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救出 2

「大丈夫です!レスキュー隊です。今から安全な場所までお連れします!」


俺が声をかけると、男性は驚きと安堵が入り混じった表情で頷いた。


「頼む……もう、動けなくて……」


俺は素早く通信装置で美穂に連絡を入れた。


「負傷者を発見しました!足を痛めていますが、意識はあります!」


「よくやったわ。そこを動かないで、すぐに迎えに行く!」


間もなくして、魔物の注意を引き続けていたチームが合流してきた。美穂が負傷者を見下ろし、軽く頷く。


「大丈夫です、すぐに安全な場所にお連れします」


チーム全員で協力し、負傷者を運ぶ体制を整えた。担架に乗せた男性をしっかりと固定し、出口に向けて慎重に進んでいく。


後ろを振り返ると、さっきまでの魔物の威嚇音は聞こえない。チームの連携プレーで撃退され、完全に遠ざかったようだ。


「これで安心だな」


長谷川が肩をすくめながら言う。


「森本、お前も少しは役に立つじゃないか。正直、最初は信用してなかったけどな」


彼の皮肉交じりの言葉には、どこか本音が滲んでいた。それが妙に嬉しく、俺は苦笑いを浮かべながら応じた。


「……ありがとうございます。次はもっとスムーズにやれるように頑張ります」


「そういう謙虚さ、嫌いじゃないぜ」


長谷川が笑みを浮かべると、美穂が振り返って声をかけてきた。


「負傷者の発見が早かったわ。君の力、これからが楽しみね。よくやったわ」


俺はその言葉に、小さく頭を下げる。胸の中には少しだけ誇らしさが芽生えていた。


***


地上に戻り、負傷者を無事に救助した瞬間、迷宮の冷たい空気から解放された実感が押し寄せた。担架に横たわる中年の男性は安堵の表情を浮かべ、レスキュー隊の他のメンバーが周囲の人々から拍手と歓声で迎えられている。


「助けてくれて、本当にありがとう……本当に……!」


負傷者がかすれた声で感謝を伝えると、美穂が優しい笑顔で応じた。


「無事で何よりです。私たちはそれが仕事ですから」


そのやり取りを聞きながら、俺はふと自分の胸が妙に温かいのに気づいた。


「すごい、あれがレスキュー隊なんだ!」

「負傷者を迷宮から救い出したって……信じられない」


周囲から興奮気味の声が聞こえてくる。これまで目立たなかった第13分隊の名前が、たった今、一気に広がりつつあるのを肌で感じた。迷宮という危険な場所から人を救い出すという事実が、どれほど人々に感動を与えるのかを初めて実感した瞬間だった。


「見たか、森本。これがレスキュー隊だ。人に必要とされるって、こういうことだぜ」


長谷川が軽く笑いながら肩を叩く。その言葉に俺は頷き、担架の男性を見ると、彼が涙ぐみながら小さな声で「ありがとう」と呟いているのが聞こえた。


その瞬間、胸の奥で何かが変わった。迷宮の中で感じたあの熱が再び広がり、今度は全身に行き渡るような感覚がした。


「……っ!」


目の前が一瞬だけ眩しくなるような感覚。俺はその場で小さく息を呑み、周囲を見渡した。光はすぐに収まったが、自分の中に何かが目覚めたような、確かな変化があった。


「森本君、どうしたの?」


美穂が少し驚いたように声をかけてくる。


「いや……今、胸の中で何かが……。迷宮の中で感じたものが、もっとはっきりした気がします」


そう言葉にするのが精一杯だったが、それを聞いた美穂が微笑む。


「人を助けること、そしてその感謝を受け取ること――それがあなたの力をさらに成長させたのね」


彼女の言葉に、俺ははっとした。あの負傷者の「ありがとう」という言葉、そして周囲の人々の感謝の声が、確かに俺の中に響いている。それがこの成長のきっかけだったのだろうか。


「森本、新人らしくないじゃないか。成長が早すぎだろ!」


長谷川が冗談交じりに言うが、その言葉にどこか羨望が含まれているのを感じた。


「……俺も驚いています。でも、この力が役に立つなら、これからもっと――」


言葉を紡ぎかけると、美穂が力強く頷いた。


「あなたにはその素質があるわ。今日の救助でそれが確信に変わった。この調子で行きましょう。もっと多くの人を救うために」


俺は改めて深呼吸をし、胸の奥で広がる新しい感覚を確かめた。この力は人を助けるためにある――それが今、はっきりと分かった。


負傷者を救助し終えた俺たちは、広場で周囲の人々に迎えられながら息を整えていた。迷宮の中での緊張感が解けると、胸の中に広がるのは達成感と、救助が成功したという安堵だった。


結城美穂が一歩前に出て、俺の肩に手を置く。彼女の真剣な眼差しが俺を捉えた。


「森本君、これからも期待しているわ。あなたの力は、きっと私たちにとって大きな支えになる」


その言葉には確信が込められていた。俺はその期待の重さを胸に受け止めながら、しっかりと頷いた。


「俺、このチームで頑張ります。全力で、命を救うために!」


美穂の顔に微かに浮かんだ満足そうな微笑みが、俺の心をさらに奮い立たせた。


近くにいた女性隊員――どこか穏やかで優しげな雰囲気のある彼女が、俺に歩み寄って声をかける。


「森本君、迷宮の呼び声に応えるのは君の使命ね。これからも、その声に導かれて、たくさんの人を助けてあげて」


その言葉に、俺は胸の中が熱くなるのを感じた。使命――その言葉はまだ大きすぎる気もしたが、迷宮の中で感じたあの感覚が、誰かを救うためにあるのだとしたら、それを使う覚悟が俺にはある。


「はい。必ず」


静かに答えると、彼女は満足げに微笑んだ。


周囲では、レスキュー隊員たちが互いに労をねぎらいながら機材を片付けていた。その光景を見ながら、この場所が自分にとっての新しいスタートだという思いが強くなっていく。


結城美穂が隊員たちに短く声をかけ、作業が整ったところで全員が一つのチームとして動き始めた。その姿は頼もしく、俺もその一員として力を尽くす覚悟が胸に広がった。


「これからが本番ね、森本君」


美穂が振り返り、もう一度優しく微笑む。その言葉に深く頷きながら、俺は改めて新たな決意を胸に刻んだ。


ダンジョンレスキュー隊での物語――俺が人を救う使命に向き合う物語は、今ここから本格的に始まるのだ。

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