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出会い

光の末裔。

至高神レイアが最初に造った人族だ。

その系譜であるガイゼリック王子。

皇帝の座を奪った王弟アシュナードも、もちろん光の直系。

ヴァルハラント帝国を中心に東西南北の公国も光の傍系である4公爵が治めている。


光の一族だけが扱える最強の光魔法ナラティブを頂点に光剣ラグナロク、皇剣エクスカリバー、魔剣ミストルティン、竜槍グングニルなどなどの神器。


身分だけではなく、そもそもの至高神の加護が違う。

でも、彼は今となっては亡国の王子。

僅かに従えた騎士たちと捲土重来を図っている。



私は気になった。

なぜ反乱されたぐらいで壊滅したのか?


私は彼と彼の騎士隊に食事を持っていくときに、さりげなく聞いてみることにした。

用意されたスープは持っていかなかった。

私にとって、彼と彼の騎士隊は何の生産性もない只の無職で無駄飯食い。

せめて、水を汲んでくるなり、薪を取ってくるなりとすれば多少の印象は変わったが……。


「食事よ」


それが最初の会話。

乾燥したパンを籠いっぱいに入れて、渡す。


貴族の騎士たちは「ありがたい」と言って、固いパンをかじりだす。


そして彼も至高神の印をきって、パンに手を伸ばした。

とても王族とは思えない。

誰よりも高価な鎧を着て、神々しい聖剣を帯剣しているのに。


そして――――――


「なんで、反乱されたの? その聖剣があれば、一騎当千なんじゃないの?」


騎士隊から「女! 無礼だぞ。この方は――――ッ」と声が上がる。

が、彼はそれを制した。


「罠にはまったのだ。私はヴァルハラント帝国皇太子のガイゼリックです。見てのとおり、今は亡国の王子となったが……貴女の名は?」


「……イングヴェイ」


本当の名があったのことすら、覚えてはいない。

私にとって修道院の生活すら、黒歴史になっているのだから。


「魔術師らしく、古代のルーン語なのだな。しかし、なんでイングヴェイ(成りかけの6)なのだ?」


「フフフ……っ。私は教団が作った6番目だからよ。でも、完成した6番じゃない。6を超えた最強の7番目がいるの」


「そうか。そのような便宜上の名であれば、我母の幼名フローラと名乗ったらどうです。母はもともと貴族ではなく、武者修行として冒険者をしていた父と偶然出会った神官だった」


フローラ。

美しい、花の名前。

アスガルドでは花の名前を女の子の名とする親は多い。


「フローラ……私の名……」


花言葉は……〝聖女〟。

邪教徒の女には、相応しくない名だ。


そして――――――。


「余りで良いのですが、部下にスープを分けてあげれませんか? この戦いの勝利の暁には必ず、ご恩に報います。フローラ嬢」


普段の私だったら、その装備を売って食べさせてあげたらどうだと言い返していただろう。


「あ、余りだったらあるかも……温めてから持ってくるわ。豆しか入ってないけど……」


ただ戦いに敗れたわけではない。

叔父に父王を殺され、自身も追撃されたという事実。


後にわかったことだが、戦場に近い領地の村にオルグが攻め入るよう、反乱軍が手引きし、そのオルグ討伐に向かって本隊が2分したところを攻められたらしい。


小さい村がオルグの襲撃を受ける。

よくあることだ。

それを救いに行くなんて、王国軍というより、新人冒険者のような正義感。


身分も違う。

同じ人間でも彼は光の末裔。


私はどこで産まれたかもわからない……邪教徒の女。


こんな恋することさえ、罪のよう。

でも、暗黒神ネメシス様は自由を理想を司る女神。


教団の人間なのに神に心から祈ったことなどない。



でも、祈らずにいられなかった。

もしも、奇跡が起きるのなら……と。

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