表紙//口絵//ブレイブストーリー
私は歴史学者として真実を書くべきなのかと、このときほど迷ったことはない。
だが、このアスガルド大陸を恐怖に陥れた魔女……イングヴェイことフローラの生き様を同じ女として、王を愛した平民出の女として噓偽り、脚色して記録に残すことなどできなかった。
アスガルドの魔女と呼ばれ、恐れられたフローラ……女魔導師イングヴェイは本当に魔女だったのか?
私には聖女そのものとしてしか見ることができなかった。
帝国軍と連合軍の大戦が連合の勝利で終結し、大陸は二分してしまう。
ローザリアの白虎王とグランベルの黒狼王は自らを王と名乗り、アスガルドの統一を目指して覇権を争う。
だが、大戦終結から十余年が経過した現在でも両国で大きな衝突はなく、冷戦状態が続いている。
それはアスガルドを憂いた彼女が裏で暗躍したことにある。
決して表舞台に出てくることがなかったはずの少女。
一介の戦災孤児であり、邪教徒として蔑まれた暗黒教団で幼少期を過ごしていた少女は、やがて光の王子に恋をしてしまう。
その亡国の王子が王都を奪還するまで献身的に彼を補佐し、ふたりが身分を相反して愛し合うのは自然の流れだった。
王族の青年騎士と孤児だった魔法使いの少女の恋。
そんな、よく創作されるラブストーリーは現実となって青年騎士は父王の仇を討ち、玉座を取り戻す。
そんな孤児で邪教徒というアスガルドの最底辺にいたヒロインが王子の愛に応えるシンデレラストーリー。
暗黒教団が誇る7体の魔戦士。
その6番目に造った魔戦士がイングヴェイ。
7体いる中で唯一、彼女だけが何故6番ではなく、試作の6番なのか?
本当に彼女は魔女だったのか?
今、私が今から後世に伝えるために記す英雄史書に彼女を魔女と記載することはない。
グランベル王妃
ノワールクィーン・シュターゼン




