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消えない傷跡②

 目蓋ごしにうっすらと光が透け、いまだ微睡んでいた僕の意識が覚醒に向かっていく。もう朝なのだろうか。それなら早く起きておばあちゃんのお手伝いをしなくちゃ。


 そう思いまだ少し眠っていたいという気持ちと格闘しつつ、なんとか目蓋を持ち上げていく。だが視界に広がるのは見知らぬ、潔癖なまでに真っ白な天井であった。


「ここ、どこ?」


 僕の胸元からベッドの横にある機械までコードが伸びている。その機械にはモニターが付いており折れ線グラフのような線や何かの数字が表示されている。そのほかにも少し離れている場所に小さめのテレビや棚が置いてある。あ、棚の下に小さめの冷蔵庫もあった。


 なんだかテレビで見た病室みたいだな。そんなことを考えていると扉が開かれ、真っ白なポロシャツとズボンを身にまとった女性が現れた。だけどその女性は僕が起きていることを見るや否や、なぜか慌てたように二三質問をして、それに戸惑いながら答えると部屋から飛び出していった。いったい何だったんだ。まあその女性のおかげでここが本当に病院だったことが分かったんだけどね。


 しばらくすると控えめなノックと共にスーツを着た女性……確かリスタルが監督官とか言ってた、名前はえっと令華さんだったかな……と、和装セーラーとも言うべき服装に刀を腰に帯びた、魔法少女リスタルが病室へと入ってきた。


「久しぶり、でいいのかな。魔法少女シュバルツ……いいえ、衛藤夢莉くん」


 え、なんで僕の名前を? それに「くん」って。僕の記憶が正しかったら、この人はリスタルのことを呼ぶときは「ちゃん」だったはずで、性別に関わらず「くん」付けする人ではなかった。僕のことを呼ぶときも、シュバルツ「ちゃん」だったはずだし。今の僕の体は女の子のはずで、それならなんで令華さんは僕に「くん」付けを?


 もしかして男だってことがバレた?


 全身から血の気が引いていく。だって(元)男だとバレないために管理局に所属しないって決めたはずなのに、管理局の人間に男だとバレてしまった。どうしよう。


 僕がバレたことに慌てていると、令華さんは心底安心したみたいな表情をして、大きくため息を吐いていた。


「その反応的に衛藤夢莉くんで間違いないみたいだね。ああ、本当によかった。これで間違えてたらどうしようかと思ったよ」


 令華さんのその一言で僕自身が確証のなかったことに、確証を与えてしまったことに気付く。だが気付いたところでもうどうしようもない。だってもう僕が衛藤夢莉であることは確定してしまっているのだから。


「あ、安心して。あなたが男であるということは広めたりはしないから」

「え、あ、あの、なんで?」

「なんでって、今のあなたはどこをどう見ても女の子だから」

「そうじゃなくて、なんで僕が衛藤夢莉だってわかったんですか?」

「ああ、そっち」


 そう言うと令華さんはおもむろにスーツの内ポケットに手を突っ込み、一つの手帳のようなものを取り出した。その手帳の一ページ目を開き僕に見えるように広げた。


「この学生証と、それから……リスタルちゃん、変身解除して大丈夫だよ」

「はい、わかりました」


 リスタルの体が光に包まれ、そしてその光が収まった。その場にいたのはいつの日か公園で出会った穂乃香ちゃんであった。


「穂乃果ちゃんが君の名前を知っていたからね。万が一たまたま名前が一緒の可能性もあったから鎌をかけるような感じにはなっちゃったけどね」


 急に令華さんの表情が引き締まり真面目になったと思えば、次の瞬間にはなぜか痛ましいものを見るかのような表情に様変わりしていた。


「あのね、つらいとは思うんだけど……」


 そう言うと令華さんが無造作に近づいてきた。何をされるか分からないため警戒しているが、なぜか 僕が首元までかぶっている布団を無理やり剥ぎ取ってしまった。


「右腕の切断面が……そのつぶれていたから繋げることができなかったの」


 布団の下から出てくるのは、もちろんいつもと変わらない僕の五体満足な体……であったならどれほどよかったことだろう。半ば分かり切っていたことではあるが、それでも認めたくなくて、直接見なければそんな事実はないものとして扱うことができる。だからこそ目が覚めても、穂乃果ちゃんたちが病室に入ってきても頑として布団から出てこなかったのに。


 布団は剥ぎ取られてしまった。布団の下から出てきた僕の体には、あちこちに包帯が巻いてあり、その中でも右肩には特に厳重に巻いてあった。


 それもそのはずであろう。僕の右腕は二の腕の半ばから先がなくなっているのである。認めたくなくて、視界に入れて現実を認識してしまわないように、必死に見ないように、腕を動かさないようにしていたのに。


 だけどどうしてだろうか。もっと動揺するかと思っていたのだが、元からそうであると認識していたかのようにスッとその事実を受け入れてしまった。

ついに内容がプロットを追い越しちゃった! ここからは完全その場のノリだけで書いていくぞ!!


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