第2話 新たな仲間!エクセレ☆ミランダ誕生!
――キーンコーンカーンコーン。
放課後、チャイムの音が教室に響き渡った。よーしじゃあこれから遊びにいっちゃうよー!って言いたいけど、さっきキューポが私の所に来て、『キルッキー』が現れたって伝えてくれたの。私が『みらくるがーる★ぴきこ』になって倒しに行かなくちゃ。
「ねえチヒロ、今日どこか寄っていかない?」
この子は私の親友、高萩ユカ!小さい頃からずっと友達なんだよ。
でも、今日は遊びに行けないよ……。
「ご、ごめん!私今日は用事があって~」
「え~、昨日も用事があるって言ってたじゃない。どうしたの?習い事でも始めたとか?」
「えっと、まあ……そんな感じ!」
本当は昨日はチュゴットに呼び出されて『ダイデスデッド』と戦ってたんだよね。ごめん、嘘ついちゃった。
「なんだか怪しいわね。チヒロ、あなた私に隠し事してない?」
「えっ、ううん、してないよ~」
ユカは、私の顔をじーっと見つめた。
私はドキドキしながらも、目だけは逸らさないように気をつけたよ。
「そう、ならいいけど……。ちょっと顔に疲れが見えるわ。今日は早めに休んでね」
「う、うん……。」
ユカは昔から私の一番の親友で、悩み事もなんでも話せた。でも今は、危ないことに巻きたくなかったの。それにユカって、私と違ってすごく現実的な所あるから、こういう非現実的なの信じてもらえないかも。
「じゃあもう行くねぇ~」
「あ、チヒロ!これだけ持っていってよ!」
と、ユカが私に差し出したのはノートの切れ端を折りたたんだ紙だったの。
なんだろう、と私が空けてみようとすると、ユカが止めたの。
「待って。それは本当に困った時にだけ空けて欲しいの」
「え、うん。わかったよぉ」
「ついでにこれもね。お口アーンして」
言われる通り口を開けたら、ユカは私の口の中にキャンディーをそっと置いたの。
「すっぱい!」
「特製の梅干しキャンディー!これで疲れも少しは取れるわ」
「ありがとう!行ってくるよ!」
結局ユカにはほんとのこと話せなくて、それが心苦しかったけど、なんだか元気もらっちゃった。ごめんね、いつかちゃんと話すね。
☆★☆★☆★
「チヒロ!敵はここだっきゅー!じゃあこれ終わったら、ドーナツ食べようっきゅー!」
「えー、そりゃ私も食べたいけど、またきゅーぽの分もお金出すの~?」
「チヒロ~、お願いだっきゅー!」
「えーっとじゃあ、その話は終わってからにしよう!行くよ!<すたーとあっぷ・ぴきこ>!」
しゃららららら――
光に包まれてぴきこに変身してる間、私はきゅーぽのドーナツ食べたいのを、どうやんわりと断るか、あるいは少しだけにしてもらうかを考えてたの。
いけない、今は戦いに集中しなきゃ。
「悪者退治から新聞配達までぜーんぶ私にお任せ!みらくるがーる★ぴきこ、ただいま参上!」
これが今現在のぴっきーの決めゼリフ。
本当は新聞配達はやりたくないけど、ぴきことしてはこう言うのがルールらしいから言ってるんだ~。
「来たなぴきことやら!オレ様はキルッキーの戦士ビーンズだびん!我らの野望のため貴様にはここで死んでもらうびん!やれチョムチーよ!」
「わ、わわっ!ちょっと待って~」
ぴきこに変身したばかりの私の前に、おさるさんとワニを足したような人がいきなり襲いかかってきたの。多分この人敵の幹部だよ!それで、クラゲかタコみたいな怪物を召喚して私を攻撃してきたの。どうしよう!?
「ぴきこ、君ならやれるっきゅー!エンジェルマジカルスティックを使うんだっきゅー!」
キューポの言うとおりに、私はエンジェルマジカルスティックを何もない空間から取り出したの。そしたら手に取った瞬間、なんとなく使い方をイメージできたの。
「行くよっ!えんじぇりっく・ぴきこ・ぱにっしゅめんと!」
私が強い攻撃をイメージしてスティックを振るうと、先端からピンクのビームが出てきて敵に直撃!ばうんっ!って爆発したよ!
「ちょむーーーーー!!」
そのまま跡形もなく吹っ飛んじゃったみたい。やったあ!チョムチーっていう敵の召喚獣をやっつけたよ!
「おのれ!ぴきこよ、今日の所は退散するが次は必ず倒してやるびん!」
敵の幹部っぽい人は、お約束のように逃げて行ったの。『ダイデスデッド』の人も『キルッキー』の人も逃げる時は同じような事しか言わないんだねぇ~。
「すごいっきゅー!さすがぴきこだっきゅー!僕の見込んだ通りだっきゅー!」
照れるなあ。えへへ。
でもこれからあの敵さんとも何度も戦わなきゃいけないのかなあ。私、『ダイデスデッド』とも戦わなくちゃいけないんだけど……。なんだかドッと疲れちゃった。とにかく帰って休もう。
「チヒロ!じゃあドーナツ屋さんに行くっきゅー!」
「えっ。あーっ……」
しまった~。ドーナツ屋さんのことすっかり忘れてたよ。こないだ初めて一緒にアイス屋さんに行ったとき、キューポは結構食べるって分かっちゃったから困るなあ~。お小遣いが無くなっちゃうよぉ~。
「大変大変だもーん!チヒロ、『ダイデスデッド』が現れたもーん!」
「チュゴット!」
突然、『メルヘニカ』製のスマフォ『エクセルフォン』から叫び声が聞こえたの。声の主は『メルヘニカ』の妖精、チュゴットだよ。こんな時に出てきちゃうなんて~。キューポのことなんて説明しよう……。
「さあ早く行くもん!」
「ちょ、ちょっと待って」
「チヒロ?さっきから何を一人でぶつぶつ言ってるっきゅ?」
あれ?キューポにはチュゴットの声が聞こえてないのかな。私が一人で慌ててるように見えてるのかな?
「チュゴットちょっと待ってて、今この子とお話しなくちゃいけないんだ」
「この子って誰だもん?今はチュゴットとチヒロの他には誰もいないもん」
あれれ~?チュゴットもキューポのことに気付かないのかな~。2人が会うのはこれが初めてだけど、まさかお互いのことが見えないなんて……。
でもとにかく『ダイデスデッド』が現れたのならそっちに行かなきゃいけないね。よしここは……。
「ごめん!私用事を思い出したの!」
「チヒロどこ行くっきゅー!?ドーナツの約束はどうなったっきゅー!」
ああ~、すごく有りがちでウソっぽい言い訳しちゃったよ~。もう少しうまく言えなかったのかな~。でも、お金が浮いてラッキー、なんてちょっとだけ思っちゃった。こんな考えはずるい、よね。ごめんね、キューポ。今度はごちそうするからねぇ~。
キューポと一旦さよならした私は、ぴっきーに変身したままチュゴットと現場に向かったよ。
「ねえチュゴット、『まじかるてっく』とか『キルッキー』って知ってる?」
「なにそれだもん?チヒロが好きなラノベかマンガの話だもん?」
「あ、やっぱり知らないんだ……。ううん、ごめんね変なこと聞いて」
チュゴットは、今私がチヒロともエメリーとも違う姿になっていることにも特に気になってないみたい。
「『ダイデスデッド』のモンスターはここを曲ってすぐそこにいるもん!さあチヒロ、変身だもん!」
「うん、わかった!」
私は『エクセルフォン』を取り出して叫んだ。
「スーパー☆チェンジ!エクセレ☆エメリー!」
この時私は、ぴきこのまま変身してもエメリーの姿になるんだってわかったの。
☆★☆★☆★
今回の『ダイデスデッド』のモンスターは結構すぐにやっつけられたよ。でも実は倒したのは私じゃないの。
なんと!私以外の『エクセレン戦士』が現れて、必殺の一撃で倒しちゃったんだから驚きだよ!
「そこのやりたい放題の悪いモンスター!このエクセレ☆ミランダが許さないわ!ミランダ・オーバーロード・ショーック!」
「ぐふぇえええええ~~!」
「バカな、オレのモンスターが一撃だと!おのれエクセレ☆ミランダ!次は必ず仕留めてやる!」
いつもの同じような捨てゼリフを吐いて、去っていく『ダイデスデッド』の幹部さん。でも驚きはこれだけじゃなくて。
実はエクセレ☆ミランダの正体は、私の親友、高萩ユカだったの!
「なんか私もエクセレン戦士っていうのになっちゃった!あなたの隠し事って、これだったのね。これからは2人でがんばろうね、チヒロ!」
「え、えええええ~~!」
まさかユカもエクセレン戦士になるなんて、これからどうなっちゃうの~!
【今回のチヒロメモ】
・チュゴットとキューポはお互いを認識できないよ!
・ぴきこの状態から直接エメリーに変身できるよ!