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魔王代行の理想郷  作者: 瀬川裕
第2章  鏡魔王アスト
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10話 新たな能力

 攻撃を回避され、剣が空を切る。俺は体勢を崩しかけたが、咄嗟に踏みとどまった。


「アスト様!? 何を……!?」

「敵は……切る!」

「そんな……。私は味方です!」

「フェリスさん、下がって! 多分……聞いてくれないよ」


 そう言って俺の前に立ちはだかったのは、ツインテールの少女だ。こいつは――敵、か?


「邪魔をするな!」

「あなたこそ……! 油断なんかして!」

「ふん。仲間の手で身を滅ぼせェ!」


 少女が何かおかしなことを言っているが、気にする必要はない。

 俺は一気に間合いを詰め、少女に剣を振り下ろす。


「……!? どうして斬らないの?」

「お前は……敵、じゃ……ない?」

「……え?」


 何故だろうか。俺は目の前の少女を、敵だとは思えなくなってきた。まずい、疑心暗鬼に陥っているようだ。何が真実なのか、確かめなければ――


「鏡の能力……。鏡のつく言葉の意味は……!」

「能力が完全に効いてねえのか……!? なら、もう一度だ!」

「くっ……間に合うか!? 眩惑よ、消え去れ――《鏡花水月》!」

「なッ!? 魔王固有能力か……!?」


 力強く言葉を発し、能力を発動させる。直後、俺を包んでいた何かが霧散(むさん)した。

 俺の感情を支配していた疑念がなくなり、状況が飲み込めてきた。


 正面にソネイロン、後方すぐ近くにはアスタリード――何故か俺に剣を向けている――がいて、やや離れた位置にフェリスがいる。


「アスト様……?」

「フェリス、その……。アスタリードに、剣を下ろすように言ってくれ」

「……!? 良かった……」

「え? えーと……?」

「こいつ、能力が通じねえか……。クソ、あばよマヌケ共!」


 ソネイロンは、捨て台詞を吐きながら姿を消した。確かに、交戦中に仲間と話をして注意を疎かにしたのは、マヌケだったかもしれない。


「逃げられたか……あいつの仲間も消えたな」

「……アスト様、ご無事ですか?」

「ああ、何とかな。アスタリードは?」

「…………」

「あ、アスタリード……?」

「アスト様、実は――」


 フェリスから顛末(てんまつ)を聞かされ、俺は驚きを隠せなかった。いくら油断していたからとはいえ、仲間に切りかかってしまったのは事実だ。

 俺は2人にしっかりと謝罪し、二度と同じ過ちはしないと誓った。


                    *** 

 

 戦いの後の事後処理を終え、俺達はアスタリードを連れて城に戻ることにした。

 道中は不自然なくらいに何事もなかったが、警戒を解くことはなかった。


「ここが俺達の城……って、知ってるか」

「うん……知ってる」

「アスタリード様は、お城にお住まいになられるのですか?」

「ソネイロンもいるし……北の砦に戻らなくちゃ」

「いや、それについて話したいことがある。しばらくは残っていてくれ。な?」

「……うん」


 やはり、俺に対するアスタリードの反応は悪い。故意ではないとはいえ、あのようなことをしたのだから当然だ。今後は信頼回復に努めなければ、妹に嫌われっぱなしになる。それだけは避けたい。


 


 話は食事場ですることにした。その方が、話しやすいと思ったからだ。


「それで、ソネイロンの城はどこに?」

「ここから南方ですが……。現在は、北方にあるグレシールの城に滞在しているようです」

「彼らは同盟中ですからね」

「同盟!? また、厄介な……」


 ソネイロンが現時点で7階級ならば、グレシールは恐らく6階級の魔王だ。

 俺の知る限りでは、グレシールの特徴はソネイロンと似ており、能力も封殺出来るはずだ。


 だが、問題はそこじゃない。魔王は固有能力によって類を見ない強さを得ているが、実力そのものも常軌を逸しているのだ。

 それが2人いるとなると、確実に勝てるとは言い切れなくなる。


「どうしましょう……」

「各個撃破は出来ないのか?」

「難しいかと。今回のことだってありますから」

「だよな……。やっぱり、上手く立ち回るしかないか」


 俺の魔王としての実力が衰えていなければ、圧勝出来たのだろう。だが、その実力を取り戻す方法も分からない。どうすべきか――


「魔王様! あ、皆様お揃いでしたか……。ご無礼をお許し下さい!」


 俺の思考を遮ったのは、物見の兵士だった。ノックもせずに勢い良く扉を開け、部屋に飛び込んできた。


「そんなに慌てて、一体何があった?」

「はっ! 魔王様に謁見を賜りたいと、人族の者が門に……」

「謁見? 人間が俺に?」

「ええ。ですが、何やら怪しく……その、物腰が強者のそれを感じさせるのです」

「なるほどね……」


 出来るだけ落ち着いて言ったが、俺は焦っている。魔王の所に来る、強者の人間と言えば――勇者だ。こんな時に、勇者。間が悪いというか、良いというか……。


「怪しいですね。いかがします?」

「仕方ないな……。謁見の間に通してくれ」

「はっ! すぐ済ませます!」

「本当に、大丈夫ですか……?」

「無視も良くないからな。会うしかない」


 それに、相手が人間なら、死ぬようなこともないだろう。そう心では思っていたが、口には出さなかった。


 俺は覚悟を決めつつ、謁見の間へ向かった。






 


 



 

《人物紹介》

名前:アスト(男)

種族:魔族【鏡魔王】

能力:鏡花水月、反射

階級:魔王8階級

特徴:銀髪、赤い瞳。長身痩躯だがやや筋肉質



 これから人物紹介をしていこうと思います。


 それと、10話の記念(?)として、評価を募集します! 是非評価して下さい!

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