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消えない傷跡⑧

ちっす2週間ぶりです

 柏木さんの視線をなるべく意識しないように、具体的にはまくらでガードしていた。だけど必ずと言っていいほど柏木さんは回り込んできて、ねっとりとした視線を向けてくる。ただ怖くはあるけど、不快感はそこまでもな――。


「ひゃっ!? どこ触ってるんですか!!」


 前言撤回。かなり不快。いきなり胸元を触られた。


「いや、ただ学者として知的好奇心を満たそうと思っただけだが」

「それでどうして胸を触ってくるんですか?」

「ずっと気になっていたんだ。その胸の奥には魔核が埋まっている。そして君は、まだ仮説の域を出ていないが、魔核の何かしらの効力で女の子になった。それも遺伝子レベルで。そう医学上では何の異常もないが、医学では分からないところにもしかしたら普通の人と違う点があるかもしれない。だから触診で確かめようと――」


 あ、令華さん連絡終わったんだ。あれでもなんでそんな鬼のような形相をしているのだろう。


「それで本音は?」

「目の前にある小ぶりな胸を触りたかあぎゃぁああああああ」


 柏木さんは見事に令華さんのアイアンクローで頭を締め付けられている。って大丈夫なの。なんかミシミシって骨が軋む音が聞こえてくるんだけど。


 それになんで令華さんは怒ってるんだろう。たかが僕なんかの胸を触った程度で。


「あの、そんなに触りたいなら事前に言ってくれたら大丈夫ですよ? 僕なんかの胸程度で良ければ」


 空気が凍りついた。


 あ、令華さんが柏木さんをヘッドロックして本格的に意識を刈りに行き始めた。柏木さんのタップをガン無視決め込んでる。


「あのね夢莉ちゃん。体は女の子なんだからそういうこと言っちゃダメ。とくにこの変質者には絶対に」

「え、でも僕はどうとも思いませんよ」

「自分がどう思うかじゃなくて…………今度はもっと大変なことになるかもしれないわよ」


 令華さんは意識が朦朧とした柏木さんをその辺に投げ捨てて、僕の頬を手で挟みこみ諭すようにそう言った。ハイライトが消えた目で、瞳孔をかっぴらいて。


「いい、わかった?」


 イエス以外の選択肢が息をしていない。だから僕は赤べこのように頷くしかできることがなかった。


 というよりか柏木さんは大丈夫だろうか。なんかさっきから小刻みに痙攣して、口から泡を吹いてるんだけど。


「あらあら、柏木ちゃんったらこんなところで寝るなんて。いくら最近徹夜続きだからってはしたないなぁ。ほら起きなさい」


 そんな僕の視線に気づいてか令華さんが柏木さんを起こし始めた。っていうかさっき令華さんが柏木さんを堕としたよね!?


「は、私は何を?! うぅ、私はなんでこんなところで寝ていたんだ。思い出せない。具体的には目の前の未成熟な果実に手を伸ばそうとした辺りの記憶がない……ん、あと少しで思い出せそうだ」

「あら~、また眠る?」

「あ、記憶なくなった」

「そう、手間が省けてよかったわ。あなた急に眠ったのよ。最近徹夜つづきだったし疲れがたまってるんじゃない?」

「……確かに最近は徹夜続きではあったが……」


 普段優しい人を怒らせたら怖いってこういうことを言うんだ。普段というほど付き合いは深くも長くもないけど。


 あ、そうだ。令華さんに聞きたいことがあったんだ。


「あの、令華さん。おばあちゃんに連絡を入れたいんですけど……」

「え、おばあちゃん? ……あー、和代さんのことだよね?」

「え、あ、いや……」


 そういえば僕おばあちゃんの名前知らないな。ずっとお世話になっていたのに。


「名前知らないです」

「そうなんだ。まああの人、あまり自分の名前を名乗ろうとしない人だからね。えーっと小さなアパートの大家をしているおばあちゃんであってる?」

「はい」

「うん、それなら和代さんだ。でもごめんね。いろいろと機密とかあるから連絡することはできないの。特に今は下手に情報が流出するとどうなるか分からないから」

「そうですか……」


 おばあちゃん心配してるよね。連絡を入れて安心させてあげたかったな。僕がいなくなって(僕が別人としておばあちゃんに会ったせいだけど)とっても心配していたし。


 今思えばどうしてあの時僕はおばあちゃんにまでウソをついたのだろう。おばあちゃんにならバレても悪いようにはならなかっただろうし。ほんと僕ってどうしてこんな何だろう。


「それと、あのアパートにはもう戻れないよ」

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