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新たなる日常へ②

 次の日の朝、外から聞こえる笑い声によって目が覚める。その笑い声の合間からスプレーのような音も聞こえる。

 だがそれもおばあちゃんの声が聞こえたかと思うと、怒声に早変わりした。


 毎朝毎朝よく飽きないものだ。どうしてこうもこだわるのだろうか。


 およそ時間にして5分くらいだろうか。ようやく怒声が止み、さっきまでの騒がしさが嘘のように静まり返る。


 僕は恐る恐るドアを開け、外に出た。やはりというべきか、もう騒いでいた連中はおらず、おばあちゃんが一人アパートの前で仁王立ちしているだけだった。おばあちゃんの後ろ姿しか見えないが、明らかに怒っているのが感じ取れる。


 だがおばあちゃんは僕が出てきたことに気付き振り返ったときには、先ほどまでの怒りはどこに行ったのか、やさしいおばあちゃんに戻っていた。


「女の子がそんなはしたない格好で外に出たらいけないよ。早く着替えておいで」

「……!?」


 言われてようやく自分が今どういう格好なのか思い出した。やけに下半身がスースーすると思ったら、そういえば今、Yシャツしか着てないじゃん!


 僕は羞恥に顔を染めながら部屋の中にいそいそと戻った。


 さて、着替えはどうしようか。おばあちゃんが持ってきてくれた服もあるけど、さすがに女物の服を着るのは、女装をしているみたいで恥ずかしい。でも学ランを着るかと言われると、昨日はあまり気にしていなかったけど、かなりボロボロになってる。


 これはもう着れないな。ってことはおばあちゃんから貰った服を着るしかないかぁ。


 手を付けていなかった紙袋の中身は、Tシャツに短パン、スカート、さらには靴もが入っている。当たり前だがTシャツも短パンもすべて女モノである。

 これで全部出したと思っていたのだが、服で隠されていたかのように紙袋の底に何か残っている。それも取り出すと、1つは肩ひもで吊るすシャツのようなもの、もう一つは……その……ぱ、パン……女の子用の下着だった。


 え、これ着けないといけないの? でもこれしか下着の替えないし。でも見るのも恥ずかしいのに、挙句の果てにこれを着ないといけないの。無理、無理だよ。僕、今は女の子になちゃってるけど、もともとは男だったんだよ。


 うう、でもこれを着ないってすると残されるのは、ノーパンか昨日はいたパンツをまたはくか。どっちも抵抗あるなぁ。ノーパンなんてただの変態だし、昨日のパンツは汗とかいろんなもので汚れてるし。

 でも女の子のパンツをはくかっていわれると……。でもでもきれいなのはこれしかないし。


「あ、そうそう昨日着ていた服、着替えたら持ってきなさい。洗濯してあげるから」


 外にいるおばあちゃんからのありがたい申し出、しかし今はあんまりありがたくない。これじゃもう選択肢がノーパンか女の子用のパンツかしかなくなった。しかしこれは二つに見えるが実際のところ選択できるのは一つしかない。


 意を決し女の子のパンツをはくことに決めた。でもこれは変態になりたくないがための選択である。……あれ? 男なのに女の子のパンツをはくのも変態では?

 そして僕は考えることをやめた。


 おばあちゃんが持ってきてくれたパンツは全体が薄い水色をしており、おしりの部分にクマのキャラクターがプリントされたものだった。


 これはブリーフ、これはブリーフ、これはブリーフ、これは――。


 自己暗示しながら足を通していく。そうでもしないと羞恥心でゆでダコになってしまう。そしてもしここでくじけてしまったら、ノーパンを選択しそうな気もする。


「よ、ようやくはけた」


 パンツをはくだけでかなり体力を持っていかれたような気がする。

 よし、あとはTシャツとズボンを着たら着替えが終わる。もう着てしまえばどうということはない。


 さっさと終わらせてしまおうとYシャツの上のボタンを2つだけ開け、そして大きくなった穴から首を抜くようにして脱いだ。だがこの時の僕はパンツに気を取られすぎて、大切なことを忘れていた。体が女であるということを。


 脱いだYシャツをその辺に放り捨て、服を取ろうと下を向いたとき目に入ってしまった。小さいながらもちゃんと主張する双丘、そしてその頂点に君臨する桜色の突起が。


 な、な、な、これおっぱ……それに……ああああああああああああ。


 そして次の瞬間、極度の羞恥心と女体に対する好奇心、およびその他もろもろにより、僕の頭はショートした。


――――………

――……


 気が付くと僕は布団に寝かされていた。そして傍らには心配そうに僕を見つめるおばあちゃんが。


「大丈夫かい? 怠いとか吐き気がするとかないかい?」

「……?」


 どうしておばあちゃんはこんなに心配をしているのだろうか。それにその質問は病人にするものじゃ。


「あなた裸で倒れてたのよ。おばあちゃんが気づいてたからよかったけど。どこも不調なとこはないんだね?」


 え、裸!? そうだ僕着替えをしていて……。うわー、僕あんな格好で気絶したの!? うう、羞恥心で死にそう。


 あれでも僕今服着てる。なんでだ?


「あ、あの服……」

「ああ、そのままじゃ寒いだろうと思って、適当に着せといたよ」


 なるほど、おばあちゃんが着せてくれたと。

 着せられていた服は、キャラクターもののTシャツとジーパン生地のショートパンツだった。よかったスカートとか履かせられてなくて。


「さて、そろそろ朝ごはんにしようか」

リアルの事情により9月15日ぐらいまで投稿をお休みします。続きを楽しみにされていた読者の方にはほんと申し訳ないです。16日には再開できると思うので、しばしお待ちください。


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