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はじまり
それは、重々しい音色か。
もしくは、鈴の音のように軽やかか。
誰も、知らぬ音色だとしても。
聞こえなくとも、絶え間なく。
届かないほど、微かに。
確かに確かに、響く音色。
誰そ、彼のためだけに。
咲き誇りたるは、脆弱な羽虫に過ぎぬが色鮮やか。
顔前をひらひらと舞い浮かぶ、蝶の音色。
『蝶の羽音』
ねぇ、君には聞こえない?
誰にも聞こえない音。聞こえるとしたら、それは。それは。
微かな微かな、君を呼び続ける、声。
ひらり、ひらり。
はじまり、はじまり。