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死刑

耳の熱さから解放されて、私はようやく座る事ができた。床と一体化するのはごめんだ。

「そういえばミーナさん日本語お上手ですね。」

「ああ、これはただ単に自分の耳に自分の唾液を入れただけ。」

「しかし凄い魔法ですね。細胞に教育させる魔法なんて…。」

「そう、細胞ってひとつひとつやるべき事があるはずなんだけど私の魔法はそれを無理矢理上書きさせるの。まあ魔法はこれしかできないんですけどね。」

「ケノンが入りましたよっと。ああ、平川さんにはこれも。氷で冷やさないと。」

桂の手には氷の入った袋とケノンの呼ばれる液体の入ったコップ(なのか?)が二つあった。左の指で器用にコップ風のものを挟んでいる。

「あの、ひとつ聞いていいですか?桂さん先ほどこの液体をケノンと、氷を氷とおっしゃいましたよね?この世界と私の世界で存在が違ったり同じだったりするのは何故でしょう?」私は氷を受け取りながら聞いた。

「うーん、あくまで仮説ですが、ここが別の地球なのはさっき言いましたよね?だがら水とか火とかそういうこの星を構成するときに必要不可欠なものはどの世界でも同じなのでしょう。ケンプやケノンなどの生き物やお茶は作られた歴史や環境によって左右されるので存在が変わってくる、こういう事なのではないかと思います。あと名称自体は氷はこっちの世界ではナモというらしいです。」

「じゃあ木や草もあっちと同じ存在ですか?」

「ええ。なにせ自然は二酸化炭素と酸素のバランスを保ってくれる大切なものですから。あ、ちなみに二酸化炭素と酸素もあっちと同じです。それにしても変な事を気にされるんですね。」

「え?」

「だってホールに飲み込まれて、もう帰れないかもしれないというのに。三日三晩泣き明かしてもおかしくないですよ。」

「…うーん、まあ来ちゃったもんはしょうがないですよ。それよりここでの生活です。私はどう生きていくべきですかね?」

「桂、お前の職場に入れてやったらどうだ?」

ミーナさんが口を開いた。それを聞いて思い出してしまった。

八つ裂き。力一杯引っ張るケンプ。人々の熱。その中心にいた男。

幼女の可愛さで騙されていたが、桂はとんでもないやつなのかもしれない。安易に今後を頼るのは良くないかもしれない。だが、ここを出て行ってもあてはない。どうしたものから

「…そういえば桂さんの職場って…。」

「う、うん。えっと、死刑執行人っていうんですか。はい。」

「桂はな、死刑執行人の中でも大層町の評判のいい…。」

「ミーナ、やめなさい。」

口がすべった、というような顔をしてミーナは口を手で塞いで見せた。君に、胸キュン。

「あ、あの職に就くよりこの世界をもっと良く知った方がいいですよ。この世界にも学校はあるのでそこに行ったらどうでしょう?」

「おいおいニャモンに比べてこの国は圧倒的に教育が発達してないと悪口を述べておったのは誰じゃ?それにウチも豊かじゃないから働いてもらわんと困る。なにより、桂わかっておるだろ?この子は死刑執行人くらいしかできないんだよ。」

「何故です?」私は聞いた。少し怖いが知らないよりマシだ。

「ミーナ、そのくらいに…。」

「黙らっしゃい、平川さん、あのね落ち着いて聞いて。ここは差別が結構ひどいのよ。だから平川さんみたいな人が働けるところは限られてくるのよ。」

「ああ、だがら死刑執行人なんですか。死体を扱うのは差別される側の人間と相場は決まってますもんね。」

「察しがいいですね。」

「まあ慣れてるんで。そういうのは。でもひとつ疑問なのは何故桂さんがああいう方法で死刑執行してたかなんです。あれ必要ありました?」

「娯楽ですよ。」

「え?」

一瞬意味が分からなかった。ここまでの話はまだあっちの世界でも良くあった。差別の話なんかはインドなどで今も行われている事だ。でも、死刑が娯楽?頭が痛くなって来た。

どうやらとんでもない世界に来てしまったようだ。

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