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魔王代行の理想郷  作者: 瀬川裕
第2章  鏡魔王アスト
8/12

7話 魔王固有能力

 気がつけば、ベッドの上にいた。体に包帯は巻かれてはいるが、不思議と痛みはない。もしかすると、治癒系の魔法でもあるのかもしれない。


 では、俺は何故ベッドの上にいるのだろうか。あの後、一体何があったのか――フェリスは無事なのか。様々な疑問が、次々と浮かんでは沈む。


「誰か……誰か、いないのか!?」

「アスト様! ああ、良かった……」

「フェリスか……無事だったか」

「はい……! アスト様も、本当に良かった……」


 フェリスは今にも泣きそうな顔をしている。そこまで心配させてしまうとは、本当に申し訳ないことをした。


 しかし、まだ疑問は残っている。フェリス1人では、例え馬を使ったとしても俺は運べないはずだ。試した所で乗馬もままならないだろう。ならば、どうやって――


「おや、お目覚めのようですね」

「お前は……! どうしてお前がここに?」

「どうしてと言われましても……。ここは、ギルドの医務室ですから」


 そう言いながら、彼は――ギルドの受付をしていた青年は、肩を竦めた。

 なるほど、彼が俺を運んでくれたのか。どういった経緯があるのか、是非とも教えてほしい。


「えっと……」

「メフィストです」

「メフィスト!? お前が……?」

「そうですが、何か?」

「い、いや……。その、ありがとう」

「気にすることはありませんよ」


 驚いた。まさか、この青年がメフィスト――メフィストフェレスだというのか。そのようには見えないが……。

 いや、まだ別人という可能性も残っている。それに、この世界は前世の知識とは違う部分もあるから、これも違う部分の1つなのかもしれない。

 とりあえず、今は話を進めよう。


「だが、メフィスト……どうしてお前が?」

「心配になって、尾行していたのです。まさか、本当にドラゴンを倒すとは……。思ってもいませんでしたよ」

「なるほど。わざわざありがとな」

「いえ、少し興味がありましたので。お互い様です」

「興味……か?」

「ええ。ドラゴンを倒すと豪語する者の実力に、ですよ」


 言われてみれば、確かに興味が湧く。だが、だからといって、尾行までするだろうか。凄まじい探求心である。


 それより、よく考えると、俺は豪語した割にドラゴンに辛勝だったのではないか。最後のあれがなければ、どうなっていたことか――


「そういえば、フェリス……最後に――ドラゴンを倒したときに、何が起きていたんだ?」

「覚えていないのですか? アスト様の手から放たれた光が、ドラゴンを貫いたのです」

「ああ、あれには驚きましたよ。もしやとは思いますが……貴方は、魔王様なのでは?」

「……! どうして、それを?」

「やはりそうでしたか。恐らく、あの光は魔王固有の能力でしょう」

「魔王……固有?」


 そのようなものがあるとは、初めて聞いた。ユニークスキルみたいなものなのだろうか。

 しかし、光が関係しているのだろうか……身に覚えがない。


「まるで、反射しているような……鏡みたいでした」


 そう呟いたのは、フェリスだった。確かに鏡は光を反射するが――


「鏡! そうか……そういうことか!」

「おや、心当たりでも?」

「ああ。実は――」


 そうして俺は、転生する前にアスタロトとしたやり取りについて話した。

 あの時、アスタロトに聞かれたこと。俺が鏡と答えたこと。それはつまり、俺が持つべきスキルについての話だったのだ。

 もっとも、アスタロト自身は鏡で得られる能力について、よく分かっていないようだったが。


「――というわけだ。まさか、そういう質問だったとはな……」

「そんなことが……今までお話し出来ず、申し訳ありません」

「いや、フェリスが謝ることじゃない。俺だって、ずっと黙っていたことだからな」

「へぇ……素敵な主従関係ですね」

「主従関係? 俺は一応、フェリスは家族だと思っているが……」

「アスト様……!? 家族だなんてそんな、私には勿体ないお言葉です……」


 そう言って、フェリスは顔を赤くして俯いてしまった。俺は何か、変なことを言ってしまったのだろうか……。


「……やれやれ。随分と、鈍いご主人様のようで……」

「鈍い? 俺が? ……何故?」

「……まあ、良いでしょう。それより、鏡ですか……。さしずめ、鏡魔王(きょうまおう)とでも言いましょうか」

「鏡魔王? ……異名みたいなものか?」

「あ、ソネイロンは確か、疑魔王(ぎまおう)ですよね」

「ええ。そういったものと考えて頂いて結構です」


 なるほど。ということは、俺は今日から『鏡魔王アスト』なのか。なかなか良い名前で少し安心した。

 他の魔王の異名も気になる所ではあるが、それはまた今度にしよう。


「とりあえず、メフィスト。助かった、ありがとう。」

「いえ、構いませんよ」

「そうか……。それで、お前はどうするんだ?」

「どうする、ですか。そうですね……では、貴方にお供させて頂けますか?」

「お供? ああ、俺は歓迎するが……。フェリスは?」

「私は、アスト様の判断を信じますよ」

「……と、いうわけだ。よろしく頼むぞ、メフィス

ト」

「勿論です……アスト様」


 こうして俺は、自分の能力を知ることが出来た。今後は、この能力の活用法を見出せるようにしたい。

 それに、新たに仲間も増えた。しっかりとした信頼関係を築いていき、結束力を高めたいと思う。









 次話からタイトルを

『魔王代行の理想の世界』と改めます。ご了承お願いします。

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