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新たなる日常へ⑤

先週はお休みしてしまって申し訳ありません。

 こうして僕とリスタルの、臨時の共同戦線が組まれた。


「あなた……いちいちあなたっていうのも手間ね。魔法少女名はなんていうの?」


 あー、そういえば決めてなかった。どうしよう、本名をそのまま使うわけにもいかないし、うーん……。


「シュバルツ……シュバルツっていうの!」

「分かったわ、シュバルツね」

「それで僕は何をしたらいいの?」

「あの魔獣を殴って」


 リスタルからの指示は単純明快、これなら素人の僕でもちゃんとできそうだ。


「分かった!!」

「えッ!?」


 リスタルの驚いたような声が聞こえた気がしたが気にせず、そのまま魔獣に突っ込んでいく。だが魔獣もバカではない。素直にまっすぐ走ってくる、しかもそこまで足が速いというわけでもない魔法少女など格好の的だ。


 魔獣は大きなハサミを振り上げ、一気に薙ぎ払いに来る。だが魔獣に近づくことに夢中になっていた僕は気づくのに遅れてましった。

 まずいと思った時にはもうハサミは目の前まで来ている。


 だが魔獣のはさみは僕に当たることはなかった。すんでのところでリスタルが割り込み、刀で器用に受け流してくれた。そして無防備になった魔獣の腕の関節に一閃、だがゴムのような反発力で刃が入らず大きく弾かれてしまう。リスタルはその反動を利用して、僕を抱え大きく後退した。


「馬鹿正直にまっすぐ走っていくなんて、死にたいんですか?」


 ついさっきまで話していたリスタルと違う人なのではと思うほど、冷たく突き放すように言い放つ。顔を見なくても分かるほど、声に怒気が含まれている。


「……ごめんなさい」


 実際リスタルが助けてくれなかったら、僕は魔獣のハサミに押しつぶされて死んでいた。だから僕はそれを甘んじて受け入れる。


「はあ、分かったならいいよ」


 だがもうリスタルの声に、受け入れると覚悟した怒気は微塵も含まれていない。まじまじとリスタルの顔をうかがうと、ただ心配そうな表情を浮かべていた。


「わたしが魔獣の気を引くから、シュバルツは隙を見て殴って。分かった? わたしが先に行くからシュバルツは殴れそうと思ったら殴ってね!」


 リスタルは言い聞かせるよう、何度も僕が後から来るように念押しすると、魔獣に斬りかかっていった。


 こうやって落ち着いて魔獣を見ると、実際のサソリと少し違う見た目をしている。甲殻がコンクリートのように固いのは言わずもがな、全体的に刺々しく尖鋭的で、尻尾の針はまるでレイピアのように細く長くなっており、先端には穴が開いている。そしてハサミは何かを掴むためのものというよりか、鈍器のように太く大きく発達している。


 リスタルはそんな魔獣を相手に一歩も引かず、対等に斬り結んでいる。左右のハサミの同時攻撃も、少し体を動かすだけで避け、カウンターを入れている。だがリスタルの斬撃はどれも、魔獣の甲殻の表面をひっかく程度であまりダメージを入れられていないようだ。


 僕も攻撃に参加するため、魔獣に接近する。ちゃんと隙をうかがって、魔獣の正面に突っ込まないよう気を付けて近づく。そして一発魔獣を殴りつける。だがビルから飛び降りたときのように、ヒビを入れることはできなかった。それどころか傷も殴った痕も、魔獣の甲殻にはついていない。


 それでもめげずに殴り続ける。だが結果は変わらない。ならばと助走をつけて、勢いよく殴ってみる。だがやはり傷はつかない。ただ拳が痛いだけである。だがそれでも魔獣を殴り続ける。それがリスタルに頼まれたことだから。


 しかしほとんどの魔獣からの攻撃はリスタルに向いている。それはつまりあまり魔獣にとって、僕の攻撃は歯牙にもかける必要がないということだ。これではリスタルが一人で戦うのと変わりがない。


「それならもっと力いっぱい殴ればいい!」


 拳のスピードと力をさらに上乗せする。だがそのせいで一回殴るたびに、腕からミシリと嫌な音が響き、激痛が走る。だがそれも一瞬のことですぐに痛みは引いていく。だが魔獣の堅牢なる甲殻は、それでも揺るがない。


「拳に魔力を乗せて! それじゃ自分の体を魔獣で傷つけてるだけ!!」


 魔獣と真正面から斬り結ぶリスタルから助言が飛んでくる。確かにさっきから殴るたびに拳が砕けている。だからそうした方がいいのだろう。しかしその助言を実行するのは難しそうだ。


「魔力を乗せるってどうやるの?!」

「魔力を拳に集めて!」

「だからその魔力ってどうやって操作するの?!」


 リスタルは簡単に言ってくれるが、魔法少女になったのは昨日が初めてだし、そもそも魔力がそういったものかも知らない。だから操作しろと言われてもできない。


「……危ない!!!」


 魔獣は僕のことを脅威とは思っていなくとも、羽虫が集ってうざい程度には思っていたらしい。だから唐突に、それこそ羽虫を払うかのように尻尾を一回転させ辺りを薙ぎ払った。


 だが間一髪、またリスタルに庇われた。そのおかげで僕は無傷だ。しかしリスタルは防御が完全には間に合わず、尻尾の針がかすってしまった。

先週の分の補填は来週行います。


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