路みたいに所々で分岐している。
なんの目印もないので迷ってしまいそうだ。左手はないけど、あると思って左手法で進んでいくことにした。
いったい、ここはなんなんだろう。
俺は火事で死んだはずなのに、球体ボディを持った謎生命体として生き返ったのはなぜだ?
この頭の中に流れる声や文字は一体なんなんだ?
分からないことばかり。
なんでもいいから手がかりがほしい。
このまま進んでいけば、何か見つかるのだろうか。
――それにしても歩きにくいな。
足が短いし右腕しかないからバランスが悪いんだ。カブトムシ型の球体が残したツノを杖のようにしてどうにか歩いてるけど。
左腕を作ったほうがいいのだろうか?
それとも別の何かの方がいいのか……?
こう通路が多いと音が聞こえた方がいいように思う。
通路の曲がり角の先の様子を探ったり、後ろからの接近に気がつきやすくなったり、得るものは多いだろう。
【――SPを消費し『耳』を作成しますか?】
□□□□□□□□□
所持SP:4
・耳(1個):1
□□□□□□□□□
うーん、どうしよう。悩む……。
――む。
通路の向こうから球体が来ているのが見えた。
やはりさっきの二体だけじゃないようだ。
あの球体には自転車の補助輪のような小さなタイヤが左右に二つ、前に一つある。
球体と車輪は軸でつながっていて、三輪車のような見た目だ。
結構速い。
小回りは効かなそうなので広い空間ならかわせると思うが、通路だと厄介だ。
どうしよう。
ツノを使ってカウンターでぶっ叩いてみるか?
だが一撃で倒せなかったら轢かれてしまう。
HPは残り少ない。ダメージは負いたくない。
ならば……。
三輪車型の球体が近づいてくる。
――ここだッ!
俺はツノを右の車輪に向かって投げた。
がんっ!
やつの車体(?)が傾いてバランスを崩した。壁に思いっきりクラッシュして横転する。
やつの丸い体に小さな亀裂が入っている。
きゅるきゅると車輪を回して元の体勢に戻ろうとしている。
俺は冷静に、だが素早くこいつに近づいて、まず落ちたツノを拾った。
とどめをさすためにツノを振り上げ――。
な、なにぃッ!
こ、これは……ッ。
いつの間にか……ッ!
いつの間にかこいつの体に武器が備わっているッ!
見落としたのか? いや、違う。たった今こいつが武器を作ったんだ。俺を殺すために。
やつの球体にあらわれたのは、クロスボウのようなパーツ。
中央に小さな礫が装填されていた。ぎりぎりと弓が引かれ、今にも発射されそうな勢いだ。
この距離、この弓を引く力。
まずい。あれを発射されたらおそらく一撃で葬られる。
だが今さら逃げられないッ!
こいつよりも速く振り下ろし先に撃破するしかないッ!
うおぉぉぉッ!
ひっくり返った三輪車のボディを叩くと同時に、礫が物凄い勢いで俺の横をすり抜けていった。
俺の方が一瞬だけ速かった。だからこいつの攻撃が外れたんだ。
俺は続けざまにそいつを殴り続ける。
何回目かで、そいつはボンと破裂した。
――危なかった。あと一瞬でも遅れたら死んでいた。
だが、勝ったぞ……。
まさかクロスボウの反撃があると思わなかったから、めちゃくちゃビビった。
飛び道具。いい武器だ。
こいつのは……ダメか、壊れてしまったようだ。
【――SPを消費し『クロスボウ』を作成しますか?】
□□□□□□□□□
所持SP:8
・クロスボウ:8
□□□□□□□□□
お、作れるみたいだ。
ん? SPが増えてる。だからか。
レベルアップじゃなくて、SPは敵を倒すと増えるのか?
このままじゃいつ死ぬか分からない。
積極的にSPを増やしていくべきだろう。
クロスボウは魅力的だがパスだ。
武器はある。いったん保留にしよう。
まずは探索を再開する。
そこから通路を進んでいくと、最初にいたのと似たような部屋についた。
この部屋には入ってきた通路とは別に、二本の通路が接続されているみたいだ。
入って左側の通路に進もうとそちらへ歩いて行くと、ちょうどそっちから球体がやってきた。
最初に出会ったのと似た虫型のやつだ。
結構いるんだな。かなりの頻度で敵に遭遇している。
球体虫がこちらに向かってきた。俺はそいつの足をツノでぶっ叩いた。バランスを崩し虫がひっくり返る。
俺はすかさず、がら空きになった球体を連続で攻撃した。
ばきっ! ばきっ! ばきんっ!
ぼんっ!
【――レベルアップしました】
【――ステータスを表示します】
□□□□□□□□□
名前:なし
種族:魔物のコア
レベル:3(+1)
SP:10
HP:7/9(+2)
MP:0/0
攻撃力:2(+1)
防御力:3(+1)
敏捷性:3(+1)
魔法攻撃力:0
魔法防御力:0
スキル:
『言語理解』、『片手武器Lv1』
『集中Lv1』、『★煙の支配者』
『☆パーツ作成』
称号:
『異世界からの来訪者』
□□□□□□□□□
よし、倒したぞ。
ん……? げっ!
また入ってきた。でも、ただの足と触覚しかないやつだ。
これなら落ち着いて対処すれば大丈夫。
俺は同じようにそいつをまず転ばせてから、ボディを攻撃した。
ばきっ! ばきっ!
【――スキル『片手武器Lv2』を獲得しました】
ん、殴っていると声が聞こえた。
スキルか。そういえばこれはなんだろう。
おりゃッ!
ぼん、と体が破裂した。よし、こいつも倒したぞ。
SPの確認と、スキルってやつを見てみるか。
□□□□□□□□□
名前:なし
種族:魔物のコア
SP:12
スキル:
『言語理解』、『片手武器Lv2』
『集中Lv1』、『★煙の支配者』
『☆パーツ作成』
□□□□□□□□□
SPが増えてる。腕を増やすべきか?
んー、それよりも先にスキルを確認するか。
言語理解……。なんだろう。分からないな。パスだ。
片手武器Lv2。殴っている時にレベルアップしたから、文字通り片手の武器のことなんだろうが……レベル2ってのはなんなんだろう?
うーん。ちくしょう。俺はゲームなんて娯楽はできない人生だったんだ。こういうのが得意なやつなら想像がつくのかな。
はぁー悲しくなってきた。次だ次。
集中Lv1。これもよく分からない。パスだ。
で、煙の支配者。これは黒い星印がついている。
煙か。死んだときのことを思いだして少し嫌だな。
なんなんだろう、これ。
【――スキル『煙の支配者』を使用しますか?】
えっ?