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魔楼骨董店の奇怪譚  作者: 静 霧一
黎明編
1/29

プロローグ

ペース遅めですが、更新していきます。

評価お待ちしております。

※2020/3/4 書き足し/改行改定

 東京都新宿


 人々の喧騒が休みなく飛び交い、嫉妬と欲望、成功と堕落が入り混じるこの街に、誰も見向きもしない路地裏がある。

 埃と土の香りで、かび臭い匂いがあたりを充満し、入れば咽返りそうな、そんなじめっとした場所だ。

  とある路地裏の一角。陽の光も当たらない、雑居ビルが立ち並ぶ、奥の奥、仄暗く重い空気が漂う場所に、一件、不釣り合いな茶色い真新しい扉がある。

 木製の重厚な面持ちに、左手には真鍮製の金色のノブがついている。

  「魔楼骨董店」

 この扉の先にある場所は、そう呼ばれていた。

 このドアノブを握るものは、いつも不都合を抱えた人間である。

 そして今夜、また一人。扉の前に立ちドアノブを握る者がいた。


 ◆


「オーナー、また加納さんから依頼が届いていますよ。」

 ノーラがノートパソコンを開きながら、椅子に座り、本を読んでいるオーナーに向かって報告する。

「用件は?」

 オーナーは低い声でノーラに問いかける。

「新宿区で多発する孤独死の中に、孤独死とは異なる変死体が混じっている案件がここ最近で増えており、その調査をして欲しい。と書いてありますね!」

 オーナは読んでいた本のページを止め、栞を挿した。

「期間は?」

「一週間以内だそうです!」

 オーナーが机に手に持っていた本を置き、重い腰を上げた。

「ノーラ、準備しろ。出かけるぞ。」

「かしこまりました!」

 ノーラは元気よく答え、コート掛けにかけていたキャメル色のトレンチコートを羽織った。

 よく冷える1月。ノーラはお気に入りの毛糸の手袋をはめて、意気揚々となっている。

 オーナーは、スリーピースの黒いスーツに灰色のワイシャツを着こみ、ワインレッドの赤いネクタイを締めている。

「オーナー、まずはどちらへ?」

 ノーラが目を輝かせている。

()()の警視庁だ。」

 日本という言葉を強調する。いくつもの世界を駆ける彼にとって、場所は非常に重要な単語なのだ。

  オーナーは黒い皮の手袋をはめる。左手首には、いくつもの歯車が入り組み、真ん中の小さなコアが蒼く輝く機械仕掛けの腕時計が、小さな針の進む音を奏でている。

  オーナーと呼ばれる彼の名は「空閑 時織」

  185センチという高身長であり、細身の体型、髪の毛は黒く綺麗に7対3に整えられている。

  スーツ以外の姿を誰も見たことはなく、空閑の寝ているところさえも見たことがない。

  助手を務めるのは、16歳の少女であるピンク色のショートヘアの「ノーラ・クロイツ」

  150センチと小柄で、落ち着きがない少女。

  瞳の色は透き通るような青色をしており、どこが遠く、水の底を見通すようなそんな眼をしている。

  魔楼骨董店の奥の部屋、そこにはアンティーク調の木製家具が並び、幾多にも及ぶ分厚い本が左右の壁を覆っている。

  そして、その部屋の一番奥。そこには横長に伸びる木製の机が一つ置いてあり、机と同じ材質で作られた椅子が備え付けられている。

 空閑以外、座ることの許されない椅子。

 ここは、世界の真実を知るものしか辿り着くことの出来ない場所なのだ。

 彼らはメディエーター(調停者)という名の世界を隔てる次元干渉のバランサーを務めている。

 彼らの取り扱う事件は、奇々難解な事案ばかりである。

 その全てが、科学ではをき明かせず、魔術だけでも解き明かせない。

 干渉された歪みを直すことが彼らの全うすべき仕事なのである。

  空閑はメイビー色のトレンチコートに袖を通し、襟を立てた。

「やっぱりいつ見てもカッコいいですね!」

 上機嫌にノーラが言う。

「ありがとう。」

 ただ一言だけ、ノーラに感謝を伝えた。

「今回の事件、何が集められますかね!」

 ノーラは最早、遠足気分になっている。

「魔術の匂いがする。それもとびきりの黒い魔術のな。」

 彼らは扉へと足を進める。


「それでは、参ろうか。」

 空閑はキイとドアノブを回し、一歩、外へと踏み出した。




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