誓い
秋とのゲーム大会も終わり僕達はゲームセンターを出る。
3時半か
「秋、まだ帰るには早いけどどうする?」
「そーだなー、腹減ったし飯でも食ってこーぜ」
そーいえば学校が終わってから何も食ってねーな
「そーするか」
僕達はゲームセンターから徒歩五分程のところにあるハンバーガー屋に入った。
平日の昼過ぎということで中はあまり混んでおらずすぐに席に着きレジに行く。
僕はチーズバーガーとポテトとコーラ、秋はベーコンレタスバーガーとポテトとお茶を注文して席に戻る。
「なぁ佳って叶さんのことどう思ってんの?」
「どうって?」
「好きとか」
「ぶはっ!!!」
「何してんだよ」
笑い事じゃねーての
「その反応は図星か!?」
「……悪いか」
「いやーやっぱそーなんだなー」
「なに?やっぱって?」
「だってお前ら中学の頃から登下校とかいつも一緒だったじゃん?」
「それは、幼なじみだから……」
「それを理由にするの結構厳しいと思うぞ? 実際感ずいてるやつは結構いたし噂もされてたぞ」
「……まじ?」
「って知らなかったのかよ」
そんなの知るわけないだろ、言われたことないし……
「まぁ、知らなくても仕方ないか、見たらわかるレベルだったし聞くやつも少なかっただろうから」
「そんなにわかりやすかったかな?」
「まぁな」
まじか……今度から気をつけよ
そんな小さな決意ともに僕達は店をあとにした。
「そろそろ帰るか」
「そだな」
時間は4時半の少し手前でまだ帰るには少し早いが僕達の家は学校挟んで30分ほど歩くと着く住宅地と少し距離があるためちょっと早めに帰るくらいがちょうどいい。
僕達は他愛のない話をしながら歩き出す。
「そういえば今日叶さんと一緒じゃなくてよかったのか?」
またその話か……
「別に僕達はいつも一緒ってわけじゃないからな」
「そーなのか?」
「あぁ」
「でもお前、そんなこと言ってると先に誰かに取られちまうぞ。 叶さん人気だから」
「……分かってる」
そんな話をしていると秋の家の前に着く。
「あはは、まぁがんばれよ! じゃあな!」
「またな」
秋は笑ってそう言うと家の中に入っていった。
「……」
……なんだこれ?
僕は少し歩いたところで立ち止まる。
襲い来るとてつもなく嫌な予感。
これはきっとさっきの秋との会話のせい……ではないだろう。
オレンジ色の夕日と平日の夕方にしては似つかわしくないほどの静けさ。
見慣れたはずの光景が全て不気味とすら感じあの時の記憶と重なる。
この予感がデジャブ感だと気づいた時には僕はもう走り出していた。
なんだ……なんなんだこれ!? これじゃまるで……あの日みたいじゃないか…!
思考はまたまらず、息をすることさえ忘れ僕は走り続ける。
そして家に着き、靴を脱ぎ散らかしリビングに上がる。
「……母さん?」
肩で息をしながらそう言った先には重い表情で呆然と立ち尽くす母さんがいる。
まただ……
母さんの顔を見た途端頭痛と共に再び嫌な予感が過ぎる。
「佳……」
母さんの声を聞く度頭痛が激しくなる。
やめろ……言うな
「恵ちゃんが……」
その先を言わないでくれ……!
「亡くなったそうよ」
それを聞いた途端僕は膝から崩れ落ちた。
「佳……!」
「なんでだ……恵が死ぬ未来は変わったんじゃなかったのか……」
母さんの声すら今の僕の耳には入らない。
ただ恵をまた失ったという絶望と救ったはずじゃという疑問だけが僕の中を駆け巡る。
また、恵みを失うのか……?
もう、めぐみに会うことも、声を声を聞くもできないのか……?
僕に恵を救うことなんてできないのか……
「違う……! 僕は恵を救う! 何があっても、どんな手を使って! だって僕は……まだ恵に、伝えなくちゃいけないことがあるから!」
恵を救うことを再び誓った瞬間、僕の視界は白い光で満たされる。
次第に光は収まり視界が開けていく。
そして完全に視界が開けると僕は違和感を感じる。
その違和感は言うまでもなく明確だ。
まただ……
また僕は僕の部屋にいる。