サングラスの女の子
短いし、話の盛り上がりはありません。
それを承知の上でどうぞ。
とある地球の並行世界では、例外なく1人1つの特殊能力を持つ世界があった。
その能力の遺伝は実証できるものではなく、例外として極めて稀に親子で同じ能力を持つ場合もあるが、完全ランダムが定説の世界。
その能力も凄いモノなぞ本当に稀で、1世代に地球全体で1人現れるかどうか。
普通は日常に役立つ事もある程度のモノばかりである。
そんな世界のとある学校。
教室内では生徒達が、テレビで凄い能力を持っている人がどんな善行を、今朝までの1日の間にやったかのニュース放送で盛り上がっている。
そんな教室の隅で、我関せずとばかりに授業の準備をしている、色付きレンズをはめたサングラスを掛けている少女がいた。
このサングラスには理由があり、本人が格好つけている理由ではない。
もちろん孤立している等の悪いナニカの要因でもない。
彼女は単純に人と話すのが苦手で、周りもそれをわかっているから適切に距離をとってくれているだけで、普通に生活しているだけだ。
それでも心配になる人は、昼食の頃の風景を見れば、多少は晴れるかも知れない。
お昼の頃になると、生徒は各自でいつものお昼メンバーで固まりだす。
ここで少女は1人かと言われると、違う。
話すのがあまり上手くない子達で、何となく固まりだす。
そのグループ内で言葉少なに、気まぐれにポソポソと喋り、小さく笑って食事する。
空気は穏やかで、無言になっても空気はかなり軽い。 無言を苦にしない人達なのだから、会話が途切れた時の何か話をしなければ、と言った焦りが無いのが大きいのかも知れない。
そんな中、教室でちょっと目立つ声が上がった。
「んー? なんかこのハンバーグの味付けが、ちょっと物足りないかも」
持ってきた弁当のおかずの味に、不満があるようだ。
そのハンバーグを見ると形が少し歪みたいなので、恐らく手作りなのだろう。 ……誰の手作りかは知らないが。
そう声を上げた少女は席を立ち、いつもサングラスの子のそばに立って、弁当箱の中身を見せた。
「お願いできる?」
そう言われたサングラスの子は、黙ってサングラスを外す。
すると、サングラスの子の目から、なにかドロドロしたモノが出てきた。
それはオレンジ色がかったピンク色で、とても魅力的な香りを放っていた。
「はい、大丈夫。 うん!ありがとうねー」
そのドロドロをちょっとだけ弁当のおかずの上に出してもらって、お礼を言って去っていく。
その様子をグループで見送り、ポソポソする。
「いいよね、オーロラソース。 大体の料理に合って、美味しいんだもん」
「えー? 充電池位の電気を出せる貴方の方がいいじゃん。 スマホの電池を気にしなくて良いのは、かなり便利でしょ」
「やだ。 常に放電してるから、面倒なんだもん。 それよりオーロラソースってカロリーがあるから、非常時のカロリー源として最適で保存とかも気にしなくて良いから、最強のサバイバルスキルだよ」
「うーん……嬉しくないなぁ」
彼女の能力は、色無しレンズの眼鏡やサングラス、又は裸眼でいると目から少しずつオーロラソースが噴き出る能力。
味も良く、常に新鮮なオーロラソースを買わずに得られる。
この世界の特殊能力と言えば、大抵この程度である。
ナニカを出す系、身体能力のどこかが強くなる系、毒とかカフェインとか砂糖とか塩とかの許容量が他者より少し多い系、人より多く食べられる・少なくても十分な栄養を得られる系等。
役に立つタイプや、役に立つのかすら分からんタイプまで。
なお、作中の話題で出た英雄的なナニカを題材にした作品を書く気はありませんので、悪しからず。