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12、獣化

 





「欲しいって、ハッキリ云えば良かったじゃないですか」


 私とグエンさん、獣人の兄弟は焚き火を囲んでお昼を取っています。


 先程、グエンさんから兄である少年の涙ぐましい努力を説明されました。

 そんな回りくどい事しなくても一言「くれ」って云ってくだされば…


「云った!もう最後の方は"くれ!"って云ってた!!」


 ガツガツと勢いよく串焼きに(かじ)り付きながら少年がキレ気味に云いました。

 ツバ、唾飛んでますよ。


「独り言云ってるのかと」

「あんなデカい独り言があるかぁ!!」


 ちょ、汚いです。唾、唾。

 はぁ…難しいお年頃ですね


「まぁまぁ、抑えろよボウズ…あー、名前はなんてぇんだ?」

「………」

「二人だけで旅してんのか?親は?」

「………」


 態度悪いですね

 えい!


「あ!オレの肉!!返せ!」

「これは私が捕らえて、グエンさんが捌いた肉です。それを食べているなら、こちらの質問に答える義務があるんじゃないですか?」

「貰ったらもうオレのだ!!」

「……では、この肉は差し上げますが、これ以上は差し上げる事は出来ませ「オレはゲキ!!弟はムク!二人で旅してる!!だから肉!」


 食い気味で返事を被せてきました。

 肉にも食い付いてますね


 弟のムクくんは何が良いのか、私の膝の上にちょこんと座って食べています。


 二人とも、ふさふさ尻尾が揺れてます。


「……獣人の方はもっと獣のような姿をしてるのかと思いました。」

「ん?嬢ちゃんは獣人を見るのは初めてか?」

「はい」


 創作物では見た事ありますけどね


「御本人達を前にして云うのは失礼かもしれませんが、耳と尻尾以外はあまり獣感無いな…と」

「あー獣人はな、獣の姿になれるんだよ」

「獣に?」


 膝の上のムクくんを見ると、目が合って、にこ〜っと微笑まれました。

 そして次の瞬間


 ボン


 そんな音がして、ムクくんが小さな犬?狼?の姿になりました。

 くりんくりんでふわふわの茶色毛並みのわんちゃんです。

 身体を伸ばして私の顔をペロペロと舐めてきました。


「ムク!何勝手に獣化してんだ!!」

『ねぇたんにみせたかったの〜』

「そんな簡単に見せるモンじゃねぇんだよ!」

『なんで〜?』

「なんでもだ!」


 何かムクくんが怒られてしまってます。

 しかし…


「ふわふわしてますね…動物をこうやって触るのは初めてです」

「「え!?」」


 グエンさんとゲキさんが驚いたような声を上げました。


 昔から動物は私の顔を見ると、小さい仔は怯えて逃げて、大きい仔は歯を剥き出して威嚇(いかく)してきて近寄れず、触れないのです。

 器量が良くない顔をしてる自覚はありますが、そんなに動物が嫌う顔をしてるんでしょうか?


「だから、こうして触れるとは思ってませんでした。とても温かくて柔らかで可愛いんですね」

『もっとなでて〜』

「はい」


 ゴロンと寝転がるムクくんのお腹を撫でます。

 尻尾がブンブン動いてます。

 …何でしょう…こう…ほっこりします


「好き…か?その…犬…が」


 ムクくんを撫でていると、ゲキさんが何だか、モジモジそわそわしながら、そんな事を聞いてきました。


「ゲキさんと、ムクくんは犬……犬族?なんですか?」

「あ、うん、そう、犬…族だ」

「犬…どころか、動物をこうやって触るのは初めてですが、好きだと思います。とても可愛い」

『えへへ〜』

「………」


 ムクくんが嬉しそうに笑いますが、ゲキさんの方はモジモジそわそわが更に大きくなって、顔を赤くして、何か云いたそうに口を開けては閉じ、でも何か躊躇っているようにこっちを見たり、逸らしたり……あ、獣人の方を動物、動物と……失礼だったでしょうか?


 ボン


『そ、そんなに好きなら…オレも撫でさせてやってもイイぞ!!』


 ゲキさんも獣化しました。

 さっきは突然過ぎて考えませんでしたが…変身過程すっ飛ばしでいきなりこの姿になれるんですね


 ムクくんとは違う、青みがかった黒くてサラサラの毛並みのゲキさんは、尻尾をはち切れんばかりに振りながら私をキラキラした目で見つめてます。


 ーーー……撫でられたいんでしょうか?


 手を伸ばして撫でようとして……私は止めました。


「……ゲキさん、お風呂いつ入りました?」

『風呂?』

「はい」

『入ってねぇぞ!』

「水浴びとか」

『オレ、水嫌い!いいから早く撫でろよ!』


 ……これは…


「止めておきます」

『なんでだよ!!』

「いえ…その」

『なーでーろーーーッ!!』

「ちょ、やめて…擦り寄らないで下さい…あの……こう云っては何ですが…ゲキさん、(にお)うんです」

『え』

「ズバリ云うと、"(くさ)い"です」

『え』


 獣臭と云うか…あと、よく見るとサラサラの毛並みに見えた()れは脂っぽい感じが


「ムクくんは臭わないんですが…」

『ムク、まいにちみずでバシャバシャしてるよ!』

「ムクくんは綺麗好きなんですね」

『うん!きもちイイの!』


 尻尾をブンブン降って私に抱き着いてきます。

 はぁ…柔らかい、温かい、可愛いです。


『な、なんだよ!そんなにクサくねぇだろ!!』

「いえ、臭いです。無理です。寄らないで下さい。」


 手で制して、頭をブンブン振って全力でお断りします。



『お、お、お、お、お前なんか大っ嫌いだーーーーーーーーーーーーーーーーーーーッッ!!』


 ワォおおおオォンンッ!


 遠吠えのようにゲキさんが叫びました。

 何気に涙目ですね



「………嬢ちゃん…」



 グエンさんの非難めいた視線が痛いですが、知りません。


 ひたすらムクくんを撫でてました。




あくまでこの世界では!です!

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