夢
「楽しいことないんすよ、あんまり。」
桂はそうとだけ言った。それが全てだった。
人の死を見る事が、この世界では一番楽しい事なのだ。
好むか好まざるかは別として、私はそういう世界に来てしまったのだ。こういう事を聞くとやはり別世界だと感じる。
「平川さん、ミーナの話は真面目に聞く事ないですからね。たまたま私がそうだからといって貴方までそうなる必要はないですよ。」
夕食の際、桂はそう言った。私があの後ずっと怪訝そうな顔をしていたので気を遣ったのだと思う。しかしその一言で私はさらに悩む事になった。
私は一体どうすべきなのだろうか?
ミーナが言ったことも桂が言ったことも真実なのだろう。勉強すれば死刑執行人ではないものになれるかもしれない。でも、ここにはその余裕はない。このボロい小屋を見れば分かる。それにどこまで甘えていいかもよく分からない。そもそもこの人(人なのか?)達に頼るのは正しいのか?何が正しくて何がそうでないのかもう全てがぐちゃぐちゃになっていた。おかげで夕食の味は全くわからなかった。何を食べたのかすら定かではない。
水浴びをして、(風呂という概念はなかった。)後は寝るだけだった。ここで嬉しいハプニングが起こった。なんとこの小屋、ベットが二つしかないそうだ。という事は、そうミーナと同じベットで寝ることが許されるのだ。ミーナと私のベットは小屋の左奥、キッチンの奥にある。ちなみに桂は小屋に入ってすぐのところにあるベットというよりソファーに近い代物で寝ている。最初に入った時はてっきり椅子だと思っていたが、桂曰くこれでも立派なベットらしい。が、そんなことはどうでもいい。
幼女と寝れることになり、私の胸は膨らんだ。比喩でなく、本当に膨らめばいいのに。
ミーナは先に入っており、もう半分くらい意識はなくなっていた。私は端に失礼し、ミーナの真珠のように奥深い白さを持つ肌を眺めていた。少しだけ難しいことを忘れられるような気がした。
気付くと意識は遠くなっていて、夢を見ていた。
夢の中で私はまた死刑を眺めていた。周りには罪人と桂以外誰もいなかった。罪人は口を開け、その口の中に白い鳥が勢いよく何匹も飛んでいった。鳥がどこから来たのかは検討も付かなかった。罪人の後ろで桂はニタニタと気味の悪い笑みを浮かべている。すると、罪人の腹が餅のように膨れ始めた。いよいよ私は怖くなったが、目を背けはしなかった。現実ならばとっくに逃げているころだろう。罪人の腹は膨れ続け、いよいよ破裂した。胃の中から、何万羽の黒鳥が勢いよく飛び立っていった。なぜか白色をした血と黒い鳥のコントラストがオセロに見えた。するとそれらはオセロになりなぜか私はオセロ大会に出ることなった。決勝でミーナとあたり、辛くも勝利することができた。ミーナの爪からススキが生えてきて、周りは秋景色となって、その辺りで目が覚めた。
桂はもう起きていて、食事の支度をしている。ベットの近くで鳴っている音で、目覚めたようなものだ。
何かに火を通す桂の姿からは、死刑執行人の香りは全くしない。ただの普通の人間だ。これが前日人を八つ裂きにしたと言っても信じる人は少ないだろう。
ミーナはちなみにまだ寝てた。寝る子は育つというから今後が楽しみである。
ミーナを見て、ふと昨日言われたことを思い出した。この世界でお前が慣れるものは死刑執行人しかないと、そう言っていた。
私はその後ずっと厄介なことを考えていた。一週間くらいはそれについて考えていた気がする。
そして、自分の中で一応結論した。