全てが変わった日⑤
感想ありがとうございます。おかげで落ちかけていたモチベが復活しました!!
端的に結果だけをいうと、元に戻れ、と強く思ったら変身解除はできた。だけどそれに行きつくまでが、それっぽいポーズをとったり、「変身解除」と叫んだりで軽く黒歴史なので省かせてもらう。
ただ変身解除をしても男に戻ることはできなかった。ちゃんと公衆トイレの中で下も確認した。長年付き合ってきた相棒は……いなかった。
身長は10cmくらい縮み、恐らく今は140ちょっとくらいしかないだろう。容姿に関してはさっきカーブミラーで見た姿とほとんど変わりない。違うところはといえば、髪が暗めの茶色に、瞳の色が黒になったぐらいだ。ただこれも男のときと色は同じだ。
そのこともあってか、改めて今の自分の顔を見たときは、どことなく男の自分の面影を残しているように見えた。
それから肌は白磁のように白くなり、より傷跡が目立つようになってしまった。
うん、この話題はやめよう。気分が暗くなるから。それから身長が低くなったせいで、制服の裾を引きずるわ、袖から手が出てこないわで完全にサイズが合わなくなった。そのくせ胸の部分だけは丁度いいと来た。
「はあ、これからどうするかな」
魔法少女としての活動はしようと思う。この力があれば誰かの役に立つことができるし。魔法少女っていっても管理局に属さない非公式の、野良としてだけど。
あのとき逃げちゃったのは、結果的には良かった、かな? あのままじゃリスタルに強引に連れていかれてただろうし。でも今度会ったら、思いっきり突き飛ばしたこと謝らないとだね。
まあ否が応でも会う機会ならこれからいっぱいあるよね。僕もこれからは魔獣退治に参加するんだし。
結論も出たしいったん帰ろうかな。いつまでもこの格好のままってわけにもいかないし。女物の服なんてもちろん持っていないけど、制服よりかはましだろう。
そう思い、カバンを持って立ち上が……。
「あああああ!! カバン置いてきちゃった!!!」
どうしよう、どうしよう。あの中に財布やら鍵やら入れてたのに。これじゃ帰ってもアパートの中に入れない。もちろん学生証やら身分証もその中。
おばあちゃんに事情を説明して……それもダメだ。信じてもらえるわけない。そもそもどうやって僕が衛藤夢莉だって証明すればいいんだ。姿も変わっている、身分証もない。
「ううう、どうしよう」
もう別人として生きるしかないのかな。まあそれもありかな。衛藤夢莉のときはろくなことが無かったし。それなら魔法少女としての新しい自分で生きた方が……。
いやダメだ。それだと僕を助けてくれたあの人との約束も捨てることになる。それだけは絶対にダメ。
はあ、どっちにしろこれからどうしようかな。カバンを取りに戻ろうにも行きも帰りもテキトーに走ったせいで道が分からない。いったん学校に行こうにも、もう校門も閉まっているし、そもそも僕が衛藤夢莉だと証明できない。できたとしても、恐らく魔法少女だとバレて管理局行きだろう。
「ニャー」
うだうだとこれからのことを思い悩んでいると、どこからかともなく猫の声が聞こえてくる。どこからだろうと辺りを見回すが、どこにも見当たらない。気のせいだったのだろうか。
「ニャー」
また聞こえた。でも今回は近い。
ようやく見つけた猫はなんと、僕の隣に座っていた。黒猫だ。
いつの間に近寄ってきたのだろうか。全然気づかなかった。
僕が手を近づけると、警戒することもなく顔をこすりつける。誰かのペットだろうか。人に対してあまり警戒しないし、首にリボンついてるし。
黒猫は不吉ってよく言うけど、こうやってみたらかわいいな。外にいるのに毛がさらさらでいつまでも触っていたいくらい。
猫も猫で、僕にされるがまま。うわぁ、めっちゃかわいい。
そのことで調子に乗り、膝の上にのせて撫でたりした。この猫と遊んでいると、さっきまで悩んでいたことが、なんだかどうでもよくなるな~。……よくはないけど。
僕は時間を忘れ、猫と戯れていた。ただ何が気に入らなかったのか分からないが、突然かまれた。グスン。ちょっと自分本位になりすぎて、猫のことを考えていなかったような気がする。
猫はそのまま僕の膝から飛び降りてどこかに行ってしまった。
もう太陽が真上まで来ていた。
僕はいったい何時間あの猫と遊んでいたのだろう。
さて、猫で時間を無駄にしたが、これからどうしようかな。やっぱりいったん帰った方がいいよね。もしかしたらおばあちゃんなら気づいてくれるかもしれないし。
よし帰ろう、そう決意したときだった。今までの緊張の糸が切れたせいか、まぶたが重くなってきた。
あれ、どうしたんだろ。最近は比較的にちゃんと寝てたはずなのにな。
もう座っていることもつらくなり、ベンチの上に横になる。今や固い木のベンチが高級羽毛のベッドのように感じる。
だんだんと……意識が……夢の世界に。
「ちょ……あな……だい……ぶ?」
誰か話しかけてきた気がするが、もうその時には後戻り不可能な深さまで意識は落ちていた。
どちらかというと魔法少女になった興奮がやっと収まっただけです。
この小説が面白いと感じましたらブクマ登録・感想等お願いします