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一攫千金を夢見て旅立った兄が、病んで帰ってきた。結局ボチボチ冒険するのが幸せなんだよね  作者: 椎名 富比路
第四章 因縁の地下遺跡へ

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第30話 遺跡の地図

 ボクは止めに入ろうとしたが、ソーニャさんが兄に語りかけるほうが早い。

 

「ロイドとか言ったわね。セニュト・バシュ遺跡でしたっけ? あなたが攻略に失敗した遺跡の詳細について、なんでもいいから教えてちょうだい」


 いきなり、初対面のロイド兄さんに話しかける。

 

「セニュト・バシュの遺跡……」


 ロイド兄さんが、ゆっくりとボクに近づいてきた。

 

「やめろヒューゴ! あそこには行くな! 絶対に!」


 必死の形相で、ロイド兄さんはボクに訴えかけてくる。


「大丈夫だ、兄さん。必要なアイテムは手に入れた。おかしくなることなんて、ないんだよ」


「だとしても、行くな! セニュト・バシュなんか、オレも行きたくない! ついてこいって言われても、嫌だっ! オレは、絶対行かないぞ!」


 やはり、トラウマが蘇ってしまったらしい。


「あなたは来なくていい。できるだけ詳細な地図がほしいのよ。遺跡に必要なアイテムも手に入れたわ」


「ダメだ! そんなことをしたら、ヒューゴはセニュト・バシュに行っちまう! 弟を危険な目に遭わせるわけにはいかない!」


 ロイド兄さんは、かたくなに拒否してきた。


「あなたの無念はわかります。ですが、それでは兄が浮かばれないのです。あなたを守って散っていった兄の仇を、わたくしは討ちたいのです」


「よせ。あの呪いには絶対に勝てない」


 エレオノル姫が説得にあたったが、兄はそれでも首を横に振る。


「いや。勝てる見込みはあるかもしれん」


「マジか?」


「ああ。ソフィーア。【恬淡(てんたん)の鈴】を見せておくれ」


 ボーゲンさんから言われて、ソーニャさんはファミリアを呼び出す。

 ファミリアが、またハンドベルを持って、ソーニャさんの首に下げた宝石から現れた。


「このアイテムは、必ずヒューゴたちの安全を保証してくれる」


「本当なんだろうな、ボーゲン?」


「こっちだって、大事な孫がセニュト・バシュに挑むんだ。ワシだって尻込みした、あの場所へ。ウソは、つかないさ」


 ロイド兄さんは、ボーゲンさんの言葉になにかを感じ取ったのだろう。「ヒューゴ、来い」とボクだけの腕を引っ張る。


 ソーニャさんとボーゲンさんも、ついてきた。


 兄さんは、特に二人を引き止めない。

 

 どこへ連れて行く気だろうと思っていたら、兄さんの自室だった。


 ソーニャさんが低く、「ひっ」とうめく。部屋に入ろうとして、足を止めた。


 部屋中の壁に、大量の言葉がびっしりと描かれている。黒いチョークで書かれた文字には、血がわずかに混じっていた。兄がなにかに取り憑かれたかのように、書きなぐっていたのだろう。


 よく見ると、兄の指先にも削れたあとがあった。


「オレの呪いは、その鈴でも消えない。だが、お前を導くことはできる。お前なら、託せる」


 ロイド兄さんは、紙とペンを用意する。一心不乱に、紙に何かを書き出す。

 

「これが、安全なルートの地図だ」


 遺跡の地図には、地下墓地らしき場所が示されていた。そこに至るまでのトラップや、解除法なども記されている。


「この、扉の向こうは?」


 ボクは、扉のある空間を指し示す。地下墓地を兼ねた、宝物庫のようだが。


 しかし、ロイド兄さんは首を横に振った。


「オレたちが行けたのは、宝物庫までだった。そこから先の構造は、オレにもわからない。覚えておけ。おそらく、あのお姫様が求めているアイテムは、宝物庫の先にある」


「ありがとう、兄さん」


「セーコがいれば、トラップはなんとかなろう。しかし、そこから先はわからん。ヒューゴ、気をつけるんだ」


「はい。行ってきます」


 兄の手を取って、ボクはうなずく。


 安心したのか、兄さんはぐったりとベッドに横たわる。


 ボクは一瞬、兄が力尽きて死んだのかと思った。


 兄の胸が、大きく上下する。


「ワシは、彼を見ておくよ。行っておいで」

 


 ボーゲンさんに促されて、ボクとソーニャさんは兄の部屋を出ていく。


「ありがとう。あなた方は、もうお帰りなさい」


 エレオノル姫が、そう切り出した。ボクらを、ねぎらうつもりで言ったのだろう。


「ここまで来たんです。最後までお供しますよ」


「そうよ。祖父がなし得なかったことを、やり遂げるわ」


 ソーニャさんも、やる気だ。


「ですが我々は、我が兄エルネスト王子の亡骸を持ち帰るだけで手一杯になるかも知れません。あなたがたをお守りする余裕は、ございませんよ?」


「誰が守ってほしいって? 冗談。ガキだからって、見くびらないでよ」


 姫様の弱気発言を、ソーニャさんは杖を構えて振り払う。


「それにお姫様、あたしがいなければ遺跡の呪いに負けちゃうわよ」


「すいません。ソーニャさん……ソフィーア姫は、ああいったら聞きません」


 たとえ追い払っても、ずっとついてくるつもりだ。


「わかりました。止めてもムダなようですね。おつきの方々は?」


 エレオノル姫は、今度はセーコさん、キルシュ、ヴィクに同様の意見を求めた。聞かなくてもわかるはずだけど。


 キルシュとヴィクは、黙ってセニュト・バシュのある方角へ進んでいった。

 セーコさんも、後を追う。


「ほら、行くよー。お姫様もー」


「キルシュが呼んでますよ。エレオノル姫。行きましょう」

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