庭付一戸建てモフモフ付きへの道 vol.5
〜忘れ物〜
ふー。なんだかよく分からないけど、このモフモフを連れて帰る約束で、家に帰れるなんて、俺、ツイてるよね?
完全に浮かれてた。
俺、勇者っぽくね?なんて思ってた。妻には言えないけどさぁ。
「モフ。」
「お前、ずっと“モフ”しか言わないよな?」
あの時は喋ったのに……。
まぁ、こっちの方が可愛いからいいけどさ。
あーあ。金塊どうしよう。
そう、金塊を持ち帰るためにあの伝説の泉に行ったのに、死ぬかと思って、完全に忘れてた。
さっき思い出したけどさ。もう、あの泉に行くわけにもいかないし、別の方法を考えないとな。
〜今月のローン返済日はすぐそこに〜
あーーー! マイホームに帰って来たぜ、俺! と、モフモフ。
妻に事情を話すと、
「無事で良かった。」
その一言に救われた。
妻は僕の留守中、ムゲンソウを売り歩いて金貨を稼いでいた。
でも、足りない。
「あと、金貨が2枚足りないわ。」
「ごめん。」
「いいのよ。それより、食事にしましょう。」
有難かった。
ムゲンソウの佃煮、ムゲンソウの漬物、ムゲンソウの味噌汁。
そうなるよねー。ちょっと期待しちゃったよ、僕。
現実を受け入れながら味噌汁を啜り、モフモフはムゲンソウも食べるんだな……なんて、少し笑った。
「モフ、モフ」
2匹???
「えーーーーー!! モフモフ、ここでも笑うと増えるの!?」
しかも……
「増えるに決まってるだろ?!」
モフモフが喋った!!
え? なに? なんなの? これ、カオス?
「うふふ。賑やかになったわね。」
あーーーーー! それもダメ!
「モフ?」
—
― モフモフカウンター 現在:モフモフ3匹 ―
その時、モフモフの抜け毛がふわふわと舞い、床に落ちた……はずだった。
“チャリンチャリーン”
え? 金貨の音??
妻と二人、床を見て驚いた! 確かに2枚の金貨。
「え? モフ? これどういうこと?」
「おぬし、石碑を読まなかったのか?」
え? 石碑? あー、伝説の泉の!
「なんか文字が書いてあるみたいだったけど……」
「そうか。石碑の文字を読まずに、わしを迎えたのか。」
え? それ、どーいうこと??
〜モフモフ章典〜
1.笑うと増える
2.雨にあたると減る
3.抜け毛は金貨に変わる
4.冬場は毛が抜けない
5.“ある条件”を満たすと、モフモフは一匹の単体となり、以上の条件は無効となる
モフはまた、喋らなくなった。
モフモフ章典のことを語ったきり……。
つづく。