ななちゃんと、おねがいのたなばた
七夕ということで、ななちゃんファン様のひな月雨音さまが、ななちゃんのSSをくださいました。
「ただいまぁ」
「あっ、かなしゃんでちゅ」
お絵描きをしていたななちゃんは、大好きなお姉ちゃんのかなちゃんの声に、ニコニコしながらお出迎えをします。
「なな、ただいま」
「おかえりなしゃい。がっこ、たのちかったでちゅか?」
「うん。今日はね? ななにおみやげがあるんだよ?」
「おみあげぇ?」
かなちゃんは鞄を開けると、クリアファイルに挟んでいた一枚の紙を取り出しました。
「なんでちゅか? どちてひらひらちてるでちゅ?」
今日は七夕なので、友達と一緒に、短冊を作ってお願い事を書いたのだと、かなちゃんがお話ししてくれました。
「おねがい? いちだけ、おねがいかくでちゅか?」
「そうだよ。書いたら教えて? あとで一緒にかざろうね」
ななちゃんは悩みます。
たくさんたくさん悩みます。
「どうちようかなぁ? おやちゅ、いぱぁいくだしゃいにしゅるかなぁ? おっちいイチゴしゃんくだしゃいにしゅるかなぁ?」
するとそこへ──
「ただいまぁ」
パパもお仕事が終わって、帰ってきたようです。
お出迎えはママがします。
「お帰りなさい。お風呂沸いてるから、ご飯の前に入って来ちゃって?」
「うん。ありがとう。ななぁ? パパと一緒に……」
ななちゃんはペンを持ち、短冊とにらめっこ中の為、パパの帰宅に気付いていない様子。
ネクタイを外しながら、パパはななちゃんの背後に歩み寄ると、そのまま抱き上げました。
「さぁ、つかまえたぁ! パパのかわいいお姫様は、何をしていたんだい?」
「あははっ! ぱぁぱっ! ななね? おねがいしゅるのこと、かくでちゅよ?」
「なるほど。短冊にお願い事ねぇ? それで、ななは何をお願いするんだい?」
ななちゃんの頭をなでながら、パパは続けます。
「パパなら、家族みんなが笑顔でありますようにって、お願いするかな?」
「みんなでちゅか?」
「うん。ママも、かなも、ななもね」
ななちゃんは、パパのお願いには、ひとつ足りないことがあると気がつきました。
「なな、きめたでちゅ」
そういうと、持っていたペンで短冊に、スラスラと何かを書き始めました。
「……ん? これは……そうか」
ななちゃんのお願い、それは──
「ぱぁぱ、まぁま、かなしゃん、なな、みぃんなわらってまちゅ」
そう──
まだ文字が書けないななちゃんは、家族4人が手を繋いで、みんなで笑っている絵を描いたのです。
「ぱぁぱのみんなに、ぱぁぱいなかったでちゅ。だからなな、みぃんなかいたでちゅ」
とっても優しいお願い事に、パパは少しウルっとしてしまい、ななちゃんのことをぎゅうっと抱きしめました。
「ななぁ? 書けたらかざるよぉ」
画用紙に竹の絵を描いて、かなちゃんが戻ってきました。
「なながペッタンしゅるでちゅ!」
この優しいお願いは、もう叶っていると、ななちゃん以外の3人は思いましたが、口にする者は誰もいませんでした。
「でちたぁぁ!」
短冊に描かれた絵のように、4人で並んで手を繋ぐ──
七夕の夕暮れ時、ななちゃんのお家は、笑顔に溢れています──
「お夕飯のお支度終わるから、はやくお風呂に入ってください!」
「はいでちゅ!」
元気なお返事をして、手にはお気に入りのおむつを持って、パパの手を引くと、お風呂へと向かうななちゃんでした──