2、云い合い
「最初に与えられた役割や人生を私は自ら放棄する事が出来ません。
だから今度は平凡な私に見合った…」
『…つまり、平凡な《村人》になりたい…と?』
神様(自称)『自称では無い!!』の言葉に私は頷きました。
最初から何の役割も無ければ、何もする事は無いのです。
『…何の役割も無い村人になって、作物や織物など作って日々生活するスローライフ?
…それのどこが楽しいんですか…』
神様が唸ります。
てか、心読まないんじゃないんですか
読んでんじゃないですよ。
「楽しいですよ。
日々のんびり暮らすなんて夢のようじゃないですか!」
寝たい時に寝て、働きたい時に働く
夜更かし自由!誰の目も気にせず、好きな事が出来るのです!!
『ちっさい夢ですねぇ…』
「小さくても夢は夢です。だから村人Aにしてください。モブ最高です。モブヒャッハーです。」
『ヒャッハー…って』
神様が何度目か分からない溜め息を吐きました。
『一応云っておきますが、貴女が転生する世界は私の作った世界です』
神様が胸を張ります。
何をドヤっているのでしょうか
『貴女は《聖女》として、その世界に召喚される予定でした』
「……最初から決めてたなら私の希望は必要無いじゃないですか」
『いや、まさか《村人》が良いとか云うと思わないでしょ』
呆れた声を出されて、半目で睨まれます
無駄にイケメンですね神様
『…無駄ってなんですか、無駄って!
まぁ…貴女がそこまで決心が強いなら《村人》に転生させますよ…』
「ありがとうございますーーでも、また心読まないで下さいよ」
『貴女の表情から感情が読みにくいからですよ!はぁ…それでですね《村人》に転生させるにあたり、注意事項があります』
「注意事項?」
神様の云う事には転生と云うよりは、死んだ私の身体を蘇生して別の世界に召喚と云う形になってるようです。
《聖女》とか云ってたそれですね
なので、私に色々な能力や加護を与える気でいたそうですが
「要りません」
『…でしょうねぇ…』
キッパリお断りです。
神様が疲れたように話を続けました。
『ですが、召喚されるのは決定事項です。
あの世界は今混沌としていて、魔物やらがわんさか湧いてますから…
そしてその魔物を産み出す瘴気を払える《聖女》を必要としてるのです』
「…神様自身の世界なら神様が何とか出来るのでは?」
『神に頼っていては何も出来ませんよ。基本、世界の土台だけ作って放置ですから、あとはどう世界が変わるのかは人間次第、乗り越えるのも終わりになるのも人間次第…これは試練です。』
「そんな世界に気に入ってるとか云う私を放り出すと?」
『違いますぅ!貴女を幸せにする為だったんですぅ!!』
「……云い方、子供」
『うるさいですよ!』
ぷりぷり神様が怒ってます
んー話が進みませんね
『誰のせいですか!』
ってまた心読まれましたね
『とにかく!《聖女》を召喚するつもりで何の力もない《村人》が召喚されたらどうなりますか?』
「放り出されますね」
『でしょぉ〜?』
だから、何でドヤってるんですか
しかも嬉しそうに
『だから《聖女》で無かったとしても、何か力を持っていた方が…』
「必要ありません」
だからキッパリお断りなんですってば
「放り出されるのなら本望、そもそも特別待遇など望んでません
願ったのは平々凡々なスローライフ!
生きて死んでいくだけの無意味な生です!」
『…それが望みって…はぁ…もう分かりました!!』
神様が諦めたように右手に持った杖を差し出しました。
それが眩しく光り始めます。
『汝、《九条院 麗》を《村人》として彼の地に転生す!
ーーーー加護とかだけでも、付けましょうか?魔法とか…スキルとか…』
「しつこいです
なーーーーーーんにも!要らないです!
身ひとつで充分ですっっっ!!」
『強情〜』
「どっちが」
『はぁ……まぁ精々スローライフを楽しんで下さい…』
「勿論です」
そうして、私、《九条院 麗》改め、ただの《レイ》は別世界に《村人》として転生(?)する事になったのです。