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ぞわりの穴  作者: 村良 咲
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プロローグ

「チーン」

「みーこちゃん、ありがとね。お茶入れるからゆっくりしてってね」

真っすぐ立ち上るはずの線香の煙が微かに揺れている。

ぞわりと背筋に寒気を感じ、どこからか風が入り込んでいるのかと、見渡してみる。 

きちんと閉めてある障子襖の向こうには、確かちいさな畑があった。

きぃちゃんのお祖母ちゃんが、いつもそこで畑仕事したり椅子に座って日向ぼっこをしていて、

この部屋の縁側で遊んでいる私たちをいつもニコニコして見ていた。


「久しぶりだね、元気だった?」

「うん、元気にしていたよ。あまり来られなくてごめんね」

 互いの家が見えるほど近居に住んでいたきぃちゃんと私は、

誕生日が2週間ほどしか違わないこともあって仲が良く、互いの親に、

「どっちが自分の家なのかわからなくならないの?」

と笑われるほど、毎日一緒だった。

私の母もきぃちゃんの母も、どちらも我が子のようにいつも接してくれていた。


「みーこちゃん、小学校の先生になったんだったね。

クラスの子供たちはみんな元気?先生って仕事は忙しいんでしょうね。

子供たちに怪我をさせないようにとか気を付けることも多いでしょ?」

「そうだね、勉強も大事だけど、とにかく子供たちが無事に1年過ごせますようにって、

先生になってからは年の初めはそう祈ることばかりだよ」

「懐かしいね。あんたたちが小学生になった頃が懐かしいよ」

おばさんは、もう灰に潜り込んで消えそうなお線香の灯りを、

まるで消えることを惜しむような目で見つめながら、それを見送った。

「あれから何年経ったんだろうね・・・

あんたたち、よくこの縁側で着せ替えごっこしたりおはじきしたり、

宿題も、ここから丸テーブル出してやってたね」

そういって、仏壇の奥に立てかけてあった小さな木の丸テーブルを出してきた。

「こんなに小さかったっけ?」

大人が使うには小さすぎるそのテーブルは、使われなくなってどのくらい経つのか、

記憶の中のテーブルは、きぃちゃんと2人で使っても余りあるくらいで、

時々きぃちゃんのお兄ちゃんが勉強を教えてくれるときに

3人で使うとやっといっぱいになるものだった。

それが今はとても小さく見えた。

 ふと、誰かに見つめられているような気がした。

あの頃には気づかなかった木の模様が、一瞬、きぃちゃんの目に見えた。

ぞわりとした。

きぃちゃんがいなくなって、何年経つんだろう。




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