2.初戦闘
虫の生えた球体、謎生物が近づいてくる。
ヤバい、ヤバいぞ。
体が動かない。
なぜだ?
あいつを見て思ったけど、俺もあいつと同じなんじゃないか? あいつと同じ球体の謎の生き物。
だから俺は転がったし、自由に動けない。音も聞こえないし声も出ない。手や足の感覚もない……。
…………は? なんだそれ。
と思うけど、今はそれを考えてる場合じゃあない。
どうする? どうすればいい?
俺にもあいつのような足があれば逃げられるが……。
【――SPを消費し『足』を作成しますか?】
□□□□□□□□□
所持SP:8
・足(1本):2
□□□□□□□□□
ま、まただ……っ!
目の時と同じ。今度は足?
これを選べば俺にも足が生えるのか?
く、くそ。分からんがやるしかない……っ!
俺は足を選ぶぜっ!
そう念じると。
ぐん、とわずかに視界が持ち上がった。
足が二本生えて、それで俺の丸い体を持ち上げたんだ。
っておいぃ! めちゃくちゃ短足じゃねえかっ!
まあこれでもいい! とにかく動け!
俺はしゃかしゃかと交互に足を動かして、その場を移動する。
突撃してきた虫型球体は俺のいた場所をガンッと力強く踏みつけた。
間一髪だ。そいつはバランスを失ったのかその場にひっくり返った。
どうも自分で元に戻れないらしい。足をバタバタと動かしている。
ほっ。とりあえず助かった。
このまま逃げようと思った時だ。
あれは――。
別の球体が部屋へ入ってきた。
その球体にも足と触覚があったが、そいつにはカブトムシのようなツノが生えていた。
俺は慌てて距離を取った。だがそいつは俺ではなく、ひっくり返った球体の方へ近づいていく。
なんだ? 何をする気だ?
カブトムシ型の球体はひっくり返った球体に近づくと、そのツノを振り上げ――――叩きつけた。
ばき、と丸い体にひびが入る。
カブトムシがツノを使ってそいつを何度も叩くと、あるタイミングで叩かれていた方の球体がボンと破裂したように飛び散った。破片が部屋へ散らばる。
殺したのか? ちょっと可哀想だ……などと思っていると、カブトムシがツノの切っ先をこちらに向けた。
カブトムシはツノを揺らしながらこちらに近づいてきている。
うぅ……なんだ? 今度は俺を攻撃するつもりか?
攻撃されたらどうなる? 俺もさっきのやつみたいに破裂するのか?
い、イヤだッ!
よく分からないけど俺は生き返ったんだ。こんな所で殺されてたまるか!
カブトムシが近づいてくる。
――落ち着け、考えろ。
通路はこいつが入ってきた場所しかない。
逃げるのは不可能。
ならば。決まってる。
やるしかない。
こいつを倒すしかないんだ。
このカブトムシはツノがでかすぎるせいか動きはそこまで速くない。
落ちつけば大丈夫だ。
俺は後退して距離を取ってから、短い時間で深く考えた。
こいつを倒すには武器が必要だ。あいつのツノよりも長くて強い武器が。
【――『こん棒』を作成するには、SPが足りません】
□□□□□□□□□
所持SP:4
・こん棒:8
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俺が瞬間的に思った武器、こん棒が頭に文字として浮かんだが作れないらしい。SPというやつが足りないとダメなのか。
まずい、また近づかれている。距離を――ってうおっ!
焦った俺はバランスを崩してしまった。
力を入れてなんとか踏みとどまる。
しかし危機はまたすぐにやってきた。もたついているうちにカブトムシに距離を詰められている――。
がんっ!
俺は吹っ飛ばされ、ごろんごろんと転がっていく。
壁に激突する。ばきん、という感触が背中に走った。
ヤバい、死にそうだ。
痛みはないのに、なぜかそれが分かる。
【――ステータスを部分表示します】
□□□□□□□□□
名前:なし
種族:魔物のコア
HP:1/5
□□□□□□□□□
そう、これが0になったら、たぶん俺は破裂して死んでしまうのだと思う。
あと一撃でも喰らえば死ぬ……。
ちくしょう。武器がないと話にならない。
かといって逃げることは難しい。動きが遅いとはいえ、安定度では足が四本あるこいつの方が上だ。転ばずにこいつを振り切れる自信がない。
どうする――考えろ。
ん……。あれは。
そうか、あれを使えばいい!
俺は慎重に足を動かし、見つけたものへ近づく。
そして、
【――SPを消費し『腕』と『手』を作成しますか?】
□□□□□□□□□
所持SP:4
・腕(1本):2
・手(1個):2
□□□□□□□□□
即座に右腕、そしてその先の右手を作成する。チープなロボットみたいな腕と手だが、握って力を入れることはできそうだ。
俺は足元のそれ――さっき破裂して死んだ球体の足の一本だ――を拾った。
手に入れた武器で地面をカツンと叩く。まあまあ固い感触があった。
この足はこいつのツノよりも長い。これならいけるかもしれない。
俺は間合いをはかり、近づいてきたカブトムシを武器で殴った。
インパクトが伝わってくる。ばき、とそいつの球に小さなひびが入った。
即座に離れる。
こいつはまだ動いている。
これくらいじゃあまだまだ倒せそうにない。あと何回繰り返せばいいのか。
こいつに一度でも殴られれば俺は死ぬのだ。
俺にこいつが倒せるだろうか?
正直、ものすごく怖い。
今の俺に心臓があるのか分からないけど、きっとバクバクいってるはずだ。恐怖やら緊張やらで……。
だけど、やらなくては。集中しろ――。
ここが瀬戸際、運命の分かれ道。
俺は再びやつをぶん殴り、空いている空間の方へ逃げる。
命綱なしの綱渡りをするような思いでヒット&アウェイを繰り返す。
そうして七回目の打撃を入れたときだ。
ばきん、とカブトムシ型球体の体に亀裂が走った。
その直後――。
ボンッ!
そいつは破裂して飛び散った。
【――レベルアップしました】
【――スキル『片手武器Lv1』を獲得しました】
【――スキル『集中Lv1』を獲得しました】
【――ステータスを表示します】
□□□□□□□□□
名前:なし
種族:魔物のコア
レベル:2(+1)
SP:4
HP:3/7(+2)
MP:0/0
攻撃力:1
防御力:2(+1)
敏捷性:2(+1)
魔法攻撃力:0
魔法防御力:0
スキル:
『言語理解』、『片手武器Lv1』
『集中Lv1』、『★煙の支配者』
『☆パーツ作成』
称号:
『異世界からの来訪者』
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なんか色々言われた。
言われたが、今は勝利の余韻を味わいたい。
俺は勝った。勝ったぞ! 生き延びたんだ!
やった! やったぞおぉぉ!
叫びたい気分だ。口がないっぽいから無理だけど。
本当によかった。
しかし、敵はこいつら二体だけなんだろうか? 他にいるとしたら、俺はこの先もこの球体と戦わなくちゃならないのかもしれない。
俺は持っていた足をぽいっと投げ捨て、カブトムシが残したツノに持ち替えた。
ぶんぶんと振ってみる。こっちの方がいい感じだ。
この先のことを考えなくては。生き抜くために――。