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残り火  作者: 相沢蒼依
第一章
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第一章 火種20

***


 身体のだるさを持て余しながら寝返りを打ち、隣にいる穂高さんを見る。煙草の紫煙をくゆらせながら、どこか気の抜けた表情をしていた。


 視線に気づいたのか、穂高さんは何も言わずに手を伸ばし、俺の頭を撫でてくる。その手つきが妙に優しくて、思わず目を細めた――その瞬間。


「……何見てるんですか」

「ん?」


 布団の中を覗き込まれ、慌てて身じろぎする。


「いきなりは反則です」

「もう今さらじゃないか」


 笑い混じりの声が、余計に居心地を悪くさせる。しばらく黙ったまま見つめられていたかと思うと、ぽつりと問いかけられた。


「千秋ってさ。俺と関係持つ前、あまり経験なかっただろ」


 図星を突かれ、言葉に詰まる。


「……そういう機会は、あったんですけど」

「うまくかわされた?」

「……はい」


 答えると、なぜか納得したように頷かれた。


「やっぱりな」

「どうしてわかるんですか」

「雰囲気。千秋は守ってやりたくなるタイプだ」


 その言い方が、少し引っかかる。


 煙草を消した穂高さんが距離を詰め、自然な動きで肩に額を寄せてきた。


「……あの、近いです」

「触るだけだよ」


 そう言われても今までの流れを思い出してしまい、素直に信じきれない。


「触るだけって、信用できません」

「ひどいな」


 くぐもった笑い声と一緒に、腕を引き寄せられる。


「安心してくれ。今日はもう余裕ない」

「……本当ですか」

「本当。君がそばにいるだけでいい」


 そう言って、力を抜いたまま身体を預けてくる。しばらくすると呼吸が規則正しくなり、完全に眠りに落ちたのがわかった。


「……この状況で寝るんですか」


 呆れ半分、おかしさ半分で呟く。無防備な寝顔を見下ろしながら、胸の奥がじんわりと温かくなった。


 危うい人なのに、こういうときは妙に無邪気で――だから、放っておけなくなる。


 そっと穂高さんの額に口づけて、心の中で願う。


(――この時間が、ずっと続けばいいのに)

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