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消えない傷跡⑦

お久しぶりです

 その後も様々な書類を確認させられて、魔法少女の素性を明かさないという誓約書にサインさせられた。ただまあ、保護者のサインがないからまだ有効ではないし、令華さんたち的にも一応決まりだからって感じだったけど。


「じゃあ確認しておきたいのだけど、夢莉ちゃんの住所って学生証に記載されていたところであっているのかな?」


 確か学生証の住所はおばあちゃんのアパートになっていたはず。そこに今住んでいるのだから、それでいいはず。だからうなずいたのだが、なぜか「本当に?」と念押しをされた。


 いくら考えても今住んでいるのはおばあちゃんのアパートで、学校に入るための書類はおばあちゃんがすべて用意してくれたから間違いはないはず。


 だけど令華さんは困ったような顔をして、


「一応管理局は政府機関だから必要なら個人情報を調べることができるの。で、あなたのことを調べたら、住民票には学生証の住所とは別の住所が記載されてたの」


 え? どういうこと? よく意味が分からない。


「それでその住所を調べたら民間の児童養護施設で、同姓同名の子がそこにいるとこになっているの」

「違う!!」


 思わず声を荒らげてしまった。ただ直後にやってしまったと後悔をした。大人は気持ちよく自分の知っていることを話しているときに、遮ったり否定してしまったら大抵の場合気分を害してしまう。大体の人は子供のことだからとスルーしたり、やさしく窘めたりするだろう。


 でも僕なんかがやってしまうと、飛んでくるのは罵声と顔を覆うほどに大きな手のひらで。


「やっぱりそうよね。だって私が見た住民票には確かに名前は同じだったけど、性別は男の子になってたし。夢莉ちゃんはどこからどう見ても女の子よね。ごめんなさいね、間違えたりしちゃって」


 ……叩かれない?


 令華さんのとぼけたような明るい声に、反射的に閉じた目を開く。いったいどういうことなのだろうか。本当の僕を知っているのに、どうしてそんなに笑って許してくれるの?


「おや、でも女の子の『衛藤夢莉』は戸籍がないようだぞ?」


 そこに柏木さんが茶々を入れてくる。


「まあ本当ね。どうしようかしら」

「無いなら作るしかないんじゃないか? いつまでも無戸籍でいさせるわけにはいかないだろうし」


 どこかわざとらしく、茶番のようなやり取りが目の前で繰り広げられる。それを何気なしに見ていたら、令華さんの顔がこちらの方を向いた。


「それでいいかしら夢莉ちゃん」

「ふぇ……?」


 突然の問いかけにちゃんとやり取りを聞いていなかった僕は答えることができずに、また巻き込まれるとは思っていなかったため、変な声が出てしまった。


「回りくどい言い方しちゃったけど、要するに女の子としての戸籍を作ってもいいかってことを聞きたかったの」


 ……女の子としての戸籍。多分作った方がいいのだろう。今の僕の体は医学的に女であると証明されてしまったわけだし。でもそうすると男としての『衛藤夢莉』はどうなってしまうのだろう。いないことになってしまうのだろうか。でも僕はここにいる。


 戸籍を変えてしまうことで、今までの僕を僕自身が否定してしまうような気がして、たまらず怖くなってしまう。


「ゆっくりでいいよ」

「え?」

「退院するまでもう少し日がかかるから、その間に考えて答えたらいいよ。この病院にいる間なら私たちが守ってあげられるから」


 令華さんの顔には慈愛が溢れており、その雰囲気は、記憶の彼方に飛び去ってもう顔を思い出すことのできないお母さんのようであった。


 だがしかしそんな湿っぽくも温かな雰囲気を壊すように、お腹の虫が鳴き喚く。誰の虫かというと、恥ずかしながら僕のである。


「そうだよね。1週間も眠っていたんだから、そりゃお腹空いているよね」


 お腹の音を聞かれたせいで恥ずかしく、赤面してしまう。それにしても1週間も寝ていたのか……って1週間!? 牛頭と戦ってからそんなに経ってたの。てっきり1日2日くらいだと思ってたのに。そうなるとおばあちゃん心配してるだろうな。連絡とかってできないかな。


 それを聞こうとしたのだが、令華さんは内線でどこかに連絡を入れているようだ。なら柏木さんに……やっぱやめておこう。別にあの人がこちらをギラギラと、下心満載な目で見ていてちょっと怖かったとか、そんなんじゃないから。

すみません、ちょっとメンタルがヤバめなことになっていたので、更新をお休みしていました。これから再開していこうと思っているのですが、これまでのように定期更新はちょっと厳しいです。ですので更新は不定期になってしまいますが、必ず完結させようと思っているので失踪だけはしないつもりです。

お休みしている間にも感想をくださった方やブックマーク登録してくださった方、また以前から『黒腕の魔法少女』の読者の皆様、待たせてしまって申し訳ありません。どうかこれからも応援をよろしくお願いしまう。


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― 新着の感想 ―
[一言] 無理せずゆっくり更新してください~
[良い点] 再会してくれたこと [一言] お久しぶりです! ゆっくりでいいので楽しみにしてます!
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