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4、同情するなら金をくれ!

 




「か…金か?」

「そーです。金です。マニーです。」


 先程からのやり取りからすると、この世界の字は読めませんが、言葉は通じてるようです。

 神様の何かの力でしょうか?

 ファンタジー物のお約束な気がします。


「いや…金など無くとも、この城に滞在すれば良い。好きな物も与えるし、美味い食事も出るぞ?さっきは立ち去れなどと酷い事を云ってしまったが、あちらの世界に帰れるまで手厚く保護を…」

「いえ、お金下さい。お金で良いです。むしろ金です。金さえ貰えば全然私の事はもう気にしなくて良いですから!」

「え、ええぇえ〜!?」


 なんか、最初に会った神様みたいな反応してますね。


 そうです!

 この世界でスローライフするにはまず元手は必要!

 土地に家に畑に食料、色々するのに器具だって必要なのです!

 とにかく、金です。金、金、金、金…。


「とりあえず、この世界の村人が一年間暮らすのに必要なだけのお金を下さい!それだけで良いので」

「しかし…城に居た方が楽で…」

「お、か、ね、く、だ、さ、い!!」


 両手を突き出します

 元より向こうの世界で私は死んでいるのですから、帰れなどしないのです。

 死後、向こうがどうなったかは気になりますが…それはまた別の話です。


「……金を用意してやれ」


 王子が諦めたように溜め息を吐きました。

 やがて大きな布袋が持って来られました。

 中を覗くと札束がギッシリです。

 この世界のレートが分かりませんが、一年分以上はあるのではないでしょうか?

 まぁ多過ぎて困る事はありません。


「では、さようなら」

「え!?あ!おい!ちょっと!!」


 布袋を担いで去ろうとする私を王子が止めます。

 何ですかもう…私は目の前のスローライフにウキウキなのです。


「どこへ行く気なんだ!!」

「えー…と、さぁ?」

「さぁ?って!!」

「あ、お気になさらず、これは手切れ金と云う事で…この先一切私も関わりませんし、そちらも関わらなくて良いので!では!もう二度と会う事もありませんが、さようならです!」

「え、ええぇえ〜…」


 唖然として立ち尽くす王子って人と魔術師達を尻目に私はズンズンと出口に歩きました。

 あ、ここは地下だったのですね

 一階?に着くと、高い天井と柱、それに広い通路が見えました。


 歩いて行くと通路に警備の兵士さんらしき人達が居ました。


「ご苦労様です」

「あ、え、…どうも」


 挨拶すると警備の兵士さんらしき人達は戸惑った顔をするものの返事をしました。


 後ろから足音と怒鳴り声がします。

「何で止めないんだ!」って王子とか云う人の声が聞こえます。


 んー…ダッシュです!


「わ!こら!え!速ッッ!」


 身体能力も前の世界のままですが、走りには自信があるのです。

 布袋が少し重いですが、このぐらいは大したハンデではありません。


 走る私に一瞬呆然とする兵士達の隙を縫って、走ります。

 正面入り口の大きな扉を閉じられる寸前に隙間に滑り込みそのまま庭を突っ切り、外壁らしき門も突破し、城下町らしき所に潜り込みました。

 モブ顔ですので、何食わぬ顔をしてれば分からないでしょう。


 しかし…悪い事をした訳では無いのに何となく犯罪者のようです。

 まぁ、ちょっと嘘泣きとかしましたけど、可愛ものでしょう。


 私はウキウキとお金の袋を担いで、スローライフに思いを馳せたのです。



 *******



 お腹が空いたので、食べ物を買います。

 お金のレートを知らないので、把握するには買い物するのが一番です。

 数字の書き方はこっちの世界と変わらないようです。

 400と金額が買いてあるらしき、ボードを見て、お札を一枚出すと「両替しといてくれると助かるんだけどねぇ」と屋台のおばさんが文句を云いつつ、お釣りをくれました。

 お釣りの札の枚数と小銭を見ると、私の出したお札は一万円で、400はそのまま400円に当たるらしく、中々分かりやすくて助かりました。


 買った何かの肉の串焼きを頬張りながら、街のお店を見て行きます。


 畑を耕す鍬とか、蒔く種。

 あと、織物もしたいので織り機とか、裁縫道具。

 あ、家を建てるのに大工道具も必要ですね

 でも、まずは土地ですね


 色々考えていると、街の中で誰かを捜すようにキョロキョロしてる兵を見ました。

 よく見たら、後ろにあの王子が居ます

 私を捜してるのでしょうか?

 《聖女》で無かったのですから、もう用は無いでしょうに…

 私は見つからないよう、コッソリ街の外壁へと向かいました。


 外壁の門は開いていましたが、そこには兵士が4人居ました。

 出入りの馬車や人を調べています。

 王子の手も回ってるでしょうか?

 私はしばし、行き来する人が少なくなるのを待ちました。


 やがて最後の馬車が通り過ぎた時、私は大声で叫びました。


「きゃあぁあああああぁ!!誰か!誰か助けてぇええええええぇええ!!襲われるぅ!!」


 兵士達が全員声のした方へ向かいました。

 チョロいです。


 素早くその場から離れ、兵士に見つからないように回り込んで無人の門を駆け抜けました。


 うーん、警備がザルですね。

 こう云う時は人員は割くべきです。

 向こうの世界での私のボディガード達の方が優秀ですね


 彼等はーーーどうしているでしょうか…


 私を守れなかった責任を取らされて仕事をクビになっているかもしれません

 助ける為とは云え、無謀な事をして結局彼等に迷惑を掛けてしまったかもしれませんーーー



 …しんみりしてしまいましたね


 気を取り直して…


 理想のスローライフに向けて、歩き出しましょう!!





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