庭付一戸建てモフモフ付きへの道 vol.1
~注文住宅の試練~
完全に思い違いをしていた。
ゲームの感覚だった。
契約して、一晩寝たら、完成じゃなかったのだ!
え?もう一晩かな?
違った。
そう、ここから本当の物語は始まった。
……これは、注文住宅という名の長編リアルRPGに挑んだ者の、記録である。
南向きの土地を手に入れた。
ここからこの物語は始まる。
ごくごく普通の幸せな家庭を願って、かなり奮発して判を押した。
この時、主人公、レベル35。ギリギリの決断。いや、英断だろう。
しかし、ここで、まさかの事態。
~注文住宅の試練~
完全に思い違いをしていた。ゲームの感覚だった。
契約して、一晩寝たら、完成じゃなかったのだ!
え?もう一晩かな?
違った。
毎週打ち合わせがあった。
毎日、敵を倒して、日銭を稼ぎながら、野宿を余儀なくされ、その上での毎週の打ち合わせ。
正直、こんなことになろうとは思っていなかった。ゲームしかしてこなかった人生を悔やむ気持ちもないとは言えなかった。
ひたすら、敵を倒した。そして、打ち合わせも。
注文住宅の選ぶ工程の多さに怯んだ。
夢のマイホーム。
やるしかない!気持ちを奮い立たせた。
どのくらい経っただろうか?え?2か月?
まだまだ、先は長い。みたいだった。
夜な夜な、コンセントの位置や壁紙、床材を話し合った。
全てが基本価格に含まれている訳ではないことも、知った。
それでも、どうしても譲れない物も出てくる。当然のように、価格は膨らんだ。
気が付くとレベル36になっていた。
大まかな打ち合わせが終わった頃、更なる事態に!
~住宅ローンは甘くない~
レベル36にもなると、敵も強くなり、日銭も大分稼げるようになった。イケる!そう思っていた。
いよいよ、注文住宅の最大の試練と言っていい、イベント。住宅ローンの扉を開くことに。
ビビりながら、中に入る。意外にも、強い敵はいなさそうな気配だった。
「ふ~。ビビらせんなよ」
その時!何かの気配が。振り返ることが出来ない。いや、出来ないんじゃない、本能的に振り返ってはいけないと感じとったんだ。
振り返ることなく静かに、奥の方に進んだ。
すると、いくつかの札があった。どうやら、この中から選ぶらしい。
「30年?35年?40年?」
何のことだろう。
そして、ふと目に留まった、何故か使い古された電卓が置いてあった。
そして、いくつかのクリスタルに文字が刻んである。
「HENDOU、KOTEI、HENDOU&KOTEI」
???
なんだ、この暗号は?
その文字の下に、どうやら数字が刻んであるようだ。
でも、今は見えない仕様になっているみたいだった。
その時!
さっきの謎の気配が目の前を横切った。
え?あれ?
気配は確かに1つだったはず。なのに…
そこには、二人いたのだ。
しかも!一人は見覚えがあった。
「住宅会社の営業のリバライです」
「あ。リバライさんでしたか。そちらは?」
「申し遅れました、メガバンクと申します。札とクリスタルは見て頂けましたか?」
少し気難しそうなおじさんといった印象を受けたが、手慣れた様子だった。
「見ました。見ましたけど、何のことだか?」
「そうですよね。皆さん最初はそんな感じです」
メガバンクさんは不敵な笑みを浮かべていた。
「この札は返済期間です。」
「え?30年、35年、40年は返済期間?」
「左様でございます。今レベル36の貴方様は30年でレベル66、35年で71、40年で76です。」
「え?76!!」
それはムリ!思わず、そう言いそうになった言葉を飲み込んだ。
「え、じゃあこっちのクリスタルの暗号は??」
「はい。そちらは、返済方法になります。変動、固定、変動と固定のmixからお選びください。」
「え?選ぶ?」
自分に出来るのか?いや、ムリゲー。
その時、リバライさんが動いた。
「どうぞ。」
え?リバライさんそれ、さっき置いてあった電卓!どうぞって!
「変動は金利の変動があり、固定は今の固定金利で返済まで一定の金利です。mixはその間と言った感じです。」
「え?そしたら、固定一択ですか?」
リバライさんとメガバンクさんが目を丸くして笑った。
「今は変動金利の方がお安いです。しかし、今後を考えると、固定金利も捨てがたい。mixもなかなか捨てがたい。と言ったかんじです。」
え?分からない。変動金利の方が安い?固定金利は返済まで一定なのに?正直、吐きそうだ。この選択で、おそらく今後の暮らしが決まるのだろう。でも、選ばなければ、どうする?どうやって?汗が噴き出す。
そして、僕は変動を選んだ。理由?今一番安いみたいだから。
こうして、僕の最大イベントは幕を閉じた。
はずだった…。
つづく。