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一攫千金を夢見て旅立った兄が、病んで帰ってきた。結局ボチボチ冒険するのが幸せなんだよね  作者: 椎名 富比路
第五章 転職して、最終決戦へ

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第42話 ソーニャ、賢者に転職

 ソーニャさんが、別人のように美しくなっている。ツインテールなのはそのままだけど、気品に満ちていた。衣装も、より貴族風に変わっている。

 以前は庇護対象だったので、町娘風にしていた。今はそのルックスを、まるで隠そうともしていない。

 

「なによ。あたしが転職したらおかしいの?」


 杖をつきながら、ソーニャさんが腰に手を当てる。その杖は、ギソを倒して手に入れた武器ではない。違うモンスターからの、ドロップアイテムだ。


「ああ、ソーニャさんも転職したんだね」


 たしかソーニャさんは、転職用のアイテムを持っていたんだっけ。


「そうよ。【賢者】になれるアイテムがあったから、使ってみたのよ」


 聖なる杖【ジョワユーズ】は、持ち主を王たる器にするアイテムと言われていた。さっそくソーニャさんは、ためらいもなく使ってみたという。


「でもさ、転職したって言っても、トレーニングは必要だったでしょ?」


「鍛錬も込みで転職が成立するってのは、聞いていたわ。この杖は、それを免除してくれるの」


 だけど、肉体が変化するとは思っていなかったようだ。年齢を重ねないから、肉体にも影響は出ないだろうと考えていたという。

 ソーニャさんはまだ、自分の身体の変化にまだ馴染んでいない。


「とはいえ、あんたたちに負けないくらいには、強くなったと思っているわよ」


「うん。ソーニャさんがレベルアップしているの、ボクにもわかるよ。でも、手に入れた武器はなくしたんだね?」


「ええ。ジョワユーズでしょ? あたしの体内に収まっているわ」


 ジョワユーズを取り込んだソーニャさんは、純粋魔法使いとしてより高みに到達していた。聖なる魔力も微量に放出していて、治癒魔法の気配もうかがえる。


「トレーニングは、ボーゲンさんが手伝ってくれたの?」


「赤術師ボーゲンの、本気を見たわ。どのタイミングでどう演算したほうがいいか、この敵に対してどの術をどの部位に当てるのが適切か、とか、理論的な議題ばかり」


 ソーニャさんが、青ざめた。よほど、厳しい鍛錬だったようである。あまり追求するのは、よくないかも。

 

「あたしとヒューゴの二人は、こんな調子なんだけど。ヴィクとキルシュは、どうだったの? あたしたちが修行している間に、変化はあった?」


「それがね、あったんだよ。ウチらには、変化はないんだけどさ」


 なんでも、邪神を崇めるフルドレンの組織を見つけ出したという。王都を揺るがすダンジョン出現など、一連の事件を起こしていたのも、彼らだったらしい。


「シュタルクホン王立騎士団の協力も受けて、どうにか本拠地を突き止めました。彼らの執念に報いたいと思っております」


 ボクやソーニャさんが特訓している間に、王立騎士団は各地にあるフルドレンの組織を潰して回っていたという。

 王都も、ギソ打倒に本気だってわけか。 


「野放しにしておいたら、危険ね。早く潰しに行くわよ」


「そうこなくっちゃ」

 

 ボクたちは、フルドレンのボスがいるアジトに向かうことにした。


 馬車に乗って、敵がいるというアジトへ。

 

「ヴィク、場所はどこにあるの?」

 

「北です」

 

 馬車の中で、ヴィクが地図を開く。

 

「国境にある、ケブネロス山脈。そこが、彼らの根城です」


「ほぼ、魔族の領地じゃないの!」


この世界では、魔族も人と同じ世界で過ごしている。

 

「ですが、魔族もこの山を嫌っています。宗派が違いすぎていて」


「今の魔族は、世界征服にあまり関心がないものね」


「はい。反対にフルドレンなど、人間に対して憎しみを抱いている者にとって、邪神は拠り所だったのではないかと」


 もはや魔王が生まれづらい世の中で、邪神がフルドレンの信仰対象になっていったと。


「魔族も魔王も、フルドレンにとっては当てにならないわけね。わかったわ」


「中でも、現人神だったのが……」


「勇者一行の末裔、ボボル・ギソだったと」


 フルドレンの組織は、ギソに邪神を取り込ませ、フルドレンの神にしようとしていたようだ。

 

「ひっどい連中ね。自分たちの都合のために、ギソを利用していたわけでしょ?」


「そうなりますね。ただ、ギソの言葉が気になります」


「今は自分がギソだ、って言葉でしょ?」


「ええ。それが何を意味するのか。いやはや、どうしたものか」


 ヴィクは、考え込む。

 

「どうしたもこうしたも、ないわ。邪神こそが、ギソなんでしょ?」

 

「ギソ一世が、邪神に成り代わった可能性があるんです」


 ソーニャさんの発言に、ヴィクが言葉を重ねてきた。

 たしかに、かつて存在していたセニュト・バシュがどうしてあそこまで壊されたのか。その理由が、呪いだけでは説明がつかない。

 ギソ一世が邪神となって、セニュト・バシュを滅ぼしたと言われたほうが、納得がいく。

 

「現人神どころか、本物の神になったわけ?」

 

「はい。ギソほどの術師だったら、それも可能だと思うのです」

「どうして?」


「あなたを見たときですよ」


 ソーニャさんは、アイテムを使って、賢者に転職している。


 だとすれば、ギソも何らかのアイテムを使って、邪神そのものになった可能性が高い。


「冗談じゃないわよ。神様になった人間と戦うってこと? こっちは賢者になることで手一杯だってのに!」

 

「怖いですか?」


「たまんないわ。ゾクゾクしちゃう」


 ソーニャさんが、身震いする。恐怖からではない。好奇心からだ。

 

「天才は一人でいいわ。ギソがたとえ邪神だったとしても、叩くわよ」

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