表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

28/55

握る拳とその行方⑪

盛大に遅れました。リスタル視点です

 魔獣と戦うのなら管理局所属になった方が万全のバックアップ体制もあるから、野良でやるよりも安全でもしもの可能性も少ないというのに。令華さんは野良の魔法少女たちにも事情があるとは言うけれど、それでもわたしからすると所属しない理由が分からない。


 野良の魔法少女と一度もあったことのないわたしはずっとそう思っていた。でも3日前に出会った野良の魔法少女シュバルツを見てわたしがどれだけ考えなしだったのかを思い知った。


 彼女は無理やり管理局に連れて行こうとしたときに拒絶されたこと以外は、何か事情を抱えているようには見えなかった。初めて出会った時、彼女はキラキラとした憧れの目をわたしに向けていた。そのキラキラ加減は瞳の中に星を幻視したほどだ。それを見て単純に魔法少女に憧れている少女なのかなって思っていた。


 昨日の彼女を見るまでは。


 サソリ型の魔獣と戦っているときやその後に話しているときはいたって普通の、魔獣や魔法少女のことを詳しく知らない新米魔法少女って感じだった。だからついつい先輩風を吹かせて色々と教えてあげた。


 彼女はほんっっっとに何も知らなくて、それこそ後輩ができたみたいだった。令華さんは様子を見るといっていたけど、この感じならちょっと説得したら管理局所属になってくれそうだった。もし所属してくれたらわたしにとって初めての後輩になる。


 こんな気楽なことを考えていた。だけど彼女は令華さんがやってきて一変した。


 さっきまで楽し気にわたしと話をしていたシュバルツは令華さんが現れると、口数が減り表情が抜け落ちていった。だけどわたしはその変化に気付けていなかった。


 今にして思えばなんでこんな簡単な変化に気付けなかったんだろう。令華さんよりも、雀の涙ほどではあるが付き合いの長いわたしが気付けていればあんなことは起こらなかったのに。


 令華さんはシュバルツとコミュニケーションを取ろうといろいろ話しかけていたが口は開けず、野良ネコのように令華さんを警戒していた。それは野良ゆえに管理局の職員である令華さんを警戒している、という認識だった。それは令華さんも同じだったようで警戒を解きほぐそうと話しかけていた。


 でもそれは間違いだった。管理局の職員を警戒するなら、そもそも管理局の魔法少女であるわたしも警戒されるはずで、なんでこんな簡単なことにも気づけなかったんだろう。


 令華さんの目にあの時のシュバルツがどう映ったのか分からないけど、ずっと警戒を解こうとしないシュバルツの頭をなでようと手を伸ばした。だけどシュバルツはそれを最悪な方法で拒絶した。あろうことか令華さんの腕を殴り砕いたのだ。


 魔法少女はいかなる理由があろうとも、特別な許可がない限り一般人に危害を与えてはならない。


 この法律が指す一般人とは魔法少女以外の人である。これは魔法少女が絶対に守らなくちゃいけない法律だ。令華さんは最悪な法律だといっていたけど、魔法少女関連の法律の中でこれだけは絶対に守るようにと常に口を酸っぱくして言っている。


 だけどアイツは法律を破り令華さんに危害を加えた。しかもアイツは何かブツブツとつぶやいていて、わたしがなんでこんなことをしたのか問いただそうと肩をつかんだら、突然わたしを押し倒しどこかへ逃げていった。


 わたしは追いかけて捕まえようとしたけれど、なぜか令華さんは追いかけなくていいという。それに腕の骨を折られたのも自分のせいだというのだ。明らかにアイツが悪いというのに。


 シュバルツはわたしの恩人である令華さんを傷つけ逃げた。あの時の、もしかしたら後輩になるかもと期待していた自分を殴り飛ばしたい。


 魔法少女シュバルツをわたしは絶対に許さない。


「どうしたのホノッチ? なんか怖い顔してるけど」

「……え、あ、うん!?」


 思考の海に沈んでいたわたしは、隣からかけられた声によって海底から引き揚げられた。話しかけてきたのはわたしの高校の友人の北上美樹だ。さらに戻ってきたからか、先ほどまで聞こえていなかった周りの喧騒が耳に入ってくる。


 そういえば今日は高校に来てたんだっけ。最近シュバルツを探すためにサボってたのが令華さんにバレて高校まで強制連行されたんだった。


「んで、どうしたの?」

「ううん、なんでもない。気にしないで」


 彼女とは親友と言えるほどの仲ではあるけど、魔法少女関連のことを話すことはできない。魔法少女の素性は秘密ってことになってるからね。


「それならいいんだけどさー……そういえば昨日のあれ見た?」

「ほら、あれはあれだよ。なんて言ったけな~?」

「もうしっかりしてよ」


 ここ最近頻発していた魔獣も今日は出現しておらず、今日はシュバルツを探しに行くこともできない。シュバルツ探しは、大人の仕事だと令華さん直々に禁止されてしまった。だから今日は普通の女子高生の日常を謳歌できる。


 お金も余裕あるし、放課後は友達とどこかに遊びに行こうかな。カラオケとかショッピングとかここ最近魔法少女の活動が忙しくていけてなかったし。


 だけどそんな思いは無情にも、令華さんの電話によって切り捨てられた。

祝・成人式。新成人の皆様おめでとうございます!

そして私も新成人です祝って笑


この小説が面白いと感じましたら、ブクマ登録・感想等お願いします

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ