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残り火  作者: 相沢蒼依
第三章
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第三章 偽りだらけの恋愛3

***


「いらっしゃいませ! シャングリラへようこそ」


 恋人のようにキャストに寄り添いながら入ってきたお客様へ、大倉さんと一緒に頭を下げる。


 やがてボックスの半分を埋める人数に達した時、忙しさに拍車がかかった。次々と入るお酒のオーダーを捌きつつ、テーブルの上を常にクリーンに保つ。メンキャバだろうがホストクラブだろうが、俺たちのする仕事は変わらない。


 グラスの水滴を拭ったり、灰皿に吸殻が一本でも入っていたら、すかさず新しいものに交換。その際にタバコを嵌めるくぼみを、お客様の方に合わせるのを忘れないようにするんだ。


「失礼いたします、どうぞ」


 新しいお酒を作ってコースターの上に置いたら、手を引っ込める前にそっと、お客様が俺の腕に触れた。


「ね、見ない顔だけど新入りさん?」


 声をかけてきたのは、下っ端の先輩が同伴で連れて来たお客様だった。


「はい。穂鷹と申します。以後お見知りおきを……」


 触れてきた手を取り、予備として用意していたコースターをそっと手のひらに預ける。


「今日から仕事を始めたばかりで、まだ名刺がございません。大変失礼ですが、こちらの手書きでよろしければ、ご連絡を」


 ――永久指名制じゃないからこそ、選ばれる余地がある。その可能性をみすみす逃すつもりはなかった。


「随分と積極的な新入りさんなのね」

「お客様のような美しい方のお相手をしている先輩が、大変羨ましく思います」


 憮然としている下っ端の先輩に笑顔を向けてから、お客様に向かって頭を下げ、テーブルを後にした。


 あまりガツガツしても場の空気を乱すだけ。引き際も肝心なのである。

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