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明日の君に会うために  作者: 橘葵維
3/5

日常

 なんで……なんでだ……?なんで僕は、()()()()()()()()

「僕はさっきまで公園にいたはずじゃ……」

 それにおかしなことはもう1つある。

 時間だ。

 さっきまでは日が沈みかけ薄暗くなっていたのに部屋のデジタル時計は朝7時半を表示し、窓からは明るい光が差し込んでいる。

 僕はベッドのうえのスマホで日付を確認する。

「……4月10日」

 4月10日は僕達の学校の始業式の日。

 つまり、恵の命日だ。


 すると僕の部屋のドアが勢いよく開かれる。

「おはよ佳!早く始業式行こうよ」

「恵……?」

 僕の部屋に入ってきたのは恵だった。

「なんで……恵がここに……?」

「なんでって、佳を迎えに来たに決まってるじゃない」

「いや、そうじゃなくて、だってお前は……」

 死んだはずだろ……その言葉を僕は飲み込んだ。

 それを言ってしまえば目の前にいる恵を否定する気がしたからだ。

「まぁいいわ。それより早く行きましょ」

 なにかを察したのか恵はこれ以上なにも聞いては来なかった。

「……分かった」


 恵に部屋から出てもらい、僕は制服に着替える。

 僕はその間少し落ち着き始めた頭で今の状況について整理することにした。


 疑問は大きくわけて3つある。

 まず1つ目は、場所だ。

 僕はあの時、公園にいたはずだ。 それなのに気がついたら自分の部屋にいた。

 2つ目は、時間。

 あの時の時間はたしか午後6時くらいで日が沈みかけ薄暗くなっていた。

 ただ、1つ目同様気がつくと窓からは光が差し込み、時計は午前7時半を表示していた。また日付も恵が死んだ4月10日になっていた。

 そして3つ目は、恵だ。

 これが1番分からない。

 だってあいつはたしかに交通事故で死んだはずだ。

 それなのにあいつはさっき僕の目の前に現れた。


 そしてここから立てられる仮説は2つ。

 1つは夢オチ。

 恵が死んでからの出来事が夢だったという可能性。

 ただ、それだとあまりに感覚がリアルすぎたり、恵が死んでからの出来事を鮮明に覚えていたりと納得いかない点がいくつかある。

 2つ目はタイムリープ。

 僕はあの公園でなにがきっかけかは分からないがタイムリープをして恵が死ぬ前に戻ってきたという可能性。

 これなら1つ目の仮説で腑に落ちなかった点も納得がいく。

 たしかに納得はいくがそんなことがありえるのか……?


「佳ーまだー?」

 恵の僕を呼ぶ声が聞こえる。

「悪い、今行く」

 最低限の身支度と準備を済ませ僕は恵と家を出る。

「恵、まだ少し時間あるしいつもと違う道で行かないか?」

「いいけど、どうして?」

「いや、少し歩きたい気分なんだ」

 恵が死んだ交差点を避けるため、なんて言えるわけもない。

「ふーん、珍しいこともあるものね」

「まぁな」

 よしこれで事故で恵が死ぬ事は無い、よな……?

 僕はまだ半信半疑のまま学校へ向かう。


 そして僕の予想通り学校に行く道中で恵が事故に遭うことは無かった。

 よかった、これで恵は死ぬことはないはずだ。

 これでやっと戻ってきたんだいつもの日常に。

 僕らは校舎前に張り出されているクラス表で自分のクラスを確認する。

「僕のクラスは……Cか。 恵は?」

「私もCだったよ。 これから1年またよろしくね」

 そう言って微笑んだ恵の笑顔は久しぶりに見たせいかとても眩しく見えた。

「あぁ、こちらこそ」

 僕らは2年生のクラスがある3階へ向かい、教室の扉を開けると少し甲高い音が鳴る。

 僕らの学校は伝統のある学校らしくて校則はそれなりに厳しいし校舎もボロい。


 僕らが教室に入ると1人の男子生徒が話しかけてきた。

「佳、叶さんおはよ!また同じクラスだな」

「おはよ秋、お前も同じクラスだったんだな」

「おはよ秋くん今年もよろしくね」

 僕らに声をかけてきたのは足立秋。

 秋は僕と恵とは中学から同じでいわゆる腐れ縁というやつだ。

「なぁ佳、放課後久しぶりにゲーセンでも行かね? どーせ家帰っても積みゲー消化するだけなんだろ?」

 今日は始業式だけなので学校が午前中で終わるのだ。

「おい待て、積みゲーを消化するだけって決めつけてるのは議論の余地があると思うんだが」

「違うのか?」

「いや、まぁそうだけど」

「だろ?でどーする?」

 秋がはにかみながら言う。

「ゲーセンか……」

 恵のことは少し気になるけどあいつが死ぬことはもうないはずだし少し遊ぶのもいいかもな

「久しぶりに行くか」

「よっしゃじゃあ決まりな」

「おう」


 そして始業式も終わり放課後を迎えた。

「佳、行こぜ」

「あぁ」

 僕らは学校を出ていつもとは逆の方に曲がりゲーセンへ向かう。

「さえ、まずは何しようか」

「まぁまずはあれしようぜ」

 佳が選んだのは定番格闘ゲームであるストリー〇〇ァイターだった。

 僕らは対戦モードを選択しプレイする。

 結果を言うと5戦ほど繰り返し戦歴は1勝4敗と惨敗だった。

「佳、お前相変わらずめっちゃ弱ぇーな」

「ウォ、ウォーミングアップに決まってるだろ!

 ギャルゲーマーの実力舐めるなよ……!」

「いや、格ゲーにギャルゲーマー関係ないじゃん」

 僕はそう意気込みを入れて、格ゲーに続きレースゲームに音ゲー、シューティングゲームなど様々なゲームをしたが僕が勝ち越したものはなかった。


 どうやら認めなくてはいけないようだな……。

 僕は……ギャルゲー以外のゲームはとてつもなく下手らしい。

 だって仕方ないじゃん、ここしばらくギャルゲーしかしてなかったんだから……。

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