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異世界での二度目の人生は孤独死を回避したい。  作者: 森山
第三章 亡命組でぶらり旅  検査と修理と短期観光編
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21.検査と修理と短期観光編


 立派な馬車に揺られて二日目。その間は特に大きな事件もなく穏やかな旅路だった。

 

「今日は随分と暖かいですね」

「もう多草月(たぐさづき)だもの。夏が近い証拠ね」

「この服装じゃちょっと暑いな」


 オルディナ領にはドミナシオン領に負けず劣らずの広大な森と山や平原が広がっていた。

 平原に続く緩やかな道を亡命三人組と綺麗なお姉さんが馬車で進み、その周りを女だらけの精鋭部隊八名が陣を組んで進んでいた。

 やはり見目が派手なのだろう、時々通り過ぎる商人や荷馬車の人々が二度見していた。


「そうねぇ、メルカートルで必要な物を揃えるといいわ。商業国って呼ばれるほど沢山の物が集まってる国なのよ」


 目の前にはエッチで美人なお姉さん、フラーウさんが淡い桃色の髪を耳にかけて微笑んだ。うーん、今日もお美しいですね。 微笑まれて赤面した訳ではないがちょっと頬が熱い。


「…少し窓を開けていいですか?」

「ええ、構わないわよ」


 白い外套を脱いでも馬車の中は暑さを感じるぐらいだった。

 がらりと窓を開ければ緑の匂いを感じる風が入り込んでくる。初夏の気配だ。草原の若草色が鮮やかで目にまぶしい。

 不意に馬車の手綱を握る若い男性御者から視線を感じて前を見ると、御者は前方へと向き直った。窓から頭を乗りだしてはしゃいでると思われただろうか。俺はそそくさと頭をひっこめた。


「…自然豊かですね、オルディナ領は」

「ドミナシオン領よりは暖かい気候の土地なのよ、食べ物も作物も余裕はあるわね。馬車を借りてよかったでしょ? ちょっと派手なのは仕方がないと思ってね」

「お、お気遣いありがとうございます…」


 フラーウさんの話だと、疾風馬という時速百キロで走るお高い馬がいる。

 オネットさんとフィエルさんがドミナシオンの帝都から掻っ攫って来たというお馬さんと同じ品種だろう。

 その馬で寝ずに走れば二日ほどでオルディナ王国に着くらしいのだが、それではあまりにもハードで味気ないとフラーウさんが馬車を手配してくれたそうだ。 たしかに大自然をのんびり眺めながらの移動は新鮮で目に優しかった。

 気づけばまた大きな荷馬車とすれ違う。メルカートルからドミナシオンへ向かう商人たちだろう。


「メルカートルまでは後どれぐらいでしたっけ」

「海の香りがしてきたら近くね」


 地平線へ目線を動かせば海がちらちと見え隠れしている。 海といえば新鮮な海鮮物だとうきうきし始めたその時、ひやりとした感覚が走った。


「…ん?」

「サクマ、どうした?」

「…いえ、なんか誰かに見られてる気がして」


 移動を開始してから二日、何度か感じている視線だ。たとえば、立ち寄った村や野営の準備をしている時にも同じ視線を感じた。


「あら?誰かがサクマくんに熱視線を?」

「えっ、サクマに恋!?」

「落ち着いてください、違うとおもいます!?」


 フラーウさんとフィエルさんの声が生き生きし始めた。しかしそういう甘酸っぱい感じではない。どちらかというとマイナス感情が絡んでいる気がする。

 そんな俺の耳元にオネットさんがそっと囁いた。


「…多分、女騎士のうちのひとり、かな」


 馬車の窓を開けた先、三人の女騎士が馬で移動していた。あの黒茶のストレートはキエトさんと、ふわふわな髪の毛の女子と、キエトさんと同じ髪色でおかっぱショートヘアーの女の子。名前はたしか、


「ふわふわな方がテネル隊員と…髪が短い方がミーティ隊員…ですね」


 イロアス隊長率いる女騎士七名の名前は二日でどうにかこうにか覚えた。


 二番隊、くすんだ金髪を結い上げた姿がお美しいレフィナド・ナビル・ペトル。

 三番隊、黒茶の長い髪のキエト・プルポ。結界魔道具を修理した時に監視役としていた人だ。

 四番隊、亜麻色のふわふわ髪とおっとり口調のテネル・タリー。

 五番隊、部隊の中では小柄な女の子、ネーヴェ・ロノス・サルグ。

 六番隊、こげ茶の髪と元気な口調が印象的なアルアクル・カセィール。

 七番隊、褐色の肌に緑黄色の髪、陰キャ属性っぽいセルペンス・ペロデカサ。

 八番隊、黒茶のおかっぱショートでキエトさんの妹。お姉様大好きオーラを隠さないミーティ・プルポ。


 名を呼ばれた事に反応したのか、亜麻色髪のふわふわおっとり系女子のテネル隊員がこちらにスマイルを飛ばしてきた。彼女はアレだ、検査の時に俺の服をありえない速さで脱がしてきた女騎士だ。

 テネル隊員に釣られてキエトさん、ミーティー隊員もこちらに視線を向けてきた。


「……?」


 キエトさんの瞳が揺れた気がしたが、彼女の視線はすぐに俺から外れた。そして、再び別方向からひやりとした視線が俺を掠める。


「あ、わかった。後ろの、黒茶頭の短い方」

「…なるほど…」


 冷たい視線の正体はミーティー隊員の視線のようだった。オネットさんが断言しているのだから確実だろう。だが、


(ミーティー隊員より…キエトさんが気になる、かな)


 何か彼女にやらかしてしまったのだろうか。キエトさんの目はどちらかというと――困惑、そんな色が含まれている気がする。

 ガンを飛ばしているミーティ隊員へ顔を向ければ眉毛をひくりと上げて彼女は明後日の方向へ顔ごと逸らされてしまった。

 ミーティ隊員の視線は気に食わないっていう純粋な敵視のように感じる。


「…おれ、何か失礼なことしたんでしょうか」

「うん?何が?」

「サクマはいつもお行儀がいいわよ?オネみたいに好き嫌いないし」

「フィー、それまだ引っ張る~?」

「うふふ、むしろ大人しいぐらいね、サクマくんは」

「寝る時は丸まって猫みたいだしな」

「あらぁかわいい、おねえさんが添い寝してあげましょうか?」

「あっ、フラーウ技師、それ私の役目!」


 一気に女子会トークになった。

 プエンテからここ数日、フィエルさんは俺と添い寝をしたがるのだ。抱き心地がいいとかあったかいだと主張して一緒に寝ている。オネットさんに助けを求めたがいいんじゃね?っていうノリで相手にしてくれないのだ。

 君、ほんとフィエルさんが楽しそうだからってそっちを優先してるな?

 俺が不満げにしていると横からオネットさんがまた俺の耳元で囁いた。


「お前もそんなに嫌がってないだろ?幸せそうにフィーの胸に寝ぼけて顔うずめてるじゃないか。目がさめる度に真っ赤になったり青くなったりして」

「…気づいてるのならいい加減止めてください」

「お前の反応が面白くてつい」


 オネットさんがそれはそれは楽しそうに緑色の瞳を細めて笑った。おのれ忍びの者め。






「わぁ、賑やかな街ですね…!」

「メルカートルへようこそ~!サックマ~」

「あ、ははっ…どうもぉ?」


 思わず馬車から身を乗りだし面前に広がる光景にテンションが上がってしまった。 近場にいたアルアクル隊員が満面の笑みで両手を広げていたので申し訳手度に笑い返しておく。

 太陽が真上を通り過ぎようとしている午後十三時、俺達は無事にメルカートルへと到着した。


 メルカートル国。オルディナ領にある商業国とも呼ばれているその国は、海と湖、森と山に囲まれた自然の恵みに囲まれた国だった。ドミナシオン領でみたエーベネの街と比べるとかなり大きさが違う。

 街並みや設備の行き届いた石畳の道、行きかう商人や荷馬車の数がとても多い。行きかう人々の頭の色も鮮やかな色合いが時々見かけた。

 何より建物のデザインが洋ベースに中華要素を足したような雰囲気がある。 道行く人の服装や店先にある品の形も見慣れないものが多く、どこかの異文化が混じっているようだった。


「おれ、街中を見て歩きたいんですが…見て回れる時間ってありますか?」

「あ、私も!買いたい物があるの」

「あたしも。補充したいモンがあるな」


 亡命三人組の俺らは完全に観光気分。三人それぞれ見慣れない街にきょろきょろと視線を動かしていた。


「そうね、今日はメルカートルのお城で一日泊まるから…。サクマくんならすぐに見て回れるわね。フィエルちゃんとオネットちゃんの二人は領主様とすぐに会ってもらうことになるから、その後なら街に出てもいい筈よ。ねえ、イロアスくん?」

「ああ、二人には必ず護衛を連れ添ってもらうことになるがな」


 馬車の窓の近場を馬に跨っているイロアス隊長にフラーウさんが尋ねると、彼はいつものぴくりともしない表情で言った。

 どうやら俺は領主様との対談からハブられ決定らしい。


「サクマが対談に参加できないのはなんでだ?」


 オネットさんがさり気なく聞いてくれた。


「大陸外の子供に、北と南の明け透けの無い国家間事情を聞かれるのは憚られる。とのことだ」

「ふぅん…」


 鉄仮面イロアス隊長のそつのない返答に、オネットさんがきな臭げに目を細めている。

 どちらにとってよりいい方へ約束事ができるかどうかの駆け引き第一回戦目だ。 俺のような飛び入り第三者に引っ掻き回されたくはない、そんなところだろうか。


「ドミナシオンのお二人との対談が終わったあと…サクマには夕食の席で領主様とお会いになれるわね」

「うぐ、会う事は決定なんですね…」

「もちろんよ」


 できれば会いたくない。何言われるんだろう、何聞かれるのか。それとも何を話して説明しなければならないのか。

 そもそも異世界テーブルマナーとかどうなってんの。それを考えると気が重くなる。


「そんな顔しないで。フィエルちゃんもオネットさんも、サクマくんも悪いようにはしないから」


 綺麗なお姉さんがにっこりと笑顔で心配するなとおっしゃられると贔屓目もあってすんなり安心してしまう。とは、別として。


「…オネットさん、フィエルさん」

「ん?」

「なあに?」


 フラーウさんと馬車の外にいるイロアス隊長にも聞こえるようなはっきりとした声で、口うるさいおじさんのようにフィエルさんとオネットさんに言い聞かせた。


「無理難題を押し付けられたらちゃんと断るんですよ? 相手が話す内容、言葉の裏側、しっかり聞いてしっかり考えてください。 安易に利用されてはダメですよ」

「おう、勿論」

「そうね、ガッツンと話してくるわ!ありがとう、サクマ」


 何故か両隣から全力でイイコイイコされた。

 子供が真剣顔でアドバイスしている様がおかしかったのか、フラーウさんも甘い笑顔で微笑んでいる。いや、ここシリアスになるべき所っすよ。


 大きな大通りを暫く進むと街の中央にそびえ建つメルカトールの城が見えてきた。黒い屋根に黄色の装飾と橙色の壁が鮮やかでアジア要素を感じる城だった。

 するりと王城の一角に馬車が止まり、俺達を待ち受けていたのは十人の召使っぽい女性達。

 あれよあれよとフィエルさんとオネットさんが連れ去られそうになる。

 メイドさんの話によると、領主と合う前にフィエルさんとオネットさんは強制お風呂タイムで身ぎれいにしなきゃいけないらしい。 大変だなあと、俺は二人を他人事のように眺めて見送った。


「オネットさん、フィエルさんを頼みました」

「ん、かませとけ」

「サクマ!また後でね!」


 イロアス隊長と数人の女騎士達も領主と対談の場に出席するのだろう。彼女達もぞろぞろと城の奥へと進んでいく。そんな彼女らの背を見守っていると、また例の視線がチクリと飛んできた。


(…うーん?あとで面倒なことにならないかな…)

「サクマくん?」

「うわっ!」


 通路を進んでいく集団の背を見送っていると、柔らかい物体が俺の後頭部を包み込んだ。


「サクマくん、これから街に出るんでしょう?わたしと一緒にいかない?」


 エッチで美人なお姉さんのバインバインな豊満な胸だった。わざと当ててんの? それとも俺がチビすぎて顔の位置に胸があるから偶然当たっちゃったの?


「そ、そうですが…フラーウさんは対談に参加しないんですか?」

「わたしも本来の予定ではここにいなかった筈だからね、席にはつけないの」

「は、はあ…ソ、ソウナンデスネ…」


 なんだか爽やかな香りがして居た堪れない。なんだか距離が近い気がして妙に緊張する。


「仲間外れ同士、仲よくデートしましょう?」


 まさかのデートのお誘いだった。


「…いいんですか、王都の技師が一人でふらふら出歩いて…」

「いいのよ、わたしは。それにひとりじゃないでしょう?小さな魔術士くんが側にいるもの」

「…はあ…」


 城から飛び出した俺とフラーウさんは店が立ち並ぶ大通りをのんびりと歩き出した。

 第三者目線だと完全に姉と弟、近所のお姉さんと近所のクソガキである。なんともこっぱずかしい。

 さり気なく何度か手を離そうとするものの、綺麗な指先がするりと俺の手に絡まり離れた距離がゼロになる。

 なんだか彼女の手の動きから性的なものを感じ取ってしまって焦ってしまう。


(童貞を拗らせすぎて全部性的に見えるのは末期症状の一つに過ぎない…堂々とクールに行け、やましい事など何一つとしていない)


 彼女は暇そうな男の子を連れ出してくれた気のいいお姉さんなのだ。不埒な考えをしてしまっては申し訳ない。


「サクマくん、何処見たい?おねえさんメルカートルは何度もきてるから案内できるわよ?」


 そういうなり彼女は屈んで俺の顔を覗き込んでくる。その度にたぷんと大きな胸が目の前で揺れた。

 うーん、やっぱりエッチで綺麗なお姉さん。





「こっちはどうかしら?あ、かわいい」

「…ヒラヒラすぎるのはダメです」

「こんなにかわいいのに?」

「ダメです」

「もう、硬いわねぇ」


 NOと言える心の強い日本人でありたい。


 俺がリクエストした所は服屋だった。浮島から何着か服を持ってきてはいるが、地味ながら質がとても良くて暖かめの生地で作られていた。反して、オルディナ領は気候も暖かく今の服は少し暑い。この機会にオルディナ領に合った服を買おうと思ったのだ。

 だが、フラーウさんに連れられ訪れた店が敷居が高そうなお店だった。俺の話を他所にフラーウさんが見繕って持ってくる服がこれはまたヒラヒラ系お坊っちゃん服だらけ。


「短パンはもっとダメです」

「これもダメなの?」

「ダメです」

「一度着てみても良いんじゃない?」

「嫌です」

「…ケチね」


 断固たる俺のお断りの意思。

 フラーウさんが屈んだ反動で胸がぶるんと揺れる。拗ねても胸を揺らしてもダメです。ガワは十歳でも中身は三十五歳なのだ。布面積が少ない短パンはキッツイ、マジでキッツイ。心に傷が出来てしまう。


「そういう派手で高級な服は求めていません。地味な服装…道を行く旅人のような服がいいです」

「うーん、サクマくんにはこういう華やかな服が似合うと思うんだけど…」

「こんなヒラヒラでお洒落な服を着てどう旅をしろと仰るんですか。 通気性があって丈夫で動きやすい服がいいです」

「要求が高いわね…」


 そこは妥協したらあかんやろ。

 ふと、派手だったりお洒落だったりする服の中で地味目な色合いの物が目に止まった。質は良く、無駄な柄も装飾もついてないフード付きの淡い色の上着だ。丁度いい、これにしよう。

 上が白いならズボンは黒でいいか。お高い店ゆえに触り心地も良いし通気性も良さそうだった。


「上着はこれで…中身はこの無地っぽいのと…ズボンはこれにします」

「ええ~?この服がいいの?あんまりにも地味じゃない?華やかさがないわぁ」

「いいんです。ここって試着してもいいんでしょうか」

「ああ、いいわよね? ほら、試着室はあっちですって」


 後ろで控えていた従業員さんにフラーウさんが目配せすると、流れるような動作で試着室へと案内された。

 選んだ服を抱えて扉を潜ると、そこは広々としてオシャンな鏡や椅子やらが置かれてある一室だった。なんとも贅沢な試着室。こんなん入ったことないわ。


「うわあ…上流階級…」

「あら、これくらい普通よ?」

「普通とは一体…?フラーウさん?」

「なあに?」


 なんで一緒に入ってくるんですかねえ?しかも、その両手に抱えてるヒラヒラ系の服はなんですかねえ。


「こういう服も一着や二着は持っていた方がいいわよ?オルディナに行けば嫌でも王宮にあがることになるし」

「うぐ」


 たしかに。


「それに。今日の夕食も領主様と食事を共にするのならお着替えしなきゃいけないのよ? ある程度、こういう派手な服にもなれなきゃ」

「…ソウデスカ…」


 ダメかー。短パンは嫌だなあ。


「うふふ、裾の長い服にしたから安心して」

「それは嬉しいんですか、えっと、その」

「んー?あ、ほら、サクマくん腕あげて」

「いや、あ、一人で着替えられま」

「ベルト外すから動かないでねえ」

「ま、ちょっ、」


 俺の断固たるお断りを遮るように、フラーウさんの試着室で密着お着替えプレイが始まった。


「ほらぁ、やっぱりサクマくんには上品な服が似合うわぁ」

「………ドウモ」

「ほんとにこっちのダサ…地味な服も買うの?いいのまだあるのに」

「……コレデイイデス」


 鏡に写っている白銀の髪の少年はさも何処かのお貴族然としたスタイルに変貌していた。疲れ切って感情が抜けた顔が更にそれっぽい。

 わーヒラヒラすげぇ似合うー。このフェイスならヒラヒラでも短パンでも半ズボンでも着こなせてしまうだろう。断固として着ないがな!


「このヒラヒラ…脱いでいいですか…」

「あら、もう脱いじゃうの?じゃあ今度はこっちの服着てみない?」

「遠慮し、あ、ま、脱がさないでくださ、うあっ」


 それから数度、フラーウさんに甲斐甲斐しく脱がされ服を着せられる人形と化した。


「うーん、色が地味で落ち着きます」

「もっと可愛い服あったのにぃ」


 お店を出る時には俺が選んだ服へと一新した。

 おニューの服装は中華ベースに洋を足して二で割ったデザインだ。旅の庶民風少年スタイルで地味な色合いで気に入っている。

 フラーウさんが横で不満だと頬に手を当てているが知ったこっちゃない、と言いたいところだが…


「…店を出てしまってから言うのも難ですが。ほんとに全部支払ってもらって良かったんですか?かなり高額でしたよね…」


 フラーウさんに選んでもらった高そうな服がセットで数着、俺が選んだ地味目な服セット数着。合わせて百七十万オーロはぶっ飛んでた。 服に金をかけることはろくにした事がない人種なので驚いた。せいぜいアシスタントの仕事の関係で大阪や東京へ行った時に万が飛んでったぐらいだ。

 そんな俺がお会計カウンターの横で白目を剥きそうになった時、フラーウさんがさらりと銀貨二枚で払ったのだ。


「いいのいいの。おねえさん好みのお着替えに付き合ってもらったお礼よ。楽しませてもらったから」

「はあ……」


 たしかに着替えやらなんやら何度も脱いだり着たり、果ては全身触られたり見られたりとされた。何度か従業員に助けを求めようかと叫びそうになった。

 見目年上のお姉様のご好意だ。あまり謙遜すると気分を害してしまうかもしれない。ここは素直にお礼を言うべきだろう。


「…ありがとうございます、フラーウさん」

「うふふ、どういたしまして」


 フラーウさんは満足そうに妖艶な唇の端を上げて綺麗に微笑んだ。

 年上のお姉さんに甘える感覚ってこんな感じなのだろうか。俺の実際年齢で言えば年下のお姉さんとなるのだが。リアル姉とは犬猿の仲だったからなんとも新鮮だった。







今年最後の更新となります。

次の更新は1月4日20時です。


良いお年を。



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